たった一つのアプリに33のUberのようなサービスを提供するスタートアップ

Tech in Asia JP
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9 min readJun 17, 2015

SendhelperServisHeroBeezeeFipinPage Advisor。これらに共通していることは携帯アプリでオンデマンドサービスを提供するスタートアップだということである。そしてこれらは全て今年ローンチしたのだ。

しかし、シンガポールベースのPage Advisorは多くの点で際立っている。アプリを開くとまず色とりどりのタイルで画面は埋め尽くされる。各タイルはアプリから予約することのできる異なったサービスを表示している。私は今のところ、エアコンサービスから車の手入れサービス、そしてワイン配達サービスといった33種類を見つけた。

「Page Advisor」はサービスの多くにおいて頼れるアプリになるため、スマホを通じて消費者と中小規模の加盟店をつなげている。ユーザーは望むサービスを選択、カスタマイズし入札が来るのを待つ。その後、ユーザーは自分の好きなオプションを選びPayPalで料金を支払う。

これは慣習にとらわれないアプローチだ。Peter Thiel氏の説によると、スタートアップはニッチ市場を独占し、外側に拡大するべきだとしている;Page Advisorは一度に多くの市場に取り組んでいるようだ。あの強大なUberでさえもある特定の部分に焦点を絞り始めた: 「サンフランシスコで贅沢な暮らしをしたい」人にプレミアムで上品な送迎サービスだ。

シリコンバレーでできたからと言ってそれがアジアでうまくいくわけではなく、Peter Thiel氏はシリコンバレーの視点から物語っていた。創業者兼CEOのFabian Lim氏はタイトなニッチに焦点を当てることは主に同質的市場である米国ではうまくいくと私に教えてくれた。だが、シンガポールと東南アジアではそうはいかないと言う。

Lim氏の目標はユーザーが一旦使えば離れられないようなアプリを開発することで、スマホのホーム画面にいつまでも残っているようなアプリを作成することだ。例えば、オンデマンドサービスの洗濯アプリだけでは十分ではないのだ。

Lim氏の基本理念はスタートアップの顧客の生涯価値をできるだけ多く高めることだ。アジアの断片化された市場は、マーケティングコストを押し上げているためこれは必須である。ユーザーにサービスのビュッフェを提供することで、アプリを多く利用してもらうことが彼の願いであり同社は取引手数料から稼いでいるため、これで企業の利益を上げることができる。純粋なエアコンのサービスアプリとマルチサービスアプリの顧客獲得コストが同じなら、後者を選ぶのが妥当だろう。

そして東南アジアのVC環境は米国より実質があるということを考えれば、このアプローチはさらに広げることができるはずだ。

興味深い性格

理論的には良く聞こえるが、実行するのは難しい。スタートアップはたった一つの理由のために集中する:それは限られたリソースだ。適切なセレクションでユーザーを満足させるためにPage Advisorはバックに加盟店を得ることができるのだろうか。

Lim氏には自信がある。アプリみたいに変化に富んだ過去を持つため、彼は平凡ではない。彼には基本給なしでもPage Advisorのサービスを喜んで販売する200人のマーケターがシンガポールとマレーシアにいる。彼らにはサービス上において清算取引の分け前を得られるという約束があり、そのためPage Advisorへの加盟店探しで忙しい。

どうやって彼らを手に入れたのか。彼はインターネットマーケティングおよび「富の教育」コースを開設していた。この200人のマーケターは彼の生徒であり、検索エンジン最適化とインターネット市場のスキルを教え込まれている。そして今度は彼らが中小企業にサービスを提供している。

過去のインタビューでLim氏は自分は億万長者だと述べた。インターネットマーケティングとWeb解析コンサルタントとして自身が得たお金で自家用機を購入した。クライアントにはNanyang Technological University、Estee Lauder、そしてFujitsuが含まれている。

結婚式のビデオ撮影だけで千万円年収を得たとも主張した。彼は株式取引システムとコンテストや景品のためのサイトを販売するベンチャー企業もローンチした。

だが、彼も壮大な失敗をしてきた:オンラインでシリコンブラを販売していたが、より大きな競争相手に価格戦争で負けてしまい、大量に売れ残った在庫を自宅で格納するはめになり、そして後に手放してしまうことになった。

Fabian Lim氏と自家用機

億万長者たち

Lim氏には起業家の創業チームがいる。CTOのBoon Peng Ho氏はデジタルマーケティングの代理店をいくつか始ている。その後、彼はインドネシアのオンラインジュエリー店のOroriとオンラインのヘルスケアサイトのTab a Doctorを設立した。

CMOであるJian Yong Tan氏はスイミングスクールを開設し、300人のインストラクターと20,000人以上の生徒で億万長者になった。また彼は、ゴルフアカデミーやヨガスクールも運営している。

