TEDxKyoto2015、12歳の最年少スピーカーあすかちゃんの担当を終えて

よねざわゆかり
TEDx Experience [日本語版]
7 min readNov 10, 2015
Image courtesy of TEDxKyoto

鳴り止まないスタンディングオベーション

TEDxKyoto2015が無事終わった。 スピーカーコーチ3年目にして、わたしは、はじめてのスタンディングオベーションを味わった。本番は、ステージ袖からスピーカーの様子を見守っていたので、熱く鳴り止まない拍手の音で、それが起きていることに気づいた。

・・・・泣いた。

わたしの担当スピーカーは、2015年8月空き缶を自動分別するごみ箱で特許を取得した12歳の神谷明日香ちゃん(以降あすかちゃん)だった。

ステージは大成功した。一般的に言うと。

1000人の心に灯をともすトーク

彼女のトークや凛とした存在感は、会場だけで観客700人、ボランティアスタッフ300人、多くの人の心に灯をともしたと思う。そして、ステージ後、あすかちゃんもわたしもご家族もスタッフも号泣した。感極まった。本当によく頑張ってくれた!ありがとう!!今日までの怒涛の日々を振り返り、頑張ってくれたあすかちゃんと、実現するために惜しみない協力くださったご家族やメンバーへの感謝と、彼女が味わった見えない重圧と、それらを全て感じ見ていたわたしは何と表現すればよいかわからない混濁した感情で涙が止まらなかった。

異例のスピードと対応

当初、わたしは別スピーカーコーチが担当だったのだが、急遽彼女担当へ変更となった。今回は異例尽くしだった。準備期間の短さ、初の小学生、しかもホットすぎるスピーカー、関西県外居住のため過去のように足しげく通うことはできない(結果3回通ったが)等など。

コーチング開始のインタビューは、実に開催からひと月を切った10月12日。しかも、その2日後、14日共同通信社発信で各メディア露出は更なる過熱加速した。 わたしも驚愕したが、本人やご家族はその比ではないだろう。12日のインタビューから3日後の15日第一稿スクリプトを完成させた。ご両親含めご本人のインタビューを元に編集構成した。・・・正直、わたしは複雑だった。これまではスクリプト原案はスピーカーが作成し、それに対し、コーチが質問をしながら内容を深めていくことを通じ、約ひと月かけて本番のスクリプトを作成するものだからだ。わたしが担当した過去2年は、インタビュー~発表まで約2ヶ月の尺で進めてきている。

この短期間で TEDxKyoto水準のステージ化まで持っていく必要があること、TEDxの性質上、本人が内容を覚える時間を確保する必要があること。スピードが優先された。特許を取得できるぐらい自分でつくる、工夫することが大好きな彼女に対し、他人がつくった内容をもとに発表させていいのだろうか?わたしが彼女の歳の頃を思い起こすとこんなのすごく嫌だよな等、諸々思うところはあったが、そこは苦虫を噛むように目をつぶることにした。

わたしたちが彼女へプレゼントできること

コーチを引き受けたからにはあすかちゃんが、 TEDxKyotoのステージを通して「新しいまなびや経験」を持ち帰ってもらえれば。いつかそれが役に立てばいいな。と思い、今回は進行した。

できるだけ、今の12歳の彼女の生の声や息遣い、流れる空気感を大切にし、校正段階も彼女の意見を第一に尊重し、特許のクレームも読み、第一稿を叩き台として、彼女やご両親に表現や説明などを確認しながらすすめられた。彼女の口から自然にでた生き生きとした言葉たちは経験した本人、本当にそう思っている者にしか出せないエネルギーと説得力に溢れ、どれだけわたしも心動かされ、今回の激動のプロジェクト中励まされたことか。

愛溢れるチームあすか

結果、ご家族のご協力、 TEDxKyotoの信頼を置くメンバーの多大なる尽力と、彼女が暮らす地域の他TEDxコミュニティメンバーであるゆりさん、小西さんのとても手厚いサポートのお蔭で当日を迎えることができた。それはもう「美しい」と言えるレベルの「チームあすか」ができあがり、あほみたいだけど、そこには純粋に「愛」しかなかった。これはピュアに誇れると思う。ステージを成功させる為、本人のスクリプトを覚えること、発表練習の頑張りは言うまでもなく、それを支える周りも本当に本当に本当に頑張ってくれたと思う。

そして、あすかちゃんはやり遂げた!

