Lazada CEO:東南アジアが勝ち抜くための秘訣とは

Tech in Asia JP
Tech in Asia JP
Published in
8 min readDec 1, 2017

Lazada代表のMax Bittner氏は、採算性について、親会社Alibabaからのプレッシャーを一切感じていない。なぜなら、彼の今の狙いは機会を拡大することにあるからだ。「東南アジアへの進出は、彼らにとって期待に満ちたものだと思う。彼らは東南アジアを中国と同じように大きな機会だと捉えており、私の役目は市場を獲得することにあるからだ。」という彼の話は、Tech in Asia Jakarta 2017での談話の中で語られたものだ。

市場獲得のためには、eコマース戦争において大きなインパクトを与えることが必要となる。この戦いには、顧客を誘い込み、陣地とマーケットシェアを得ようと多額の資金を費やす多くのプレイヤーが参加してきた。Alibabaの財力のおかげで「競合と張り合うことができる」とBittnerは述べる。

Lazadaの最大のライバルであり、一部上場であるSeaのeコマースサイトShopeeに対し、「資金調達に苦労し続けるだろう」と彼は主張する。「公開市場の投資家はある時点で利益率の改善を求めるものだ。私たちはその監視下に置かれていないため少し贅沢をしている。」

また、体力で勝負をするということ以外においても、競合との差別化はできると信じている。Lazadaはインフラ構築による差別化をまさに実践しているところだ。

Lazadaは消費者への直接販売を開始した。それゆえ、「東南アジアのAmazon」と称されている。2013年にはその資産を利用し、第三者売り手市場に乗り出した。そのサービスには保管業務や包装作業、郵送も含まれる。この市場は、Lazadaの支出の大きな割合を占めるほどの著しい成長を見せている。

Bittner氏によれば、Lazadaは東南アジア内で15にわたる倉庫を所有しており、商品の大量仕分けを実践している。そのうちの3つはインドネシアに位置し、年末までには、250億円の巨大市場に新たな2つの倉庫建設が予定されている。同社は「一貫したバリューチェーンの可能性を確信して」おり、ラストワンマイル配送サービスの拡大にも力を入れている。

写真提供:Lazada

Bittner氏は「three Cs」と彼自身が呼ぶ3つの要素に着目している。「まず、与えられた時間で大量のシステムを動かすことができるほどの収容力(Capacity)。そして、コスト削減(Cost)。最後に一番大切なのが能力(Capability)だ。」

「皆が皆同じものを欲しているは思っていない。待つことを厭わない人だっているし、早く欲しいと思う人もいる。我々がシンガポールでRedmartと共に実施しているように、確実な受け渡し日が知りたいと思う人もいるだろう。冷蔵庫のような大きいものであっても、安価で小さな商品であっても、それはいわゆる能力の品揃えだ」と彼はそう説明した。

衝突するモデルの存在

Shopeeは異なった方法をとっている。Seaの代表であるNick Nashは業者のための市場構築は低コストであることが要求されるだけでなく、むしろ東南アジアにおける物流成長の基礎レベルに適していることが理想とされると考えている。

大都市にある少数の巨大倉庫に頼るのではなく、売り手が地域ごとに分散されていることに利点がある。売り手から買い手へと繋がる進路がもっと効率的なものになるということだ。それは、輸送時間が長くなるハブアンドスポーク型と比較すると一目瞭然である。

業界用語で言えば、これは「アセットライト(Shopee。資産保有小)」と「アセットヘビー(Lazada。資産保有大)」という二つのモデル間の衝突を意味している。さらに、Nash氏はアセットヘビーによるアプローチだと幅広い商品の品揃えの実現が見込めなくなると主張する。「内側(工場)からサプライチェーンマネジメントを機能させるのは不可能に等しいね。」とTech in Asia Jakarta 2017のステージにて語った。

Nash氏は直接小売と市場が一体化していることに関して、そこでは関心の衝突が起こっていると考えている。「アセットヘビーの場合、卸値で買い、倉庫に保管し、1度にとてつもない量を売らなければならない。それでは売り手とは相容れない状況に陥る。」

