インドネシア インフラ不足を補うデジタル経済のゆくえ

Tech in Asia JP
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5 min readNov 9, 2017

近年インドネシアでは若年層、労働者、富裕層によるデジタル経済の成長の高まりが見られる。

スタートアップエコシステムの担い手は、インドネシアのデジタル経済の成長を妨げる「約1.3兆円の巨獣」という高いハードルを乗り越えようと意気込みを見せている。

物流と高級みかん

写真提供:Ikhlasul Ama.

インドネシアで国内輸送をすると、実は海外からの輸入よりもコストがかかる。昨年のWorld Bank reportの調査によれば、コンテナいっぱいのみかんをジャカルタからパダン(西スマトラ)まで運ぶのに比べ、同じものを上海からジャカルタ(パダンの6倍もの道のりに相当)に運ぶ方が安価なのだ。

信用ならないインドネシアの物流管理が原因となりeコマースの成長が妨げられていることは、誰の目にも明らかである。だが、World Bankによる約400億円の資金提供のおかげで、今後物流網が整えられていくことが期待されている。

その間にも、物流系スタートアップは即効性のあるソリューションを顧客に提供し続けている。国内で開発されたバイク配車アプリ「Go-Jek」は物流サービスへと進化をとげ、インドネシアの25都市において、渋滞中の道路であってもすいすいと進んでいくことができるサービスとなった。インドネシアの政策当局は、あらゆるビジネスをさらなる顧客と収益に結びつける上でスタートアップ企業が重要な意味を持つと考えている。Ninjavan, Lalamove, Anterin, Deliveree など、国内外の物流スタートアップ企業が拡大を続けていることからもお分かりだろう。

近年、インドネシアのeコマース市場に中国の巨大テックであるアリババやJD.comが参入したことで、安定した物流企業の緊張が高まっていることも事実だ。アリババは、中国からインドネシアに運ばれる商品の配達時間を半分に減らす取り組みとして、China Smart Logisticsを通じてすでにシンガポールポストやインドネシアポストとの提携を進めている。

インドネシアにおける電子決済の需要

写真提供:Adam Cohn

インドネシアの全人口の85パーセントは現在でも現金での取引を行なっており、人口の大多数は銀行口座の開設を行なっていない。そのような中で電気通信会社、銀行、フィンテックのスタートアップ企業はそれぞれ独自の決済プラットフォームを作り、金融サービスが簡単に利用できるよう環境を整えている。

融資を行う金融スタートアップもファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)を国内で推し進めている。インドネシアのスタートアップエコシステムが急成長しているのにもかかわらず、銀行開設をしておらず担保を出すこともできない中小企業が4900万社もあるからだ

近年では、地方のP2P金融スタートアップが資金調達に成功しており、世界の投資家達の注目の的となっていることは驚くに値しないだろう。

eコマースの分割払い決済サービスを提供する金融スタートアップは、インドネシアにおけるファイナンシャル・インクルージョンを促進しようとしている。最近資金調達をした例を挙げると、Cicilというデジタルサービスでの分割払いローンが利用できる大学生用のプラットフォームや、Akulakuというオンラインショップのアプリ、 Cermatiというウェブ個人ローンやクレジットカードなど金融関連商品を扱うポータルなどがある。

2017 Macquerie report(PDFファイル)によると、インドネシアの人々は、オンライン決済の信頼度の低さから現金での取引を好む傾向にある。しかし、いまやLineやWhatsApp、BBM、Facebookなど知名度の高いソーシャルプラットフォームは、フィンテックを超え売り手と顧客との橋渡し役としてのeコマースのソリューションとなりつつある。ユーザーとのリアルタイムかつ1対1での対話を通して、顧客からの信頼を構築していくことができるからだ。その成果として2014年には、この国における27%近くのeコマース取引がソーシャルメディア上で行われていたという。

しかしオンライン決済は選択肢が多く、人々の混乱を招くことも多々ある。そのため、インドネシアでは未だオンライン決済の躍進は見られていない。さらに近頃、イー・ウォレットの取り締まりが行われるなど、多くのスタートアップ企業に課題がもたらされている。

インドネシアにおけるインフラ発展の道のりは長いが、スタートアップ、株式会社、投資家、政府、そして他の機関を含めたデジタルエコシステムの担い手たちが皆、そのギャップを埋めていくための素質を持ち合わせていることはまぎれもない事実だ。

*為替レートは1ドル100円で換算しています。

編集:Tintin Dela Cruz
原文
訳:Mari Sunahara

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