[イベントレポート]IoTブロックチェーンのスケーリング課題(Taraxa × Nayuta)by LongHash

Seirai Li
Taraxa Japan
Published in
10 min readJun 12, 2019
イベント終了後残っていた参加者とスタッフの記念撮影

5/23(木)に、渋谷Neutrinoにて「IoTブロックチェーンのスケーリング課題」(主催:LongHash)というイベントが行われました。スピーカーはTaxara(タラクサ)Founder&CEOのSteven Pu氏、株式会社Nayuta 代表取締役CEOの栗元憲一 氏の2名です。IoTブロックチェーン領域における課題や、それぞれが提供するサービスについて話をしました。

本記事では、当日のイベントでスピーカーが話された内容について書いていきます。当日のイベント中の雰囲気などは以下の動画が参考になります。

<はじめの挨拶とアジェンダの発表> by 株式会社LongHash

はじめにLongHash代表のクリス氏よる挨拶と、当イベントのアジェンダの発表、LongHashの紹介がありました。

当イベントを開催した目的は、「特に取引処理回数が求められるブロックチェーンIoT領域で、各レイヤー別に技術開発を行うプレイヤーがどのようにスケーラビリティ問題の解決を試みているのかを理解し、また各技術がIoTデバイスにおけるセキュリティ課題へどう活かし、ユースケースを作りあげることが可能かについて検証すること」だと言います。

LongHashは、ブロックチェーン技術の実用化の推進、技術者の支援を目的に、ブロックチェーンの国内外の最新情報を配信するニュースメディア、及びデータ分析・コンサルティング、また、スタートアップを支援するインキュベーションセンターの運営をしています。

<NayutaとブロックチェーンIoT> by 株式会社Nayuta 代表取締役CEOの栗元憲一

Nayutaはビットコインのセカンドレイヤー技術であるLightning Networkの研究開発を行う会社です。当イベントで話されていたのは、以下のトピックです。

・ブロックチェーンについて
・Lightning Networkとは
・NayutaのLightning Networkについて
・IoTとLightning Networkの関係性

周知の通り、多くのパブリック・ブロックチェーンは現在スケーラビリティ問題を抱えています。

そこで、Nayutaが目につけたのがブロックチェーン層があるLayer1ではなく、セカンドレイヤーと呼ばれるスケーリング・ソリューションが位置する層の技術のひとつ、Lightning Network(※以下LN)です。

LNはビットコインのペイメントにおけるスケーリング問題を解決する技術で、決済を行う当事者同士がオフチェーン上でペイメント・チャネルを開き複数回の取引を行い、最終的な取引結果だけをメインチェーンに刻むというものです。

肝はペイメントチャネルを仲介するHTCLsという技術で、第三者が取引を行う2者の行動を見張り、仲介者となることで不正を防ぐ仕組みです。この仲介者の存在によって、1:1だけでなくN:Nでのマイクロペイメント取引を可能にするため、LNはビットコインを大きく進化させる技術として注目されています。

NayutaはLNが誕生した初期からコミュニティにコントリビュートし続けており、つい先日、そのLightning Networkのソフトウエア「Ptarmigan(ターミガン)」をメインネットローンチし、特に海外で大きな反響を呼んでいました。

LNは若干の性能は劣るものの、バイナリサイズやメモリサイズをコンパクト化した独立したLNノードの中では世界最小モデルを実現していると言います。

IoTに関しては、使用権を制御可能な電源ソケットの開発や、それにLightning Networkを取り入れたEV(電気自動車)の支払い技術のPoCなど、国内においても様々な実績があります。

栗元さんは、将来的にスマート・シティ化する未来が訪れた際に、非中央集権的な通貨であるビットコインはIoTインフラとして必要になるのではないかと予測しています。

仮に一つの街の渋滞を緩和するために、センサーによる交通情報によって信号をコントロールしようと考えた場合、街の中のセンサーと、収集されたデータに基づき意思決定を行うAIが一つの企業、例えばGoogleによって管理されているような状態は、データセキュリティやエコシステム発展の面で負の側面が大きいため、スマート・シティの望ましい姿ではないと言います。

