TEDxKyoto2015とスコッチ
TEDxKyoto2015が終わって1週間が経った。
まだ余韻が残ってる。感動と感謝を忘れないうちに書き残しておきたい。
僕はTEDxKyotoがスタートした2012年から参加している。
最初はパーティシパントとして、翌年からはボランティアとして。
TEDxではチケットを購入して来てくれる人のことを
オーディエンス(観客)ではなく、パーティシパント(協力者)と呼ぶ。
この表現が好きだ。
パーティシパントはTEDxの舞台に登壇するスピーカーやパフォーマーに共感したら、拍手(Applause)をしたり、笑(Laughter)ったり、スタンディングオベーションをしたりして会場の空気を作ることができる協力者なのだ。
5/24のTEDxKobe2015では僕も久しぶりにパーティシパントとして参加して、素晴らしいプレゼンに何度もスタンディングオベーションをした。
最高に気持ち良かった。
Kyotoもスタンディングオベーションを連発するようなものにしたいと思った。
その翌日だった。
Facebookを眺めていると、Sushi Maestroの井上修一さんが交通事故で亡くなったというニュースが流れてきた。
修一さんはTEDxKyoto2014でボランティア メンバーに加わり、スピーカーとしても登壇し、
寿司の可能性を体現してくれた。
僕は修一さんの笑顔が好きだった。
彼の握る寿司がもう食べられない。信じられなかった。
http://www.tedxkyoto.com/events/tedxkyoto-2014/beyond-sushi-shuichi-inoue
TEDxKyotoのコア メンバーと共に修一さんの葬儀に参列した。
突然の訃報にみんな驚きを隠せないようだった。
修一さんの素敵な笑顔の写真がたくさん飾られていた。
TEDxKyoto2015を絶対成功させようと思った。
TEDxKyotoはたくさんのチームで構成される。
登壇者を選抜し、プレゼンのコーチをするCuration&Coachingチーム。
舞台の設営や撮影をするShowチーム。
メディアやSNSの投稿など広報を担当するCommunicationチーム。
資金や資材を提供してくれるパートナーと関係づくりをするPartnershipsチーム。
受付やランチ・パーティの準備などShow以外を担当するOperationチームなど、
さらにそれぞれのチーム内にサブチームがいくつもあって相互に連携している。
カメラマンや建築家、フードコーディネーターなどプロもいるけど、みんな一銭もお金をもらっていないボランティアの集まりだ。
京都が好きで、TEDxKyotoが好きで、”Ideas worth spreading”に共感する人たちばかりだ。
僕はOperationチーム内のTicketingのリーダーになった。
受付業務をするところだ。
初めての経験で勝手が分からなかったけど、Peatixのヘルプを見ながら申し込みページを作成したり、問い合わせメールに回答したりしていた。
チームメンバーにも恵まれていた。
本番まで2ヶ月を切った9月半ばに僕はリーダーを交代してもらった。
直前までミーティングに参加しようとしてたけど、行けなかった。
チームメンバーで飲み友達でもあるトクさんにFacebookでリーダー交代のお願いをした。
うつ病になったからだ。
会社では2月前から異動して希望した職場で働いていた。
慣れない仕事・通勤だけでなくTEDxKyotoのミーティングやその他のイベントに参加など無茶をしすぎたせいだと思う。
へんに責任感のある性格のせいもあるかもしれない。
自分がやりたいこと、できること、やらなければいけないことのギャップに悩んでいた。
リーダー交代のお願いをしたときは、既に診断書を書いてもらって会社を休んでいた。
その頃、自分の中では治る見込みはなかった。
考えることができない。何をするにも億劫だった。
死にたいと何度も思った。
ホームに飛び込みたいと思った。
屋上から飛び降りたいと思った。
そんな不安から逃れるため、日中ほとんど寝ていた。
マンガばかり読んでいた。
テレビばかり見ていた。
不安を忘れられるからだ。
小説が読めるようになった。
ゲームができるようになった。
スプラトゥーンにはまった。
家族との会話が増えた。
外出してもそんなにしんどくない。
毎日家事ができる。
2km走った。
4km走った。
8km走った。
10km走った。
TEDxKyoto2015に参加しようと思った。
11/6だった。間に合った。
Operationチームのリーダーのアンガスに連絡した。
“You are always welcome. You are a member of TEDxKyoto!!!”
