Special Event at Bill Graham Civic Auditorium by Taro Matsumura 松村太郎, Sept. 2016

Photo: Apple See you on the 7th Event

Taro Matsumura 松村太郎
@tarosite
11 min readSep 10, 2016

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iPhone 7発表のプレゼンテーションを写真で振り返る

サンフランシスコで米国時間9月7日に開催されたiPhone 7発表イベントに、今年も参加し、取材しました。800枚ほどの写真をピックアップしながら、イベントを振り返っていきたいと思います。

今回はその前編。イベントのプレゼンテーションの写真+コメントで、発表会を振り返りつつ、聞きながら思ったことをメモします。

冒頭の写真の通り、昨年と同じ、通算3回目の利用となるBill Graham Civic Auditoriumでの開催でした。7000人収容のアリーナの1/3ほどを使って横に長いステージを組み、仮設+2階席を生かした構造でした。

WWDC16の際にはステージの位置をもっと奥に配置し、よりたくさんの人が着席できるよう工夫していました。イベントに応じて会場サイズを変化させることができる点で、使いやすいのかもしれません。

ロビーはそのまま使っていましたが、タッチ&トライ会場は、床、壁、天井を真っ白に張って、完全に新しい空間を作り出していました。ブリーフィングも本社ブリーフィングセンターではなく、発表会会場に、全てを仮設していました。

イベント冒頭は映像から。街を走るレンジローバーが登場して、クルマ関係の何かが語られるのか、と思った方もいるかも知れませんが、このクルマといえば「Carpool Karaoke」。The Late Late Showの司会、James Cordenが運転するクルマにセレブが乗り込んできて熱唱する大人気コーナーです。

Tim Cook CEOは、Pharrel Williamsとともに、楽しそうに熱唱していました。

ミッシェル・オバマ大統領夫人も登場し注目度が急激に高まって以来、ここに登場する歌手や、歌われた楽曲の再生回数が爆発する、デジタル音楽のトラフィックエンジンになっています。2016年7月にApple Musicが放映権を獲得しましたので、Tim Cookバージョンも見られるようになるでしょう。

YouTubeでも、ダイジェストが楽しめます。

Carpool Karaokeを配信するApple Musicの話題から。1700万人という数字は、7月末の決算発表の時点からさらに200万人を追加しています。2016年に入って、1ヶ月100万人という増加ペースを記録していますが、若干加速しているようですね。

Apple Musicについては、Appleが音楽文化を本気で支えようという気負いがあるという話を書いてきました。アーティストが、Apple Musicを新作発表の場に選び、Appleとともにミュージックビデオを作り、ユーザーはワンタップでそれを楽しむ。

新しい場、新しい収益構造、新しい活動の方法…。まだまだ全てがうまく回っているわけではありませんが、着実に新しい局面へと踏み込みつつある点を、今後もアピールしていくでしょう。

10周年となるiTunes Music Festival改め、Apple Music Festivalは、ロンドンで、9月19日から10月1日まで開催される予定です。

実は、今回のイベントのクライマックスはここでした。任天堂の宮本茂さんがステージに現れた瞬間です。

Tim Cook CEOはApp Storeで50万本のゲームを配信している点をアピールしながら「1つ、欠けたものがある」といって、年末配信の新作「Super Mario Run」を披露し、宮本さんを呼び込んだのです。

米国で暮らしていると、Appleと任天堂の親和性や共通点が多いブランドだ、と常々感じてきました。子供を含む家族が安心して楽しめる点は、他のブランドにはない価値です。私も、この2社のコラボレーションを、5年以上前から望んでいました。

ちょうどイベントの前日、BoxのCEO、Aaron Levieにインタビューしました。彼は昨年のBox Worksカンファレンスで、Tim Cookと対談しています。

インタビューが終わって、昨年の話と明日のイベントについて話を振ると、「うん、Timはなんとか覚えているよ」冗談を飛ばしつつ、「新しいiPhoneなんてどうでもいいから(いや、どうでも良くないけど)、はやくiPhoneにマリオを!ニンテンドーを!」と叫んでいました。

もちろん、iPhoneにマリオがやってくることなんて、知らなかったでしょう。なんという偶然!と、Aaronの未来を読む力に感心しそうになりましたが、Aaronに限らず、多くの米国の人が、マリオを待っていたんですね。ポケモンでこの盛り上がりなんですから。

米国では9月に入り、Back to School(新学期)シーズン。AppleがConnectED活動によって、米国の数々の学校を支援していること、iPad向けにiOS 10で導入する、簡単にプログラミングが学べるSwift Playgroundsなどを紹介し、教育と寄り添っていく姿勢を強調しました。

またSwiftを導入する世界中の学校一覧が表示されており、日本の山梨英和中学校・高等学校の名前もリストにありました。

意外に力が入っていたのがiWorkアプリでのリアルタイムコラボレーション機能。GoogleドキュメントやOfficeなどに追いついた形になりますが、編集中の箇所に吹き出しで名前が表示され、Mac、iPhone、iPadなどからスムーズに参加できる仕組みは、複数人で資料をまとめる機会が多い私は、普通に重宝することになると思います。

