ドナルド・トランプ氏がアジアの設立者たちに利益をもたらす6つの理由

Tech in Asia JP
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9 min readJan 12, 2017

これは2016年5月12日に書かれた記事を日本語に翻訳したものです。(この記事はあくまで一個人のオピニオンです。)

写真提供:Gage Skidmore

億万長者の大物ドナルド・トランプ氏が共和党の大統領候補に選ばれたニュースが話題となった。

ライバルのテッド・クルーズ氏やジョン・ケーシック氏は予選戦レースから撤退し、トランプ氏が共和党の代表に選出されるのは明白となった。

対立的で偏見を持ったトランプ氏は、暴言を連発し、政治論壇にかなりの衝撃を与えた。アメリカに違法にやってくる「強姦魔」を阻止するためにメキシコ国境の壁を築き、その費用をメキシコ側に払わせると公約を告げた。彼はまた、アメリカにやってくるムスリム外国人を完全に締め出すとの姿勢も見せた。

トランプ氏は中国と日本に対して激怒している。彼は中国の「通貨操作」やTPPの再交渉といった過激な政策を発表し、悪化する貿易赤字を対処することを誓った。

初期の世論調査では民主党の有力候補ヒラリー・クリントン氏がトランプ氏を引き離してかなり優勢であり、彼女はトランプ氏を目にもくれていないと報じられていた。彼は自身の政党の猛攻撃から逃れ、誰もが不可能だと思っていたことを成し遂げたのだ。ともなれば、トランプ氏にも来年ホワイトハウスで過ごすチャンスはあるのではないか。

トランプ氏が次期アメリカ大統領になった場合には、彼の政策によって激変する事柄は多くあるだろう。しかしアジアのスタートアップ設立者が素早く行動を起こせば、彼らの利点を活用できるビジネスチャンスが待ち受けているだろう。

今回はそのビジネスチャンス6つを紹介する。

1.国境の壁のための原材料

スチールの輸送はトランプ氏が必要としているもののうちの1つだ。写真提供: Portland Bolt

トランプ氏は米国とメキシコの間の3200kmの国境の壁は9426億円がかかると発表した。しかし専門家は2.94〜3.5兆円ほどかかるのではないかと予測している。そして建設に必要なコンクリートとスチールの2つの原材料が必要になる。

もうお分かりであろうか。中国は世界を牽引するスチールとコンクリートの生産国だ。トランプ氏はアメリカで原材料を獲得して現地の雇用増大を得たいであろう。しかしアメリカは生産設備が遅れている。スチール工場を設立するのはすぐ出来ることではない。

最も安い方法は、これらの製品をオープンオンラインマーケットプレイスで購入する方法である。この話はZhaogangのような鉄鋼業界に参入する企業に数十億ドルのチャンスをもたらすに違いない。

この話で利益を得るのは…中国である!

2.中古の建設機械

国境の壁はパッと作れるものではない。エンジニア、建設者、石工、技術屋など専門家を集めたチームが必要である。それだけでなく、ショベルやブルトーザーのような建設機械も必要だ。

そのような場合には「中古の建設機械専用のアマゾン」とも呼ばれるAllstockerのようなスタートアップがマーケットに進出できるだろう。壁の建設は一度限りのプロジェクトであるため、トランプ氏は新品ではなく吟味された中古の機械を買うに違いない。メキシコを少しでもハッピーにさせるには、コスト削減が必要であろう。

この話で利益を得るのは…日本だ!

3. 進化した生物測定学とスキャン装置

写真提供:NEC Corporation of America

トランプ氏の不動の政策の一つは、ムスリムの米入国の全面禁止である。言うは易し行うは難しの話だが、本当にムスリムの締め出しを行うならば、トランプ氏はアメリカ特有の権力と技術のノウハウを駆使する必要がある。

どのように行うのだろうか?

アメリカにやってくる人々のパスポートを確認してムスリムかどうか検証するのは難しいだろう。例えば、ムスリムが大半のインドネシアにもキリスト教徒は10パーセント存在している。エジプトでも同じような状況が見られ、キリスト教徒の人口は6〜20パーセントにのぼる。ヒンドゥー教徒が多くを占めるインドでも、ムスリムがおおよそ1億1800万人もいる。

トランプ氏は、気付かれないようにこっそりアメリカに入国してくる者に大いに注意をする必要がある。アメリカにやってくる人々を的確にスキャンし確認するために必要な生物測定学、アメリカ合衆国国土安全保障省、IoTやビックデータなどでトランプ氏の統治は予算がかさむであろう。

それならば、ムスリムの人々は自身がムスリムではないと証明する書類を持ってアメリカにやってくるのではないかと思う人々もいるだろう。しかしそのような偽造書類はハイテクマシーンで読み取って真偽を特定されるのだ。

そのツール作成にはイスラエルのスタートアップを頼るといいだろう。彼らのエコシステムはハイテックで繁栄し、トランプ氏が必要なものを供給することが出来るであろう。

ではここで利益を得るのは…?イスラエルだ!

