急成長中の東南アジアeコマース市場は10年以内9400億円から28兆円へ

6億人の人口、成長する中級階層、上昇するインターネット普及率。しばしば東南アジアは次のeコマースゴールドラッシュの場としてみなされている。Alibabaの1148億円によるLazadaの買収(Jack Maの最も巨額の買収と言える)が今年の初めにも起こったばかりだ。しかし記事の見出しや誇張を抜きにして、実際の東南アジアのeコマースのチャンスはどれくらい大きいのだろうか?

28兆円のチャンス!?

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東南アジアのeコマースマーケットの規模における現在の予測データはほとんどない。まだ出来てから年が浅い業界なので、政府や研究機関のような既存の機関はまだ情報収集に追われている。また、C2Cのeコマースが規制されておらず、課税もないことも理由にある。C2Cのeコマースは、eコマース取引総額の30%50% を占めると見積もられている。東南アジアにおけるC2Cの大半はFacebookやInstagramのようなソーシャルプラットフォームで使用されており、そこに LINEやFacebook Messengerのようなメッセージアプリが促進をかけているため、この使用率は避けられない。

そこで、有名な組織のいくつかは東南アジアのeコマースの規模を評価しようと試みた。最初にマーケット規模の測定しようと試みたのは、マレーシアの銀行CIMBとコラボしたAT Kearneyである。2015年の初めに発表した調査では2013年時点のマーケット規模を8037億円、将来の可能性を28兆円と見積もった。

最近では、GoogleとTemasekが現在の東南アジアeコマース・マーケットの規模を2015年時点で6350億円であると発表した。同調査によれば、早くとも2025年にはマーケットは28兆円にまで成長するだろうと予測されている。

しかしGoogleとTemasekは部分的にしかマーケットを描いていないということは留意しておく必要がある。:OLX、Carousell、InstagramのようなC2CやP2Pマーケットプレイスはデータを得るのが難しいため、この調査からは除外されている。

東南アジアeコマースにおける可能性の見積もりが間違っているのはなぜか?

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28兆円は大きな数字に聞こえる。しかし現実に目を向けてみると、これは本当に正しい数字であるのか疑問に思えてくる。今日のアメリカのeコマースマーケットは45兆円である。しかしアメリカのeコマースマーケットはより成熟していて、AmazonもeBayも東南アジアのeコマースよりもずっと前から存在するものである。

中国の場合はどうか?中国は2013年にアメリカを上回り、総取引額が世界1位のeコマースマーケットとなった。

今日では中国のeコマースは82兆円のマーケットで、国の総小売の13パーセントを占める。となると、中国の人口の半分がいる東南アジアでは、eコマースの将来の可能性は28兆円以上なのではないか?

人口規模に基づいて2025年の予測数値を正規化してみると面白い。この測定基準では、1人当たりにつき一年でいくらeコマースに使うのかというアイデアが湧く。

基準となるアメリカや中国と同様に、今回のキーとなる東南アジアマーケットの測定も行ってみた。

この表からいくつかの点が見て取れる。

明らかに中国は未だに世界最大のeコマース市場である。総取引額は346兆円に達し、25パーセントの浸透率を誇る。2025年までには、中国の顧客のオンライン消費は年間平均23万円を超えると予想されており、これはシンガポール人が消費する額の3倍に値する。アメリカは今後10年で一人当たり年間34万円を消費するであろうという数値もこの表から見て取れる。

タイやインドネシアに代表されるような成長する東南アジア諸国には、興味深い別の事例がある。GoogleとTemasekは、この2各国のeコマースマーケットはそれぞれ1.28兆円、5.3兆円に達するだろうと報告した。これは相当な額である。しかし人口のサイズで正規化してみると、1人あたりのeコマースの総取引額はタイで1.78万円、インドネシアで1.8万円と非常に低いものになる。

ひょっとするとなにか理由があるのかもしれない。

タイやインドネシアのような成長中のマーケットに比べると、アメリカとシンガポールでは一般的に人々はよりお金を使い、1人あたりのGDPは明らかに高い。それから、もうもはや新興国ではないと言える中国では、2025年には1人あたりのGDPは161万円にまで達すると予測されている。

しかし、下記の表で中国とタイを比べると、タイの1人当たりのGDPは2025年までに126万円まで達することが予測できるだろう。これは現在の中国の1人当たりGDPよりも高い額であり、2025年の中国の値にもさほど遠くないものである。しかし現在のeコマースの予測によれば、タイの1人当たりオンラインはたったの1.78万円で、1家庭あたりの購買力はたった1パーセントである。

下記の表の小売の浸透率と1人あたりのGDPの数値に証拠付けられるように、タイの消費者には購買力があり、小売業がタイの経済の大部分を形成している。そうすると予測されている数値は理にかなっていない。考慮していないC2CやP2Pマーケットの数値を含めたとしても(例えばその他50パーセントがだいたい1.8万円から3.4万円だったとしても)、理にかなわないだろう。