このスライドについてちょっとした疑問は、他のメーカーがブランド名であるにもかかわらず、なんでApple Watchだけ製品名なんだろう、という点。そこは「Apple」と入れた方が格好良かったんじゃないか、と。

確かに他のブランドは、様々な時計の製品ラインを束ねた結果であることを考えると、Appleは1つの製品、Apple Watchで2位になった、と言いたいのかもしれません。

でも、メーカーで行けば、Appleはとっくに1位と言い張れるかも。だってみんな、iPhoneを時計代わりにしているでしょ?

Apple Watchの話題で、Pokemon GOが出てくるあたり、どれだけAppleは任天堂と付き合いたかったのか、と思わせられます。NianticのCEO、John Hanke氏が登壇して、もはや説明不用のPokemon GOについて、2ヶ月で5億ダウンロード以上、プレイヤーは合計46億kmもの距離を歩いたそうです。

そして、Google時代にPokemon GO開発のきっかけを作った人物である野村達雄さんが、Apple Watchに対応したPokemon GOアプリのデモを行いました。タマゴの羽化状況を確認できるコンプリケーションズとか、便利そうですね。

Apple Watch Series 2で、ようやくNike+とのコラボモデルが登場しました。バンドと文字盤は専用のものが用意され、ランニングアプリはおって配信されるそうです。バンドの別売はナシ。こうしてみると、Apple Watch Sportは実にNikeらしいでざいんにマッチするんだなあ、と感心してました。

いや、フィットネスをここまでテーマにするなら、最初からNikeモデルを…と思うわけですが、GPS内蔵が重要だったんじゃないか、と思いました。

さて、本稿も佳境。iPhone 7の発表です。今さらですが、スライドのフォントがSan Franciscoになっていますよね。ウェブサイトで見ると、パッケージデザインも、やっとSan Francisco化されて、画面やUIとの整合性がとれました。

iPhone 7でもっとも重要な変更は、ホームボタンの感圧化。ソリッドステートという名称が使われるように、物理的あるいは機械的に押せるボタンではなく、押し込む力を感知して動作する設計に改められました。押し心地はTapTic Engineが再現するそうです。

ここで、iPodのタッチホイールの画像が紹介されました。

iPodは初代はクリックホイールという名前の通り、くるくると実際に回転し、中央のボタンをクリックすることができるインターフェイスが搭載されていました。回転部分を取り囲むように再生コントロールのボタンが配置されました。

タッチホイールは実際に回転せず、指を滑らせて回転させていると認識してくれるタッチセンサーに改められました。その結果、再生コントロールはホイール部分で兼ねることができ、よりシンプルなデザインと壊れにくさを実現しています。

新しいソリッドステートのホームボタンも同じ論理。機械的に動作する部分を減らせば、信頼性が上がり、プログラマブルになる、というメリットが得られます。

このままだと、既にディスプレイは感圧タッチパネルなので、ホームボタンを画面の中に再現すれば代用でき、物理的な領域として用意しなくても良くなるかもしれませんね。

Androidスマートフォンの方が発展のスピードが速いので、iPhoneが何をやってもスペックでは勝てないのですが、それでも面白かったのはデュアルレンズのカメラ。言ってみれば、それぞれ手ぶれ補正付きの28mm/f1.8と、56mm/f2.8のレンズをワンタップで付け替えられる、という仕組みなわけで…。

Appleが面白いのは、ギャグみたいなことを大まじめにやるところ。EarPodsのケーブルを引っこ抜いただけのデザインでAirPodsを登場させ、しかも左右それぞれに、マイク、光学センサー、加速度センサーを2つずつ入れて、単体で5時間のバッテリー持続時間を確保しちゃった、という。

今回、日本に関わる話が多いプレゼンテーションでしたね。Apple Payでは日本導入が大きく扱われ、FeliCaの採用とiPhoneのSuica対応が3枚のスライドを割いて紹介されました。10月下旬から利用開始となるそうです。

イベントの最後はSiaによるライブパフォーマンス。「The Greatest」と「Chandelier」を披露しましたが、ステージではミュージックビデオと同じ演出が展開が行われており、なかなかびっくりしました。Appleはアーティストのミュージックビデオ制作にも関わるようになっていて、こうした演出を身近に行えるようになったのでしょうか。

ということで、iPhone 7発表の「See you on the 7th」を写真で振り返る前編は修了。後半はまた明日。

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Taro Matsumura 松村太郎
@tarosite

Journalist/author covering tech, edu, and lifestyle. ジャーナリスト・著者。iU 情報経営イノベーション専門職大学専任教員。キャスタリア取締役研究責任者。Tokyo JP✈Berkeley CA http://forks.tokyo/