YesBossはSMSを通して何でも欲しいものが手に入るインドネシアのMagic。

Tech in Asia JP
Tech in Asia JP
Published in
6 min readJun 30, 2015

携帯電話の普及率が約130%あるインドネシアでは、技術者がどれだけ携帯電話が国内で流行っているか熱く語るのが好きだ。だが、その内容に欠けているのはユーザーの大半がスマホではなく、まだ低機能電話を使用しているということだ。

データサブスクリプションは増加傾向にあるが、まだ多くの人に好まれているのはSMSだ。インドネシア人の3分の2以上は少なくとも週に一度、SMSを使用する。

SMSをうまく利用しているスタートアップがYesBossだ。同社はSMSでのリクエストを通して必要な物があれば何でも手伝うことができる仮想アシスタントを提供している。コンセプトとしてはそれが違法でなければ企業が何でも手に入れてくれる米国ベースのY CombinatorスタートアップであるMagicのようだ。(ちなみにY Combinatorもテック・イン・アジアに投資している。こちらの企業倫理ページから。)

YesBossはユーザーがピザハットの電話番号を探したり、ハードウェア店に行ったり、オンラインショッピングをする手間を省くのが目標だ。労働者階級のインドネシア人の多くがネットにアクセスできない中、これは興味深い価値ある提案である。その代わりに、ユーザーは自分の欲しいものをその電話番号にメールすれば、あっという間に商品が現れるというわけだ。

現時点ではサービス無料

YesBossは全く新しいスタートアップだ。今月初めにローンチしたばかりだが、ユーザーベースの管理を維持するために、このサービスは招待状に登録した人のみにしかアクセスできない。現時点では約840件ほどの招待状がある。

テック・イン・アジアはこの前YesBossを使ってみた。まず手始めに、天気はどうなるかを聞いて、次第に要求するレベルを上げていき食べ物やタクシーの注文をした。結果報告から先に言うと、それぞれの要求にはちゃんと答えてくれた。YesBossは今のところ無料のサービスであるが、ユーザーは通常の通話料の対象になる。もちろん、これは例えば電話でピザを注文するなら起こりうることだ。大いなる観点-欲しいものは何でも手に入るという自由から見ると-もしYesBossが実際にユーザーの生活を豊かにするのであれば、プリペイド式クレジットの値段は大したことはない。

YesBossの仮想アシスタントはユーザーの要求にだいたい4分から7分ぐらいで答えてくれる。しかし、より困難だったり複雑だったりすればするほど、返信が来るのに最大で30分はかかることもある。ふとした疑問の答えが欲しいのであれば、SiriやGoogle Now、またはWiFiを見つけて検索すればいいだけのこと。だが、私たちにとってこれを利用する理由はYesBossがどんな答えを持ってくるかという楽しみにもあるため、そのたびにサスペンス的な要素も含まれているのだ。

興味深いことに回答の多くが非常に人間的であったため、向こう側には単純作業ができる人間が一人はいるということはわかった。成功するプロダクトを構築するという点では、YesBossはコールセンターのようなところに委託するか一日中ずっとメール送信できる人工知能のロボット軍隊を作らなければならないかもしれない。

だけどやっぱりAI

先日、私たちは海外にいるインドネシア人のためのAirbnbになろうとしているドイツベースのスタートアップであるRumah Diasporaについて書いた。Irzan Raditya氏、Christian Franke氏、Wahyu Wrehasnaya氏、Reynir Fauzan氏を含む同社のチームメンバーの何人かはYesBossにも取り組んでいる。

拡張性のジレンマについてRaditya氏はYesBossはユーザーに答えを出すため、グーグル検索や他に電話をする顧客サービス担当者を採用しているという。だが、このままでは将来YesBossが数百または数千という質問を同時に受け付けた時にパンクしてしまうことも彼は認めている。

このため、今研究チームは自然や不完全な言語の処理ができる人工知能の自動応答システムを開発しているとRditya氏は述べた。(完璧な文章を含む携帯メールはほぼないため。)

誰もがライバルであれば、市場規模は滑りやすい

見込みある多様なプロダクトの市場規模をどうやってRaditya氏が算出しているのかは不明だが、彼はインドネシアで約2兆円の機会をうかがっているようだ。アプリはついこの間ローンチしたばかりだが、Raditya氏はすでにアフィリエイトプログラムを介してYesBossを収益化し、提携をする際には事業に請求することを考えている。YesBossは現在、多くの宅配や予約サービスとの提携に向けて話が進んでいると彼は述べた。同社はすでに地元の決済会社であるVeritransと組み、サービスを利用したユーザーの支払いを支援している。

インドネシアではYesBossにはほぼ無限の数の間接的競合他社がいる。このプロダクトは自分の用事を済ませるために存在する今までの伝統的な実際のアシスタントと競合することになるのは明らかだ。だがそれだけでなく、食品や他の物を自宅まで届けてくれる企業のGo-Jekやチケット予約サイトのTravelokaなどとも競い合うことになる。食料配達のeコマースサイトであるHappyFreshもまた良きライバルとなるだろう。だが逆に、これらの企業はYesBossのパートナーにもなり得る。そのため、最終的に地元企業がフェアプレーを見せるか見せないかにより、ジャカルタのこのスタートアップにはたくさんの味方ができるか敵ができるかになってしまう。

YesBossがサービスを開始してから一週間後、プロダクトには650人のアクティブユーザーがいたとRaditya氏は言っており、これはSMSを通してサービスを利用した人を指す。彼は年末までに10,000人に達したいと考えているそうだ。またYesBossはもうすぐスマホ利用者向けへのアプリもローンチする予定だという。

--

--

Tech in Asia JP
Tech in Asia JP

Tech in Asiaは、アジアに焦点を当てたテック情報やスタートアップのニュースを提供し月間1000万PVを誇るメディアを運営。毎年アジア最大級とされるカンファレンスをシンガポール・東京・ジャカルタの3都市にて開催、累計参加者は1万5000人以上。シンガポール本社を2011年に設立(日本支社は2014年)。