しかしこの数字は現在の中国と比べるとまだ低いものではある。

2006年から2016年にかけて、中国の1人あたりのeコマースの総取引額は127倍に成長した。タイの1人当たりの総取引額が今後10年の間に9倍しか伸びないというのは信じがたい。とりわけ、かつて2006年に中国でeコマースブームが起こった際と比べると、すでに現在のタイでは1人あたりのオンライン消費が多いのである。これはもし東南アジアがタイやインドネシアのような成長マーケットが18パーセントというような西欧スタイルのペース(アメリカの2000~2015年)で穏やかに成長し、中国の年平均成長率68パーセントというような過去10年のeコマースの急成長をしない場合には、タイの総取引額の伸びが9倍という値にとどまることはあるかもしれないが。

お分かりのように、この数値の不一致の理由は西欧中心のeコマース成長モデルを採用していることにある。東南アジアのeコマースの規模を考えるためには、中国の急成長モデルを使用するのが正しい。

親の違う兄弟?成長する東南アジアeコマースはとにかく中国と似ている。

現在予測されている数値の間違いは、西欧中心のモデルを採用してしまうことにある。というのも、西欧ではeコマースに対して絶対確実な方法が採択されているのだ。しかし後でも詳しく述べるが、東南アジアのeコマースはアメリカやヨーロッパ、日本のような先に成長したマーケットよりも、中国にずっと似ている。そのため、中国が過去10年で経験したような2桁ペースの急成長を期待する必要がある。年々徐々に進歩していくような以前のeコマースマーケットとは違うのだ。

1. オフライン小売のインフラの不足

「どうして中国のインターネットeコマースはアメリカより早く成長するのか?なぜなら中国のコマースインフラが悪いからである。Wal-Martや K-Martなどすべての実店舗がそこら中に揃うアメリカとは違い、中国には何もないのだ。アメリカのeコマースはただの砂漠で、メインビジネスの補完的立場にある。しかし中国ではeコマースはメインビジネスなのである。」 — Jack Ma

バンコクとジャカルタではCentral World、Paragon、Grand Indonesiaのような高級ショッピングモールやデパートを展開している。しかし、中心部を離れるとそのような店は何もない。中国も同じで、北京や上海、広州のような都市部にオフライン小売店が集結している。

ジャカルタのMall Taman Anggrek。写真提供:Dionisus Purba/CC BY 2.0.

アメリカの小売業における1人当たりの廷面積は、2,200平方メートル。CLSAのデータでは、中国では500平方メートル、タイで500平方メートル、インドネシアで100平方メートルという値になる。結果としてタイとインドネシアの大多数の消費者は、とりわけ大都市外に住む人々は、オンラインショップを使わざるをえない。aCommerceによれば、注文の70パーセントはバンコクの外からのものである。

これらの事項によって、東南アジアでは旧来のeコマースの成長方法ではなく、中国のような急速な成長を期待することができる。

2. 着払いと有力な支払い方法

過去10年の中国eコマースの68パーセントの成長において、クレジットカード不足が成長の妨げとなったことはない。(理想からは少し離れた)フィナンシャルシステムを使用し、ロジスティクス・運送企業は着払い方法を提供してそのギャップを埋めるようになった。

2008年の盛時には、着払い方法は中国におけるB2C取引の70パーセントを占めた。しかし2014年までにAlibabaのAlipayが有力な支払い方法として台頭して着払いを上回った。また11/11ショッピングデーの顧客のうち、85パーセント以上がAlipayを使う方が良いと回答し、21パーセントが着払いと答えた。

今日の東南アジアは10年前の中国と似ている。クレジットカードの浸透率が低く、着払い方法はだんだんと有力な支払い方法に変わってきている。aCommerceのデータによれば、東南アジアマーケットでの取引のうち、74パーセントが現金である。中国と同様、東南アジアのeコマースも着払い方法にずっと頼るわけではないだろう。Lazadaの買収によって、現在AlibabaはAlipayとAnt Financial Serviceを東南アジアに持ち込む総合計画を実行している。

3. 高い輸入関税と税金のせいで国境を超えられないeコマース

中国の国境を超えたeコマースはこれまでそれ程大規模ではなかった。政府が保税倉庫を承認し、速い国際の運送時間と低税が可能になった。グローバルブランドや小売業は現在、利益の多い中国マーケットに進出し、 コストの問題なしにTmall GlobalやJD Worldwideのような店舗プラットフォームを設置している。

以前は30パーセントという高い輸入関税のために、中国の消費者の海外注文は限られていた。(未だに、Amazon.com.から直接注文する、というように、中国での海外eコマースネットワークで販売する資格を持っていない企業には、輸入関税が課される。)

中国と似たように、今日のタイやインドネシアのような東南アジアのマーケットの成長ではひどく高い輸入関税や税金が見受けられる。このグローバルグラウンドの欠乏は、インドネシアで「eコマース大虐殺」を起こしている成長している強力なローカルeコマース・エコシステムに圧力をかけている。

4. 「尾の無い」エコシステム

中国と東南アジア諸国におけるインターネットの普及は、2000年代中期までに必要量までに達しなかった。これらのマーケットではWeb1.0を飛び越して「Web1.5」ブーム、もしくはWeb2.0の時代が到来し、「尾の無い」エコシステムを形成した。結果としてこれらの国々のデジタルマーケットは、FacebookやPinterestなどの企業が明らかに儲けのために(時にはそれだけが儲ける方法である)広告を売るようなアメリカや日本などの成長したマーケットに遅れをとることとなった。

