インドで初めてのデートアプリがサービス終了。5年の歴史に幕

Tech in Asia JP
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7 min readNov 17, 2016
写真提供:Alex Bellink.

ビジネスモデルとターゲット層がそれぞれ異なるCogxioとDateIITiansという2つデートアプリ。これらがついに終わりを迎えた。アプリの設立者であるLayak Singhhat氏は、間違いはこれまでの過程の中で作られたとブログに書き記した。「インド人ユーザー、そして彼らの行動を理解するのが難しかった。」とSinghhat氏は言う。

しかし何が間違いだったのかを考える前に、まずはそれらのアプリがどの様な経緯で誕生したのか見てみることにしよう。

IIT Kharagpurに在学していたSinghhat氏は、大学生活最後の年の2011年、DateIITiansで働き始めた。DateIITiansは インドで一流のエンジニア学校である。
その頃はまだTinderやインド発の出会い系のアプリが出る前であった。翌年Singhhat氏はデートサイトを開設するために、IITianの仲間である Kinshuk Bairagi氏とウォーリック大学のMBAを卒業したSarit Prajna Sahu氏と共にスタートアップを立ち上げる。主に学生および、インド工科大学 (IITs) とインド経営大学院 (IIMs)の卒業生向けのオンラインデートポータルであった。

「開設したサイトはすぐに学校中に広まり、インドのAlexaランキング507でトップ5ウェブサイトになったんです。 それで、かなりのレベルでこのプロダクトのマーケットがある!と興奮してしまったんです。なので就活をせずに、フルタイムで自分のスタートアップに力を費やし始めました。」とSinghhat氏はTech in AsiaのAMA sessionで説明した。

Tech in Asiaは2012年6月にDateIITiansについて取り上げたことがある。その時はDateIITiansはまだウェブサイトのみで、ちょうどAndroidとiOS向けのアプリ作成に取り組み始めた頃だった。サイトの登録にはユーザーIDが必要で、ユーザー全員がサイト上でそのIDの確認をしなければならなかった。Tech in Asia記者のC. Custerは試しに使ってみたが、プロフィールを削除する際に行き詰まってしまった。しかしCusterはそれでもDateIITiansを注目のスタートアップとして見ていた。

Tinderが現れる前

DateIITianとCogxioの共同設立者であるKinshuk Bairagi氏とLayak Singh氏。写真提供: Cogxio

DateIITiansは完璧な製品とは言えなかったが、当時はTinderが出る前なので、そう考えるとかなり先を行った製品であった。オンラインデーティングなどという言葉はインドでまだ聞かないような時であったし、その新規性がDateIITiansを上昇させていた。サイトは3か月のうちに500万人のヒットを叩き出し、何万人ものユーザーを獲得した。

しかし実行可能なビジネスには至らなかった。若い起業家だったSinghhat氏はそこでニッチ市場でのスケールアップや資金調達がいかに難しいかに気づいた。

そこで彼らが思いついたのがCogxioである。位置情報機能を使ってオンライン上のコネクションを現実のものにするというアイデアだ。それから、「オンラインからオフライン型」がUberやZomatoのようなインターネット消費者向けのプラットフォームに結びついた。

Cogxioはロマンチックが集まる場として作られた。「Cogxioでは自分の街内でロマンチックなディナーをするのに最適な場所を見つけたり、好きな人へギフト券をあげたり出来るんです。またあなたのチョイスに合わせて好きな人との冒険の旅の目的地を探すこともできますよ。」とSinghhat氏は2014年のCogxioローンチ時に語った。

しかし今まで、いくつか他のオンラインデートサイトがあったが、CogxioはDateIITiansをローンチした時のようには予約が入らなかった。またAndroidアプリができたのは2015年5月で、かなり時間がかかった。ローンチから1年経っても、Cogxioは12,000人ほどのユーザーしか獲得できていなかった。

Cogxioチームは、すでにマーケット上にTrulyMadlyやWoo、そしてVeeのような十分資金のあるデートブランドがいる場合、新サービスを立ち上げて信頼を得るには時間がかかると考えた。「私たちは技術の方にかなり力を入れ、マーケティングについてはあまり考えていませんでした。素晴らしい技術が完成した際には、顧客は自動的にこちらへ来てくれると思っていました。しかし私たちの予想は間違いでした。」とSinghhat氏は振り返った。

文化の壁

写真提供:Pixabay

インドは様々な観点からデートアプリの最適な場と言えるだろう。何しろ世界の若い世代20億人のうち6億人がインドにいるわけで、それに加えて267兆円の消費力を有する。調査によれば2017年までにはそれらインドの若い世代はこれまでの世代より消費力を有すると考えられている。それ以外にもインターネットを使用する人は毎年90パーセントずつ増加し、10.1億の携帯電話が使用されている。また4.62億人のインターネット利用者、そして1.53億のソーシャルメディア利用者を誇る。オンラインデート市場が急速に成長するであろうという考える理由は充分にある。

発見:最新情報!インドにおけるウェブ、モバイル、ソーシャルメディアの数(Infographic)

そのインド市場に賭けてみようとしたのはSinghhat氏達だけではない。 Tinder、TrulyMadly、Woo、Thrill、Veeなども同じようにインド市場を狙った。TrulyMadlyは昨年、Helion Venture Partnersと Kae Capitalから6.1億円、そしてWooはエンジェル投資家から2.56億円の資金調達を行った。Vee は非公開ではあるがLightspeed Venture Partners、Porteaの代表K Ganesh、そしてCarDekho の代表取締役Amit Jainから資金調達を行い、婚活アプリWedlockを巻き返した。婚活向けのオンラインサイトである ShaadiBharatmatrimonym4marryも同様に活発なビジネスを行っている。

これら全てのデート・婚活サイトに勝つのは自力で戦うSinghhat氏達にとって容易なことではなかった。それよりも根本的な問題はユーザーの信頼を得て文化の壁を乗り越えることであった。

「インドの文化は変わってきています…しかし、そうは言ってもオンラインデートアプリが普及するのは3〜5年はかかるでしょうね。」とSinghhat氏は言う。

言い換えればこの分野でのビジネスは、マーケットが成長するまで生き残るための我慢強さと資金が必要だということだ。Singhhat氏はこの選択肢はもう無理だった。そのためSinghhat氏はデートアプリビジネスをやめ、現在はArtivaticと呼ばれるAIツールを使い、ビジネスでより良いデシジョンメーキングができるようにするサービスに取り掛かっている。

円への換算 US1ドル=108.97円

By: Malavika Velayanikal

翻訳:友添茉結

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