4. アメリカへやってくるエンジニアはもういらない。

トランプ氏はSTEM教育を批難し、「エントリーレベルのIT職の3分の2はH-1Bプログラムによって行われている。」と述べた。

彼はH-1Bビザを取得するための門戸を開くと宣言したが、それは最低賃金しか払われないものだ。要するに、シリコンバレーでアジアからの才能あるエンジニアたちを雇用するのを許さないということである。シリコンバレーの企業は国内でプログラマーを探さねばならない。しかし結果としてそれらの企業はシンガポールやマレーシア、インドのでビジネスを行うことに関心を寄せるであろう。

アジアのスタートアップ設立者たちはこの流れに不満があるかもしれない。しかしシリコンバレーでの給料の方がアジアで払われる給料よりも高いことを知って彼らはこれまで不平を言ってきたわけだ。そしてもしアジアのスタートアップが強いチームを作れば、より良い投資チャンスを獲得できるのではないか。そうなればWin-winであろう。

アジア全域が利益を得る時だ。

5. ウェブサイトのデザイン

トランプ氏はオバマケア、特にバグの多いそのウェブサイトを批判し続けてきた。

「[オバマケア]は大惨事だ。本当にこれが6000億円のウェブサイトか?莫大な額をウェブサイトに費やしているんだぞ。それなのに機能しないなんて。5891億円のウェブサイトめ。おれが雇った奴らなら、たった3ドルだぞ。」と彼は大統領選挙戦で話した。

もしトランプ氏が大統領になれば、これまでに雇ってきた人々に政府レベルのプロジェクトを頼むことは出来ないだろう。利害関係の衝突が起きる。本当の代替をするならば、フリーランスに任せてしまうことだ。

オーストラリアのFreelancer.com とイスラエルのFiverrはとランプ氏のために才能を発揮できる2つのプラットフォームだ。収入額はそんなに高くないが、これらのスタートアップが得るPRの価値は莫大である。知名度のあるタスクに従事したとしてそれらのスタートアップは注目を浴びるに違いない。そしてより関心を集め、多くのプロジェクトを得るだろう。

トランプ氏がフリーランスサイトの一般競争入札を避けたとしても、インドかパキスタン、フィリピン、バングラディシュのフリーランサーに頼むことはできる。これらの地域にはフリーランスが大量にいるのだ。これもまた関心を寄せるであろう。

今回はインド、パキスタン、オーストラリア、イスラエル、バングラデシュ、フィリピンが利益を得る番だ。

6. 中国にはチャンスがいっぱい

トランプ氏のサイトで多くの比を占めるのが、アメリカと中国間の貿易改革だ。彼の政策書類の一部には、中国市場に入る条件として、中国と相互に特権法の遵守をより強力に執行し、独自開発技術へのアクセスの要求を拒むといった内容があった。

実際のところ、トランプ氏の中国での立場は騒々しく、軽率で対立的なものである。中国は彼に従うのだろうか。トランプ氏は妥協を許す人物ではなさそうだ。2国間の会談はどれも失敗に終わりそうかもしれない。

この文脈では、喧嘩腰のトランプ氏はひょっとするとアメリカ全企業に対し、中国での業務を停止させて撤退を強制する命令を出すかもしれない。そうなると中国側は排斥的な声明を出して、彼らが二度と戻ってこれなくするかもしれない。

これによってAppleの中国撤退が予想され、その空白を埋めるべく他のスマートフォン企業が市場シェアを獲得するチャンスになるだろう。SamsungやXiaomi、Huawei、LG、Sony、Oppoにとっては朗報だ。

アメリカ拠点のソーシャルネットワークサイトで唯一中国での運営を許されているのはLinkedinだ。彼らも中国を去るように命令されれば、その市場にも大きなチャンスが現れるだろう。

3月に39億円を資金調達した日本拠点のリクルーティングサイトBizreachは、この空白を埋めるための優良候補だ。たとえ日中関係があやふやでも、トランプ氏に対立するためなら手を組むに違いない。

誰が得する?中国、日本、韓国であろう。

私たちは面白い時代を生きている。

(この記事はあくまで一個人のオピニオンです。)

Osman Husain

翻訳:Mayu Tomozoe

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