Appleがリリースした簡単ビデオ編集アプリ Clips を早速試す
ビデオ編集とライブ放送の間を埋める
Appleは、3月21日のiPad発表時にアナウンスしていたカジュアルなビデオ編集アプリ「Clips」の配信をスタートしました。日本のApp Storeでも、無料でダウンロードできます。
iPhone 5s以降のiPhoneシリーズの他、iPad Air以降・iPad mini 2以降のiPadシリーズ、第6世代iPod touchをサポートしており、これらのデバイスでiOS 10.3以降にアップデートしている必要があります。
Clipsは、録画ボタンを押している間だけ記録される方式で、複数のビデオクリップを撮りためて1本のビデオを作り上げる、という使い方をします。そのため、カメラアプリで撮りためたビデオを後からiMovieなどで編集しなくても、複数のシーンをテンポ良く切り替えていくビデオを取ることができます。
基本的な使い方は、以上です。とてもシンプル。ただこれはSnapchatやInstagramなどのアプリで作れるストーリーのようなビデオを作ったことがある人ならば、取っつきやすいのではないか、と思います。
ビデオ録画中には、エフェクトをかけたり、文字や絵文字、図形を乗せたり、字幕を付けたりすることができます。字幕を付ける方法は画期的です。字幕モードにして録画するときに喋るだけで、日本語もきちんと文字になります。普段iPhoneで音声入力やSiriを使っている人であれば、上手に認識させることができるのではないでしょうか。
こちらは早速取ってみたサンプル。今日のBerkeleyは久々の雨模様でした。
ちなみに、Clipsでは、既に撮影済みの写真やビデオを利用する事もできます。しかし追加の方法は、カメラでの新たなビデオ撮影と同じ。
つまり、使いたい写真やビデオを選んでプレビュー領域(カメラのファインダーと言うべき?)に表示させ、録画ボタンを押しっぱなしにすると、その秒数が、作成中のプロジェクトに追加されるという仕組み。
その際、エフェクトをかけたり、字幕付きのアフレコをすることもできますし、録画されたビデオの音声のみを生かすことも可能、という仕組みです。ここが、「分かりにくい」と言われた理由かもしれません。
ビデオのワークフローが変わっている
私は普段ビデオを撮影するとき、ほとんどiPhoneのカメラを使っています。しかしその方法は長回しをすると言うよりは、数秒から15秒程度のビデオクリップを撮りためて、あとからiMovieや、GoProに買収されたQuicでつなぐ、という方法を採っています。
編集作業が入ると、やはりシェアするまでの時間がかかりますし、ちょっとしたこだわりに時間が吸い取られていったりすることも多々あります。その点で、ビデオ編集は「インスタント」ではなかったのです。
ClipsやSnapchat、Instagramなどのビデオはそうではありません。インスタントな状態を実現したビデオ編集と言えます。どちらかというと、ライブ感を保って撮りためていけばできあがり、という感覚。とにかくスピーディーです。
一応Clipsでは一連のビデオを並び替えたり、取り直すこともできるので、気にくわなければできるまでやり直すこともできます。ただ、取ったまま使えるビデオクリップが採れるようになっていく、一種の『訓練」が行われていくような感覚もあります。
ビデオのワークフローやそのシェアは、どんどんライブになっていく。ライブに関しては既にFacebookが強く取り組んでいる領域です。Clipsは、ビデオ録画と編集のフローと、ライブ放送の間に位置するアプリ、と捕らえることができます。
多分、日本のユーザーは不満に感じる
さてClipsの米国での初期レビューでは、操作方法が難解、という感想も散見されます。ただ、私自身はそうは思いませんでした。
シンプルにクリップを紡いでいく限りでは、何の迷いもないでしょうし、何かエフェクトをかけようと思っても、上のメニューからそれを選んで録画するだけですから。
しかし問題点があるとすれば、ビデオのエフェクトの数の少なさ、そして映像に載せることができる文字や図形のバリエーションの少なさです。これでは、デコレーションを満足に行うことができず、楽しい、シェアしたくなるビデオが作れるかどうか疑問です。
少なくとも、今の3倍以上のエフェクトや図形を収録しておく必要があります。あるいは、これはやりそうな気がしますが、iMessageのステッカーを読み込めるようにするとか。普段気に入っているステッカーを使ったビデオが作れるようになるため、デコ要素の少なさという問題点を改善できるのではないでしょうか。
Apple Educationでは教育活用のアイディアも
さて、Clipsがリリースされてすぐに、Appleの教育関連のTwitterアカウント、Apple Education(@AppleEDU)が、Clips活用のアイディアをビデオにまとめています。
ビデオ編集に時間をかけないこと、簡単にビデオや写真にアノテーションをして教材にする、といった使い方。今までの仰々しいビデオ授業とは違う雰囲気を作り出そうとしています。
例えば宿題をビデオで出して、ビデオで提出させる、といったこともできるようになりそうですね。とにかくビデオ活用の敷居を下げたその先に、何が起きるか、という壮大な実験になりそうです。授業用インスタントビデオを、ノリノリで作って生徒に見せる先生がどれだけ生まれるか、という部分ですよね。
この前、関西大学初等部(小学校)の授業にお邪魔したとき、教室内が大喜利(良い意味で)になっていて、こういうテンポとノリの良さの中ではいけそうだと思いました。