そして創業チームにはCFOであるJamie Lee氏もおり、彼は東南アジアに焦点を当てた恋愛マッチングサービスであるLunch Actuallyの夫婦チームの一員だ。Page Advisorにはファイナンス弁護士であるDaniel Tan氏もCOOと法律の専門家として、そしてアドバイザーとして経験豊富な起業家で政治家であるInderjit Singh氏も在籍している。

彼らが運営している数々のベンチャーは気が散るもとになるかもしれないが、Lim氏は自分が以前経営していたベンチャーを引き継いでくれる人が見つかったため、Page Advisorに集中する時間が増えたと述べた。さらに伝統的で安定したビジネス手段を持ったチームがいるということは、自分自身で支払う心配をする必要はないということだ。

実際、彼らにはブートストラップができる約9000万円ほどの軍資金がある。あと数ヶ月でそれを計画しているがVC企業に行く前に、このお金は本当に堅実なビジネスを開発するために彼らに余裕を与えている。

なぜ勝てるのか

そのアイデアはサイドプロジェクトとして開発されてきた。最初は加盟店のためのリードジェネレーションサイトとして考えられていたが、Lim氏はそれだとうまくいかないことがわかった。

米国の保険代理店ではWebサイトやリードブローカーからリードを買う。それがごく普通;そうやってビジネスを構築してきた。しかし、こっちではその良さが理解できるほど地元企業は洗練されていない。これはただ単に、忙しい、システムがない、どうやって事後処理をすればいいかわからないということが原因である。なので、「なんでリードに金を払わないといけないのか、払うならセールスに払う。」という考え方になる。だから私たちはリードジェネレーションからMコマースに旋回した。

Lim氏にとってこれは複雑なものになった;つまり彼はPage Advisorを市場のある完全なeコマースのプロダクト、オークションシステム、マーチャントインターフェイスとして考え直さなければならなくなった。また彼は、Webやモバイルサービスからモバイル専用に切り替え、「ウェブベースのインターフェイスはもう長くない」ということを信じていた。

サービス市場の分野ではPage Advisorにはライバルがいる。マレーシアには2つ:KaodimとServis Hero。だがLim氏によると両社とも「半ループ」だという。

言い換えれば、両社は企業にリードを持ってくるだけで、Page Advisorのようにユーザーにより多くの利便性を与えてはくれない。Lim氏はこれが上顧客を確保し、企業のポジションを守ってくれることになるだろうと考えている。

初期のころ

このスタートアップは先月正式にローンチし、つまりこれは消費者プッシュの始まりに過ぎない。同社はプラットフォームの加盟店側の構築に重点的に取り組んでおり、その強力な200人の販売力はシンガポールとマレーシア合わせて計3000店との契約を生んだ。

数週間でPage Advisorは仕事要求数1149件、加盟店からの入札数3187件、実際の予約数167件を受け取った。予約数の仕事要求数に対する比を増加させることがLim氏にとってキーとなる。それと入札を受け入れる消費者の数の劇的な増加もだ-これは彼のビジネスモデルでは最大の不明点だろう。

サービスにはまだ修正する部分がある。私にとってアプリから注文するのはとても複雑だと感じた。アプリは十分な出来だったがカスタマーサービスの担当者から入札を受け取ったという電話をもらい、商品が届いた後アプリに確認コードを入力するように頼まれたのだ。

Uberに精通しているユーザーをターゲットにしているアプリにしては、この押しつけがましいアプローチは不要でむしろ歓迎されない。だが、まだこの段階で評価するのは早すぎるし、これから時間をかけてスムーズなユーザーエクスペリエンスを作り上げていくことだろう。

だが、同社には既に地域計画がある。来月までにはマレーシアに進出する予定で、年末までにはインドネシアにも計画している。

これら両方の国では、Lim氏の見通しのあるデータベースを持ったインターネットマーケティングのチームの到着を待つことになるだろう。

私たちの救いは、200人の強力なアカウントマネージメントのチームだ。もし自分一人だけで、考えがあればはっきり言って自分だけでやっていたと思う […] 2年間給料なしで200人についてきてもらうためにやる気を起こさせようとするには大きなビジョンが必要だ。全体像を売り込まなければならなかった。その全体像は、私たちと一緒に働くこと、そうしてもし正しくモデル化した場合、ユニコーンスタートアップになれるチャンスがあるということだ。そしてそこまで行けたなら、そこまで導いてくれた全員にオプションプールを取っておこう。

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Tech in Asiaは、アジアに焦点を当てたテック情報やスタートアップのニュースを提供し月間1000万PVを誇るメディアを運営。毎年アジア最大級とされるカンファレンスをシンガポール・東京・ジャカルタの3都市にて開催、累計参加者は1万5000人以上。シンガポール本社を2011年に設立(日本支社は2014年)。