暮らしと住まいは変わっても、10年間そこにある手づくり椅子の話(探し人あり。)

Kayo Matsubara
SuMiKa.me magazine
Published in
4 min readFeb 11, 2016

すてきな暮らし、丁寧な暮らしができているほうか、と言われると決してそちらの側には入りません。子どもが小さく片付かないし、家は当分は賃貸と決めているし、そもそも家事も整理も苦手なタイプだし(デスクにはいつも書類が山積みです!)。

そんな私ですが、最近は暮らしと家づくりのWebメディアの編集にも携わっています。そのため、すてきな住宅を訪れたり暮らしを考えたりする機会は、おそらく一般平均よりは多く、知識やイメージだけが膨らみ、やや頭でっかちになっている気がします。そんな経緯もあり、時折、暮らしについても書いてみようかな、と思い立ちました。

今年になって、そのメディアで「暮らしを変えた家具」という連載企画をはじめました。

DIYは難しいけど(うちはIKEAで買ってきた家具もつくれない、ど素人。あれ、結構難しいですよね?)、そもそも賃貸だとDIYの自由は利かないけど(あとで修繕が大変だし!パテとかで埋めるのも苦手・・・)、家具なら簡単に、家を楽しく居心地よくできそうだから、いま活躍している皆さんに聞いてみましょう、という企画。

この編集をしながら、さて、自分はどうか?と考えたわけです。

暮らしを変えた、とまではいかないけど、10年間ずっと私の暮らしの中にある家具がひとつありました。10年の間には何回か引越しをして、結婚をして、出産をしたけれど、用途を変えつつ、ずっと暮らしに寄り添ってきた家具が、この椅子です。

この椅子との出会いは、前職で絵画の個人間ECサービスのディレクターをしていたときのこと。その実店舗ギャラリーの店長も兼任していました。無名のサービスだったから、ギャラリーと言っても1日1組来るか来ないか。そこにしばしば来てくださる物腰がやわらかいおじさま(Sさん)がおり、時たま絵を買ってくださったり、世間話をしたりしていました。そのSさんは木工をなさっていて、自分のつくった作品をよく見せてくれました。なぜこの木を選んだのか、どうしてこれをつくったのか、といったお話をしながら。

この椅子は、私の誕生日を知ったSさんが、うちにあったからあげるよ、と持ってきてくれたものでした。

椅子は私が座るにはちょっと小さく、最初はベッドのサイドテーブルとなりました。ランプと携帯を置くための。

その後引っ越しをして、購入した新しいベッドとは高さが合わず、お気に入りの本を並べておく、ブックシェルフがわりとなりました。

数年後にまた引っ越をして、それからは小物置きとしてデスクの足もとにありました(このときは、日陰の存在でした、、、)

そして、子どもが生まれました。

彼が1歳をすぎた頃だったでしょうか、クレヨンとスケッチブックをあげました。ある日、彼はリビングのローテーブルの上にスケッチブックとクレヨンを広げて、立ったままお絵描きをしていました。

あ、ちょうどいい椅子があった!と。

この時から、その椅子は彼のものになりました。

座り心地がよかったのか、「あなたのの椅子よ」と渡されたのが嬉しかったのか。それ以来、お絵描きはいつもその定位置(ありがたい事に床のクレヨンラクガキが減りました )。本を読んで欲しい時には、そこにちょこんと座って読んで、と言ってくることもあります。毎晩の歯磨きのときは、そこに座ってシャカシャカしています。

そして最近の話。手洗いの時に「自分であらう〜」と椅子を運び、踏み台としても使いはじめました。

おそらく本来の用途は、子ども椅子。私の暮らしと住まいの変化とともに用途を変えながらも、ずっと近くにあり、10年経ったいま、私の大事なひとのお気に入りの家具になりました。椅子のクレヨンのラクガキや傷は、この1年で一気に増えたけど(笑)。

ちなみに、10年前に話を遡って、そのあとギャラリーは引っ越して、事業が少し大きくなって、会社も成長して、私は店長職を離れ本社に戻りました。時たまふらっと訪れるSさんだったので、挨拶も直接できぬまま伝言で終わり、今に至ります。

どこかでもしもお会いできたなら、いまでも大事に使っています。と改めて「ありがとう」と息子の写真でも見せようか、なんて考えています。

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Kayo Matsubara
SuMiKa.me magazine

(株)ハモニア代表取締役 兼 (株)カヤックLiving代表取締役。広報、Webメディア編集、ライティング、Web事業開発が主戦場。コンサル→編集→面白法人カヤック→独立 そして 縁あってカヤックLiving(現在地) http://www.hamonia.jp/