成熟した広告環境が欠乏しているために、中国のインターネット企業は中国のeコマース業界を今日の絶対的な地位にまで押し上げたコマースにマネタイズを求めるしかなくなった。

「アメリカの企業が広告収益にフォーカスしているのに対し、中国の企業はeコマースのペースメーカーとなりました。」とThe Washington Postは報告した。

「Facebookでは何も買うことはできませんが、WeChatやWeiboでは画面上のものは何でも買うことができます。」と上海拠点のSOS Ventures及び Chinaccelerator担当のWilliam Bao Beanは言う

Uberはその豊かな財源のおかげで中国での失敗を免れた。ライドシェアの大手Uberは、短期的な輸送収入ではなく長期的なeコマース・マネタイゼーションを行っていた競争相手に負けたのだ。

中国の10年前と似て、東南アジアは新生広告マーケットになった。「地元の出版社が十分におらず、そのために広告者に出費することが無いのです。」と以前 Google、AdMobに勤めていた東南アジア・アドテック専門家のLichi Wuは言う。

全てのコンテンツ・クリエーションを支配するFacebookとInstagramのような「壁に囲まれた庭」があり、鶏が先か鶏が先かの解決できない悪質なサイクルを壊す十分な力が備わっていなかった。しかし低いRPM(評価やパージビュー1000当たりにおける収入)という厳然たる現実に直面し、多くのオンラインビジネスがビジネスモデルとしてのeコマースを受け入れた。

2016年Singles Dayキックオフイベントで楽しそうに笑うAlibabaの創設者Jack Ma (右) 。写真提供: Alibaba.

タイやインドネシアの「消極的な」収入で最も多いのは、TaobaoやAliExpress から商品を買ってFacebookやInstagramでそれを転売することである。(比較すると、アメリカにおける「消極的な」収入とは、在宅の起業家がリゾート地へ出かけてブログを書いたり、SEOを行ったり、広告収入を生むためにアフィリエイト・マーケティングを行うことである。)

中国モデルを基準とした東南アジアのeコマースの規模拡大

これら全ての測定基準によって、現在の東南アジアのeコマースと2006年の中国のeコマースが似ていることがわかった。

例えば、タイの2016年における1人あたりのeコマースの総取引額とeコマースの浸透率は中国の2006年の数値と同じくらいである。(厳密に言えば、2016年のタイのeコマースの数値は2006年の中国の数値を越している。)

東南アジアeコマースの今後およそ10年を基準として、1人あたりの国内GDPのパーセンテージとしてのeコマースの1人あたりの総取引額を見てみよう。この測定基準で、生活水準と関連した個人のeコマース購買力を思い浮かぶことができる。今回中国の1人当たりのeコマースの数値を使うことは出来ない。2025年までのタイの1人あたりのGDPは中国の2016年の数値よりも高くなると予想されているため、中国の1人当たりのeコマースの数値を使うと、東南アジアのeコマースの可能性を低く見積もることになってしまう。

中国の1人あたりの国内GDPにおける1人あたりのeコマース総取引額は、2016年で6パーセントである。2016年のタイとインドネシアの予測される1人あたりのGDPを掛けると、タイで5.9兆円、インドネシアで5.3兆円のeコマースマーケット規模があると言える。GoogleとTemasekの1.28兆円、5.3兆円という予測と比べてみると、どれ程の額がまだ測定されていなかったかお分かりであろう。

GoogleとTemasekの2015年におけるタイとインドネシアの数値で、それにC2Cを30パーセントほど見積もってみると、ここから年間予測をすることができる。そうすると、年間成長率はそれぞれ5.9兆円、18兆円に達するという平均が出る。従来の29パーセントと39パーセントという数値と比べると、このシナリオでは、この新しい年平均成長率はタイで43パーセント、インドネシアで50パーセントである。

シンガポール、マレーシア、フィリンピン、ベトナム(最初の2カ国は中国のモデルと同じではないが)の数値の再調整はしていないが、東南アジアのトータルの予測規模は少なくとも27.5兆円であると言える。インドネシアの再調整したeコマース予測数値18.1兆円は東南アジア6ヵ国全てが合わさった初期の予測数値10兆円よりも大きいものである。

この再考された予測は真の東南アジアにおけるeコマースの可能性を指していると言える。またAlibabaがLazadaを1153億円で買収し、Tokopediaが285億円の資金調達をし、その後MatahariMall が115億円の資金調達をしたことを考慮すれば、ここでの予測数値が従来の予測数値の2倍になってもおかしくない。

10年前の中国のように、初期にeコマースに投資し、長期的視点で戦略的な展望をとってきたこの東南アジア地域は、28兆円どころではなく巨額である27.5兆円のeコマース金山を所有することとなった。

[訂正] 10年後の市場規模が28兆円だという試算を10兆円だと記載していたところを訂正いたしました。

By Sheji Ho

[原文へ]

翻訳:Mayu Tomozoe

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