練習を積み重ね、リハーサルをし、リハ後も練習を重ね、彼女はスタンディングオベーションを起こすステージを表現したのだった。堂々とした、しかしとても可愛らしい彼女らしさが溢れるステージに多くの人が感動したとおもう。わたしもその一人だ。

本当に頑張った!!

ステージ後、彼女もわたしも号泣し、ふたり空っぽになってやや放心状態になった。そして次のお楽しみ予定のため、あすかちゃんは会場を早々に去った。ステージ後、すぐに数多くの方々の反応が耳に入ってきた。「心に残った、感動した、行動を変えようと決めた」これはコーチ冥利に尽きることだし、わざわざ黒子のわたしにことばをかけて下さったことに純粋に感激したし、これまでを慰労頂いているようで嬉しかった。しかし、わたしは心の底から「わーい!!やった~よかった~!!!」といつものようなじぶんで素直に喜べていないことに気づいた。妙に冷静なじぶんがいた。

本当にだいじなことは

なぜならば、放心状態で電池切れしてしまった彼女の様子を最後に、わたしはお別れしてしまったから。かわいくチャーミングな笑顔の彼女を知ってるわたしは複雑な気持ちでたまらなかった。(後日談で、お腹がすきエネルギー切れしてしまったとご両親から。食べた後は、元気いっぱいになったと教えて頂いた)翌日、元気回復した笑顔のあすかちゃんの写真をご両親が送って下さり、心底ほっとした。そしてわたしはやっと今回のコーチの役割を終えたと思った。

わたしは、今回多くのことを彼女を通し学ばせてもらったが、一番はステージの成功や多くの拍手やなによりも、スピーカーが、あすかちゃんがハッピーでないと、コーチのわたしはこんなにも辛く、達成感など味わえないものなのだ。と。

大人のわたしが味わったこの外側の反応と内側の心の反応のギャップは言語化するに難しく、今日まで丸二日かかった。あすかちゃん、どんな気持ちなんだろう?と思うと何とも言えない気持ちだった。(これもまた想像なので本人にしかその真意はわからない)

じぶんをたいせつにしてほしい

一番大切なのは彼女の気持ちなのだ。

周りの大人がうかれることはちょっと違う。そこについては今回、 TEDxKyoto側も細心の注意をはらって進めてきたのだが、本当にわたしは彼女の心に沿うことができていたのだろうか?当然ながらそこから先の影響をコントロールするなんてまず無理だし、そしてわたしは当然ながらご両親でも、そして彼女本人でもないのだ。

11月8日の本番から2日が経った。 あすかちゃんは、本番翌日朝に宿題を済ませ、元気に学校へ行った!とご両親からも報告があった。「分別器同様、切替できる子だから大丈夫!」と。ユニークで明るい太陽みたいなお父さんと冷静でシンプルな思考のかわいいお母さん、愛情溢れるご両親がそばにいるから大丈夫だね。結局、分別しないといけないのはわたしだったのかもしれない。

今のわたしが彼女に言えること、それは。

「どうかじぶんのきもちを大切に、これからの道を歩んでいってほしい」

ということだ。
そして、これはわたしがわたしに対しても言えること。

彼女の先はまだまだ長い。
「決して一過性の光にはさせたくない」というのが今回のわたしの思いだった。

恐らく今回がわたしにとり、最初で最後の子供向けスピーカーコーチングとなるだろう。学び深い、記憶にのこる28日間だった。あすかちゃんがわたしにもたらしてくれた学びはこれからのわたしの道に大きな実りを与えてくれると思う。地上に舞い降りた天使あすかちゃん。本当にありがとう。また会える日を楽しみに。これからも笑顔でいてね。

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