Seaグループ代表のNick Nash氏(左側)。写真提供:Tech in Asia

Alibabaにつづけ

業界の最大のチャレンジは販売規模の拡大だけではなく、地域全体の物流問題に働きかけることにあるとBittner氏は主張する。「物流問題が解決できるかどうかがネックになると我々は考えている。市場が成熟していくにつれ、システムの信頼性向上が期待できることが重要だ。」

インドネシアでは、Lazadaの元国内代表であるMagnus Ekbom氏が、サードパーティーロジスティクスのプロバイダ達はLazadaの成長に追いつくことができなかったと残念がっていた。「インドネシアは物流のキャパが小さすぎる」と述べたほどだ。

同社は、顧客の手に渡るまでの配送を物流業者に託してきた。例えばシンガポールのNinjavan や、インドネシアのGo-Jekといった企業に、である。しかし、需要に応ずるべく、同社は自社配送網を確立するための大規模投資を開始した。現在Lazadaは、インドネシアにおいて大量の配送を一手に引き受けている。

このインフラ投資はAlibabaが快く受け入れる試みである。(アセットライトのグループ会社であるTaobaoやTmallを持つため)9月には、Alibabaの物流ユニットであるCainiaoが、グローバルな物流ネットワーク構築を目的として、5年で約1500億円の支出を行う旨を発表した。Alibabaも新しい種類のリテール構想を進めている。Amazonと同様、冷蔵設備のある物流センターを整備し、中国で食料品のオンライン販売を開始している。

同社は電子産業やデパート産業への投資に見られるようなオフラインでのリテールにも着手している。Hemaと呼ばれるスーパーマーケットチェーンを展開し、そこは買い物だけでなく食事、モバイルを介した食品の宅配注文が行われる場所となっている。

「若い時は小さくて軽いモデルがいいんだ。想像して。力を持ち大きくなったとき、重たいものが必要になるだろう。」アリババの創業者にしてアジア一の富豪であるJack M氏はそう言った。「重い軽いのどちらがいいかではない。その組み合わせが大切なんだ。一流になるために軽い、重い、の二つのモデルを組み合わせることが必要になる。しかし今日のAlibabaの規模をもって重いモデルを他人に押し付けてはいけない。それは君たちが挑戦すべきこと、君たちが投資すべきものなんだ。」

写真提供:Lazada

資金援助者

Lazadaは、Shopeeに加えて、BukalapakやJD、 Qoo10、そして新しく参戦したAmazonとも戦いを繰り広げている。その戦いが今後どのような展開を見せるかを尋ねたところ、Bittnerは「正直のところわからない」と言った。確かなのは、「アリババの時代はこれから。そして我々の時代もこれからだ。我々を他と差別化するものは何かということに焦点を当て、張り合っていく。」

LazadaはAlibabaが持つ戦略からたくさんの学びを得ている。2社が手を組んでいるのは、顧客が適切な商品を手にするためのビッグデータや、不正販売を防ぐテクノロジーを最大限に活用できるようにするためだ。

「我々は商品の注文数に制限を設けている唯一のプラットフォームなんだ。Lazadaでは一度の注文につき1つの商品を20個も注文できないようになっているため、一度戻ってから再度注文をしないといけない。この方法により詐欺行為が発生しているかどうかを常に確かめているんだよ。」とBittnerは説明する。

「Alibabaにはこういった詐欺行為をうまく回避した数々の経験があるんだ。」

LazadaのCEOはインドネシアでモールを開店することをほのめかしており、それはAlibabaのスーパーマーケットの例に手がかりを得ている。

「我々は必要な戦力を得、後ろ盾としての大企業が付いている。必要なことには取り組み、そして勝ち抜く。」Bittnerはこう締めくくった。

この記事は、20171112日に開催されたTech in Asia Jakarta 2017での取材内容の一部です。

編集:Judith Balea

原文

訳:Mari Sunahara

--

--

Tech in Asia JP
Tech in Asia JP

Tech in Asiaは、アジアに焦点を当てたテック情報やスタートアップのニュースを提供し月間1000万PVを誇るメディアを運営。毎年アジア最大級とされるカンファレンスをシンガポール・東京・ジャカルタの3都市にて開催、累計参加者は1万5000人以上。シンガポール本社を2011年に設立(日本支社は2014年)。