という返事をもらった。うれしかった。
11/8の本番当日。
予報どおり雨だった。4年目にして初めて雨の開催となった。不安だ。
7時半にボランティアメンバーが集まった。
アンガスと握手。トクさんと握手。お詫びを言った。
他のみんなも快く迎えてくれた。ほっとした。
さぁ準備開始だ!
今年は700名のパーティシパントが来場する。去年より100名以上多い。過去最高だ。相当な混雑が予想される。
受付スペースの準備を一気にすすめる。
Peatixのカラーシンク の使い方をボランティアで共有、
整列のコースづくり、
パンフレット、ネームタグ、ギフトバックを配置する。
テントの中は慌ただしい。
雨は降り続けている。
9時頃からパーティシパントがぞろぞろ来た。
整列を促す。
9:45に受付開始。
小雨がぱらつく中、混み合わないように10人ずつくらい受付に案内する。
順調。
最後尾も混み合ってない。
会場の森田ホールの入り口では傘用の袋を配っている。混乱はない。
受付テントと森田ホールの入り口は数メートルの距離。
ボランティアの女の子が数名、傘を持って立っている。
僕も急いで自分の傘を取りにいった。
パーティシパントが濡れないように傘をさしてあげるためだ。
次々に「ありがとう」をもらう。
自然とできた『おもてなし』。これこそTEDxKyotoだと思った。
無事に受付が終わった。
次はランチの準備だ。
まだ雨は降り続いている。ひどくなってる。
700人が濡れずに食べられるように食堂外のテーブルも屋根のあるところにセッティングし直す。
ランチは一般用が2種類(サンドイッチとパエリア)とベジタリアン用が1種類で好きなのを選べる。
ベジタリアン用にはお味噌汁がついている。
温かい状態で提供するためコンロもセットした。
11:30頃にベジタリアン用のランチが到着。
ここで問題が発生。
お味噌汁用の紙コップがなかったのだ。
ケータリング担当リーダーのオクダさんに指示を仰ぐ。
会場の外大食堂に問い合わせる。紙コップの在庫は少ししかないとのこと。
11:50。
あと10分でランチが始まる。
アンガスは「味噌汁はあきらめよう」と言う。
オクダさんは「お出ししたい」と言う。
僕はダッシュで近所のスーパーに買いに行った。
300個の紙コップを買って帰ってきた。
間に合った。よかった。
相変わらず雨がひどい。
森田ホールからランチ会場まで10メートルほどの距離を傘さし隊が大活躍した。
また「ありがとう」をいっぱいもらった。
ボランティアはみんなズブ濡れだったけどずっと笑顔だった。
パーティシパントのランチを配り終わって、
僕らも休憩室でランチを食べた。ベジタリアン用。
お味噌汁も野菜がたくさん入ってて美味しかった。
紙コップを買ってよかった。
その後、森田ホールに入ってセッション2を見ることができた。
今年はなんと、Showを見る時間が確保されているのだ!
毎年Operationチームは見る暇がないほど忙しかったのだけど。。。
その辺の苦労が分かっているタカヤさんがボランティアコーディネーターとして活躍してくれたおかげだ。
タカヤさんありがとう!
