Maarten Baasの「Sweepers Clock」
つい眺めてしまう時間、という表現
1978年にオランダで生まれたデザイナー、アーティストのMaarten Baas氏の時計に関する作品群「Real Time」。その中でもついつい眺めてしまうのが、この作品、「Sweepers Clock」です。
この時計は、実際に12時間、ゴミを掃除し続けるというパフォーマンスによって収録されたそうです。確かに「リアルタイム」。ゴミを1分ずつ動かしていくこの作業は、我々の手元にある時計を人が動かしたらどうなるか、というちょっと面白い想像を実際に試したようで、面白いですね。
Real Timeシリーズには、このほかに、「Analog Digital Clock」という作品もあります。セグメント式のデジタル時計を、実際にペイントしながら動かしていく仕組み。それぞれ2009年にイタリアで発表されました。
そしてAnalog Digital Clockは2010年にiPhoneアプリ化されています。
「時間ほど平等なものはない」とはよく言ったもので、どんなに偉い人でも1秒は1秒に変わりありません。
もちろん、1分1秒を無駄にしない、という意志で仕事に臨むことも必要ですが、何も考えない空っぽの時間というものも必要。食事や睡眠を取らなければ、その「1分1秒を無駄にしない」瞬間を1日の中で作り出すこともままならないでしょう。
最近、世界のリーダーの間では、7時間睡眠の人が多いとか。また暮らしの豊かさは、1秒の効率性からは生まれない、という考え方にも賛同できます。とにかく時間というものは多様で、多面的。同じ1秒のはずなのに。
時間に対して注目した幼少の頃の体験は、腕時計をもらったことでした。
私がもらったのはシンプルなデジタル時計で、時間・分・秒の6つの数字が表示でき、時間、日付、ストップウォッチ、タイマー、アラームの機能がありました。また、ライトボタンを押すと、液晶を照らすライトが点灯し、暗いところでも時間が確認できる、というものです。
そのときも、時計を眺めるのが好きでした。全く意味がないのですが、あのデジタル時計の数字が変わる様子とか、10分の桁、1時間の桁が変わる瞬間に立ち会ったりすることが、特別なことに思える。
そんな記憶を、BaasのReal Timeのシリーズが呼び起こしてくれるのです。