億万長者になるより、何億もの人に尽くしたいーシンガポール発のCarousell

Tech in Asia JP
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6 min readSep 29, 2016
Carousell co-founder and CEO Siu Rui Quek on stage at Tech in Asia Tokyo 2016. Photo credit: Tech in Asia / Michael Holmes.

スタートアップ設立者に初期のビジョンを聞くと、「問題を解決するため」という答えがしばしば返ってくる。アイデアで世界をより良くする問題解決者である、と起業家は自身を宣伝するのだ。

Carousellの代表取締役であるSiu Rui Quekもその1人である。シンガポールのモバイルP2P市場の共同設立者である彼はTech in Asia Tokyo 2016のステージで登壇した。ステージ上でのDavid Corbinとの会話の中で、彼は自身を、人々がインターネット上でより簡単にモノの売買ができることを望むオンライン販売オタクであると紹介した。

「私たち3人(Siu Ruiと共同設立者であるLucas Ngoo、Marcus Tan)はテクノロジーを愛するオタクで、人々の問題解決を手助けするための何かを作りたいと願っています。ですから私たちは今ここにいるのです。」

グループの目標

Carousellは主に東南アジアで活動しているが、つい最近香港にも進出した。「 設立1日目から私たちはトップ企業を築くことに常に重きを置いてきました。億万長者になりたいからというわけではなく、何億もの人を助けたいという理由からです。」とSiu Rui は言う。

Carousellは一般にユーザー数を公開しないため、彼らが目標に辿り着くまであとどの程度なのかは明らかではない。しかし今回、Siu Ruiはマーケットプレイスには3500万人以上が存在し、またCarousellには「何百万人ものユーザー」がいるという情報を公開した。

どうしてスタートアップは自社のユーザー数を公開したがらないのかという質問をした際にSiu Ruiは、Carousellの1年目の成長スピードが遅かったことを明かした。

「テックブログには、一つの主要な評価基準に的を絞れと書かれています。私たちは当初、自社にとってその一つとは何なのか悩んでいました。」 彼らは最終的に、自社のプラットフォーム上にある製品リストの数を、進歩や成功を測るための重要な評価基準に決めた。

マーケットプレイス戦争

Carousellは最近シリーズBラウンドに上がり、楽天ベンチャーズ、 Sequoia India、500 Startups、 そしてGolden Gate Venturesから3500万USドルを調達した。それによって、Carousellは東南アジアの外へと新しい市場を拡大させる十分な加速がついた。

Siu Ruiはどことは言わないものの、Carousellはモバイル企業のいない、かつ成長した市場を選ぶのを好むことを明かした。おそらくモバイルP2Pマーケットプレイスで、メルカリが支配している日本は、その市場から除外されているだろう。

投資会社の楽天ベンチャーズは、Carousellのライバルで2016年初頭に東南アジアに進出したRakumaと呼ばれるサービスの親会社である。それにも関わらず 、楽天ベンチャーズはCarousellを前々から支援してきた。またシンガポールでは、現地のデジタル企業Garenaの支援するShopeeと呼ばれるアプリとの競争が激しい。

しかしSiu Ruiはそこまで気にしていないようだ。「私たちにとってむしろ検証できる存在なんです。」と彼は言う。 「Saemin (楽天ベンチャーズの業務執行社員)は設立当初から私たちを手厚く支援してくれましたし、彼は私たちのバグを最初に発見し指摘してくれたんですよ。」

コミュ二ティーサービス

「東南アジアにはオンラインサービスの見込み顧客がまだ大勢いるため、まだまだ拡大の余地はあります。」とSiu Ruiは語った。人々はオンラインショッピングに関して十分な知識を持っている。

Carousellはeコマース企業というよりも広告企業に近いが、現在、どの企業にも好機の流れは来ている。 「マーケットプレイスに流動性がある場合は、それは機会でもあるし挑戦とも捉えられる。あなたのプラットフォーム上に商人の名前がリストアップされているのを見る時も同じことが言えるでしょう。 」と彼は言う。

より多くの商人にアプリを使ってもらえばCarousellの売上は上がるが、Carousellは彼らの製品に対してコミュニティーの関心が薄まってしまわないように注意している。「何を優先するか、がスタートアップにとっての課題です。」とSiu Ruiは言う。

「Carousellには現在23人のエンジニアがいますが、今年中に2倍の人数に増やしたいと思っています。しかし、帯域幅の許す限りの経営かどうか考えるべきですね。」Carousellは地域を超えて全体で90人のスタッフが揃っている。

そのコミュニティーはCarousellを徐々に発展させていった。Siu Ruiはアプリ初期ユーザーは大抵15歳から24歳の若者が多く、また75パーセントのユーザーが女性であるということを明かした。 また売り買いされる商品の80パーセントはファッションに関するものや美容製品で占められている。

ユーザー基盤が成長するにつれて、リストに上がる商品も徐々に変わっていった。今では家具や車までもがアプリ上で売られている。「私たちは『娘からCarousellについて聞きました。』や『生徒からCarousellについて聞きました。』と言うメッセージを受けて、高齢者人口にはそのようにしてCarousellの存在が知れ渡っていることを理解したのです。」とSiu Ruiは笑った。

Carousellはさらなる拡大を考えてはいるが、本拠地シンガポールでやるべきことはまだ残っている。

「私たちはまだ1%も成し遂げていません(問題を解決できていません)から。」と彼は残した。

この記事は、9月6日、7日に開催されたTech in Asia Tokyo 2016カンファレンスのまとめの一部です。

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Tech in Asiaは、アジアに焦点を当てたテック情報やスタートアップのニュースを提供し月間1000万PVを誇るメディアを運営。毎年アジア最大級とされるカンファレンスをシンガポール・東京・ジャカルタの3都市にて開催、累計参加者は1万5000人以上。シンガポール本社を2011年に設立(日本支社は2014年)。