それよりも一つの公共基盤の上に、いくつもの企業がプロダクトをのせて協力する方がよく、その協力関係の中で利用される通貨が、ビットコインのようなインターネット・ネイティブな誰のものでもない通貨である可能性はあると考えていると言います。

NayutaがLightning Networkの研究・開発を行う理由は、そのブロックチェーンIoTの世界を見据えており、かつその際の支払いがマイクロペイメントと即時決済によって行われる必要性が高いと考えているためです。

<TaraxaとブロックチェーンIoT> by Taxara(タラクサ)Founder&CEO Steven Pu スティーブン プー

TaraxaはIoTに特化したパブリックブロックチェーン・プロトコルを研究・開発するプロジェクトです。今回は創設者のStevenが初めて日本のブロックチェーン・コミュニティに向けて登壇を行う機会だったため、Taraxaとは何かという概要の部分をメインに話をしました。

IoTブロックチェーンとスケーリングという観点で捉えた際の、Taraxaの技術的イノベーションは主に以下2種類の並列性スケーリング技術です。

1-STMを用いた垂直的並列処理

2-DAG構造による水平的並列処理

1の垂直的並列処理とは、STM(Specurative Transaction Memory)という技術を用いて、全てのノードによる処理を実行する前に、VM上で実行されるスマートコントラクト間の相関性を検知することにより、並列処理できるスマートコントラクトと順番通りに逐次処理する必要性があるスマートコントラクトに分けて、処理を行うことを意味します。これにより、一部のスマートコントラクトが並列処理できることになるため、従来の逐次処理と比較して短時間でスマートコントラクトを実行することができます。

2の水平的並列処理とは、DAGというブロック生成ストラクチャーを用いてトランザクションのブロックを1本チェーンで繋げることではなく、同時にいくつものブロックを並行に生成的し、かつ別で用意されたファイナライズ・チェーンを同時活用することで、確実なファイナライズができ、高スケーリングと高セキュリティ両方を実現する方法です。

(※ちなみにtaraxaはDAGによるこの水平性からShardingという言葉を使っていて、EtheruemやZilliqaと同様の類のShardingではないことに注意が必要)

以上の2つの特徴により、大量のトランザクション処理が求められるIoT領域のユースケースに対応できるパブリックブロックチェーンを創り出すことが、Taraxaの目的だと言います。

従来のブロックチェーンでは、全てのトランザクションは逐次処理される構造なため、ブロックサイズの拡大やブロックタイムの上昇が実質的に別のボトルネック(セキュリティ低下・分岐確率の拡大)を生み出していましたが、Taraxaは並列性実行を取り入れることでこの課題を解決しようとしています。。

Taraxaプラットホーム上でIoTエコシステムを創り出すメリットは、現在IoT業界全体が抱えているデータ・セキュリティの問題や、末端デバイスによる中央サーバーへの依存などの問題を解決できる点です。

中央集権的な構造の場合、その中央サーバーは単一障害点になりますので、攻撃耐性が低いことや処理能力に限界があることなど、様々なデメリットがありますが、分散化されることで、それらのリスクを減少させることができると言います。

またStevenは各IoTデバイスが自律的に経済的意思決定を行い、トークンによる取引を行える未来を描いており、そのようなデバイス同士のP2Pでの価値交換という世界観はNayutaの栗元氏と考えが共通しているようにも思えます。

またStevenは日本市場の法規制が米国・中国よりも黒白はっきりとしていて、かつ途上国などに比べてロボットやセンサーなどの先進的なIoTデバイスを導入できる産業基盤があることなどの理由から日本市場をポジティブに捉えているといいます。

今回のイベントは、IoT×ブロックチェーン領域に置いて、主にLayer1,2のという低いレイヤーからスケーリング技術の研究・開発を試みる2つのプロジェクトが集まった稀有な機会だったと感じています。

そして両プロジェクト共に、日本に止まらずグローバルで戦うスタートアップであることからも、今後は共に協力し、この業界を盛り上げることができるかもしれません。

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