フィンテック業界の行方は、中国を見ればわかる。

Tech in Asia JP
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12 min readFeb 22, 2017
メッセージアプリで食べたお金を払っている。写真提供:マクドナルド社

「銀行業務は必要だが、我々にはもう銀行は要らない」とBill Gates氏は、スタートアップ業界が我々が今見ているウェブやアプリベースの金融サービスの拡大を予測して20年前に言った。アジアで最も熱いテック業界の中でオンラインショッピングや配車サービスのライバルとなる、アジアでフィンテック・スタートアップと呼ばれている会社が、昨年1兆1000億円近くを調達している。

このような劇的な変化は中国の他にないだろう。

上海のスターバックスでは、バーコードスキャナーに携帯をかざすだけで、メッセージアプリからコーヒーの代価を支払う。寿司屋が併設されている場所では、顧客は携帯サイフアプリから食事の後で支払うことができ、更に給与のいくらかを高利回りな個人ファンドに移すこともできる。銀行でお札を数えることもなければ、レジで硬貨をガチャガチャ鳴らさなくてもよく、もちろん並ぶこともない。

2015年、オンライン・ファイナンスサービスに180兆円を注ぎ込んでいる中国のフィンテックブームについて「総ユーザーとマーケットサイズでいうと、中国は世界一だ」とMcKinseyは昨年記している

2015年度末のデータ。

中国のフィンテック市場は現在、全体で200兆円以上の価値がある。

中国の主要なフィンテック業界を見てみると、中国以外の国でどのようにフィンテックが成り立つかが分かってくる。

Scan me: 携帯支払いの波

中国の買い物客は、その他の国より頻繁に携帯で支払っている(2016年には、1億9500万人が店やオンラインで携帯から支払っている)。Tencent社の急進的なメッセージアプリのWeChatやJack Ma氏のAnt Financialによって運営されているお財布アプリのAlipayを筆頭に、2020年には3億3200万人にのぼるとEmarketerは予想している。

AppleやHuawei、Samsung、そしてXiaomiはお財布アプリを持っているが、WeChatやAlipayに比べると機能があまりない。中国のフィンテック界の取引では89.2%を占めている携帯の支払い機能の180兆円以上を競い合っている。

コーヒーを買うのに使用したAlipayアプリ

中国では、携帯端末による支払いは、他の、よりハードコアなフィンテックのが参入する誘導薬の様な役目をもつということを証明した。もっとも難しいことは、オンライン財布アプリ(決算アプリ)を人々が使い始め、現実の世界で便利で使いやすいというところまで持って行くことであると証明している。

WeChatとAlipayは、たくさんのファイナンシャルサービスを作った2大テック巨匠のTencentとAlibabaを搾取し、数百万人の人々が日常的に使うものとなった。

Alipayは、支払い機能に特化しているため、数においてはWeChatに圧倒的な差をつけている。実際、Alipayはとても大きく、VISAが遅れをとるほどだ。Alipayは最近、1秒で12万取引、1日で100億の取引を記録し、VISAの2万4千という容量を軽く超えている。

「数千円貸して」〜個人間貸し借りの上昇

本当は、変革をたくさん起こすはずであると期待されていた中国のfintechであるが、WeChatやAlipayの台頭で分かるように、実際は、莫大な資金を持つ大企業により独占されている。スタートアップとは、ゼロからものを作り出すのに競争し、努力するものだが、主要な会社からの支援や莫大な資金が得れるスタートアップしか成功しない。

さらに、中国の歴史ある金融機関はそれに適応するのが早く、Bill Gates氏の格言を反証している。

Hey, we’re huge and you can trust us!

中国で急成長しているオンライン・ローン・ビジネスの筆頭は、3つの子会社を早期に立ち上げたフィンテック業界へと拡大させた9兆6,000万円企業のPing An Insurance社のスピンオフ企業だ。いち早いシフトのおかげでこの巨大な企業は、中国最大の個人間取引のプラットホームであるLufax社を運営している。基本的にローンのためのUberで、ローンが必要で金銭的に困っている人と、貯蓄に利子を乗せたい人を繋げるプラットホームだ。

1兆8,500億円の価値のあるLufax社は、5,000億円を調達するために IPOする計画をしているとのことだ。

しかし、これは開拓に成功した会社のことである。

昨年90万人が影響した、個人間取引のスタートアップのリーダーが利用者の貯蓄と共に逃げたという7,600億円のねずみ講詐欺により、急成長したオンライン貸付業は消え去ってしまったかに見えていた。しかし、結果的にLufax社により運営され、その他のテック業界の巨匠もフィンテック業界に参入し、規模が大きいからこそ信頼できる、というように営業している。

その論争の後、今年IPOする可能性のある1,000億円企業のローンスタートアップDianrong社は、「そうだ、我々は運営していない!本物の個人間取引ビジネスは、あなたのお金を使ったり逃げたりしない。」という看板を作った。(1月23日の修正版:全広告スローガンの翻訳で、Twitterにあるものとはなぜか少し違う。)

中国銀行監督管理委員会によると、昨年中国では、 1,778もの「問題のある」オンライン貸付者がおり、個人間取引部門では、全ての悪人を捕まえれているわけではないという。

そして、いかがわしい側面もある。オンライン高利貸しの中には、大学生に担保として裸の自撮り写真を提供することを義務付けているところもある。ローンを返済できない場合、結果として裸の写真をオンラインに掲載されたり、生徒の親に郵送されたりする。

RMB10,000(日本円にして約15万円)を借りることを承諾したという印として女子大生が彼女のヌードビデオをオンライン高利貸し業者に送る。写真提供:Quartz, Weibo