森田ホールに入ると、ステージが一望できた。
ステージ上方に青色LEDが輝いている。
客席のパーティシパントを撮影するときに見映えをよくするものだ。
TED本体でも採用している。
森田ホールに設置するのは難しいと聞いていた。
Showチームの藤田さんと志水さんの努力の賜物だ。
なんか嬉しかった。
セッション2は
ロボットクリエイターの吉川浩一さん
女優の吉松育美さん
アニメーションプロデューサーの塩田周三さん
持続可能システムプロデューサーの佐藤博之さん
が登壇した。
どれも素晴らしいプレゼンだった。
Curation&Coachingチームの成果でもある。
セッション2ではTED talksも上映された。
TEDxKyoto2014で登壇した建築家の手塚貴晴さんの「他に例を見ない最高の幼稚園」というトークだ。
https://www.ted.com/talks/takaharu_tezuka_the_best_kindergarten_you_ve_ever_seen
これまで何度もTED talksで見ていたけど、森田ホールでパーティシパントと一緒に見ると格別だった。
子供たちを管理しないこと、過保護にしないこと。建築の可能性を感じる。
セッション2で十分な休憩が取れたので、アフターパーティーの準備は軽快に進められた。
僕は主に日本酒コーナーを担当した。
毎年、素晴らしい日本酒を提供してくれる山本本家さんのブース設営をし、
Miss Sakeのお二人をアテンドした。
山本本家さんの「神聖たれ口」はクリームチーズがよく合うコッテリ系で僕の好きな日本酒だ。
Miss Sakeの小川さんと森田さんは美しかった!少し早めに到着されたのでセッション3を見てもらうことにした。
17:45。
全てのボランティアが森田ホールに集結した。
これまでのボランティアの活躍を紹介するのだ。11/7の準備から本番当日までの映像とともに。この瞬間は毎回疲れがふっとぶ!
僕の知らないところでみんな活躍してる。みんな笑顔が素敵だ。
そしてアフターパーティーが始まる。
アフターパーティーではスピーカーと直接話せてアイデアを深めることができる。禅僧の川上全龍さんを囲むパーティシパントたち。ビール片手にフランクに話せる雰囲気がいい。
ボランティアとパーティシパントもすぐに仲良くなる。真ん中に写っているのは毎年参加してくれるダレン。2012年、僕がパーティシパントで参加したときに隣の席に座ってて仲良くなった友達だ。
パートナーとも仲良くなる。今年のビールは京都醸造株式会社 (KYOTO BREWING CO.)が提供してくれた。ライトなタイプと苦味が強いタイプ。どちらも美味い!
サステナビリティチームのアイデアでリユースカップにつけたタグで抽選会があった。リーダーのカナさん(右)は毎年最後まで残ってゴミの分別をしてくれる。オペチームのお母さんみたいな存在だと勝手に思ってる。アンガス(左)はお父さんかな(笑)
パーティーも1時間経つとだいぶ落ち着いてくる。
僕は特にすることがないので各ブースを周って問題がないか見る。ビール片手に。
友達のパーティシパントが暇そうにしてたら色んな人を紹介してまわる。
人と人を繋ぐのもボランティアの大事な仕事だ。
日中の休憩時間にお茶とお菓子を提供してくれてたベッチ(右から2番目)が名古屋に帰るというので、ボランティア用に持ってきた『竹鶴17年』を飲んでもらった。
朝ドラの『マッサン』効果で今やなかなか手に入らないボトルでこの日のために大事にとっておいたものだ。
17年という熟成年数であればまろやかで飲みやすいものが多いが、竹鶴はどっしりとした重厚感もあり飲みごたえがある。絶妙なバランスのウイスキーだった。ベッチとお互いの感想を言い合い、別れを告げた。
その後も『竹鶴17年』とテイスティンググラスを片手にボランティアを慰労してまわった。みんなが竹鶴を絶賛してくれるのがうれしかった。
Masaさん(左)とichiさん(右)と共に竹鶴17年を飲みながら語る。ユカリさん撮影。
MasaさんはTEDxHimiのファウンダーとしても活躍している熱い熱い漢だ!
このときもTEDやTEDxについて熱いトークが繰り広げられた。
1/24のTEDxHimiにはパートナーとしてウイスキーを提供したいなぁ。
ジェイもやってきた!TEDxKyotoを体現している漢。彼のもとにみんなが自然と集まるのだ!!!
結局、最後は人なんだなぁ。
今年もTEDxKyotoに行けてよかった。行ってよかった!
Originally published at medium.com on November 17, 2015.