しかし、DianrongやLufax、ニューヨークで上場しているYirendai及びその他の企業は、ほとんど何も影響なく展開している。そして、これらの企業の継続的成長は、中国のオンラインローン業界は依然として人気があることを示しているし、発展もしている。政府が規制内容を大まかに述べ出しているのだ。

ニッチで世界的に大きなフィンテックスタートアップのLending Clubの共同創業者Soul Htite氏も、Dianrong社の考案者だ。彼は銀行の必要性をなくすのではなく、2016年のねずみ講の再発を防ぎ、顧客の信頼をあげるため、2つの中国商業銀行にスタートアップの管理人としての役割を任せた

他の新しい現金貸付業では、中国のスタートアップが支払いを通じてオンラインショッピングを提供している。2つのサイトQudianとFenqileは、このような調子で1,200億円以上を調達した。中国のテック業界ではよくあることだが、大手企業に圧迫されるリスクがある。Alibabaの最大のライバルJDが自ら支払いツールを展開するときにこのようなスタートアップに襲い掛かってくるだろう。

要チェック:クレジットの歴史の謎を解決するには

中国には信用を評価するシステムがほとんどなく、どのようにリスクを調査するのか。期待の膨らむ中国の町並みに大きな雲が覆いかぶさる。

中国のフィンテックスタートアップのメンバーにとって、ソーシャルメディアが答えである。

ローンを申請者はメインのソーシャルメディアのアカウントで申請する。企業はそのデータをデータ解析する機械に入れ、不審な動きや偽装のクレジットカードを調査する。いきすぎたものもある。申請者が申告書を書く際に申請者の携帯のキー操作を検閲し、鷹のような目を持つAIで、高速でコピー&ペーストする人や、高額な資金を借りた人々を見つける企業もある。

5億人以上のネチズンとスマートフォンの所有者がいるので、中国におけるフィンテック活動の殆どが携帯で行われている。写真提供:Jens Schott Knudsen

そのようなソーシャルメディアでのスパイ活動は、インドや東南アジアの貸付業スタートアップで行われている。

Alipayは非常に大きいので、Visaは遅れているように見える。

Alipayアプリの中でアクセス可能なAlibabaのSesame Creditは、独自のやり方を用いている。Alibabaのeコマース界に入り込み、貸付人が安全か危ないかを知ることができる。TaobaoとTmall店の購入履歴を見ることにより、Jack Maの企業は金融商品の基盤を作る信用評価システムを作り出す。

このような型破りな方法が事業融資にも広がっている。Dianrong社は最近、デジタルなお金に登録して本を探す新しい事業を伸ばすため、小企業のオーナーに資金を提供し始めた。登録をすることでデジタルのお金を得ることもできる。

個人金融の発展〜個人をあてにする

中国で、銀行はなくならない。銀行はオンライン銀行に移行している。テック業界の巨匠も銀行もオンライン銀行を使い、たまに連携している。

中国の最大検索エンジンのBaiduは最近、CITIC Bankとパートナーシップを結んで店を開設した。共同ブランドのクレジットカードとオンライン金融サービスをパートナーシップでカバーする。

中国の2大テック企業はオンラインだけに焦点を当てている。Alibabaは8,000万円まで借りることのできる MyBankを2015年中旬に開設した。また、銀行が通常貸すことのない小規模のローンも借りることができるようになった。銀行よりも高利回りを約束している個人ファンドのYu’ebaoのような中国有数の貯蓄家をターゲット層としてJack Ma氏のAlipayから分離独立したAnt Financeの様々なサービスをMyBankは賞賛している。

Alibabaの共同創業者Jack Maは、中国で2番目に裕福な個人であり、最も裕福な技術系のボスである。写真編集:Tech in Asia; 元の写真提供: UN Climate Change

Tencentは最初にそこに介入した。中国の最初で最大なオンライン銀行は2015年はじめに開設された。ソーシャルメディアの影響により、WeBankはWeChatの8億4,600万人、QQの8億7,700万人のアクティブユーザーに簡単にアクセスできる。Alibaba最大のライバルに引けを取らず、TencentはLicaitongというWeChat内でできる個人資産ファンドを持っている。

中国はプライベート・バンキングシステムをより発展させる一環として、このような新しい機関を推奨している。「政府は寒い冬にあなたを見捨てはしません。新しい個人銀行が暖かい春を作ってくれるでしょう。」とWeBankのローンチ時にLi Keqiang首相は観客席に語った。

オンデマンド・オンライン保険

オンライン保険は中国のフィンテック業界のほんの一部ですが、魅力的なものだ。

この部門が注目されていることも、今となっては当然のことだが、中国の有名な3大企業であるAlibaba、TencentそしてPing An Insuranceが2013年に、ZhongAnというオンラインのみの保険業者をスタートさせた。

「2013年は、中国のインターネットファイナンスの歴史最初の年で、Yu’ebao やWeChat支払いのローンチのように、たくさんの活動が大ヒットした」とMcKinseyは記載している。

当時、220兆円規模の革新的な産業のおかげで大きく成長し、KPMGのリストにある先駆者トップ10のうちの5社は中国の会社で、中国内で日々拡大もしている。

中国のフィンテック界で次に来るのはブロックチェーン技術か?それともAIや自動化か?世界中の国々が注意深く興味深く見守っている。

Converted from Chinese yuan. Rate: US$1 = RMB 6.84.

[原文]

By. Steven Millward

翻訳者:Sawako Ono

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Tech in Asiaは、アジアに焦点を当てたテック情報やスタートアップのニュースを提供し月間1000万PVを誇るメディアを運営。毎年アジア最大級とされるカンファレンスをシンガポール・東京・ジャカルタの3都市にて開催、累計参加者は1万5000人以上。シンガポール本社を2011年に設立(日本支社は2014年)。