「○○するためのn個の方法」的な記事を読まずに済ますための4つの方法

無駄なWeb記事を読まなければ生産性と集中力が5倍アップする

森哲平
テッペイの森
Published in
9 min readFeb 27, 2017

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特にMediumに多いのだが、やたら「〜するためのnの方法」的な記事ばかりがフィードに流れてくる。これらの記事は一瞬目を引くものの、その実、大したことが書いてあるわけでもないし、「どこかで読んだ話だな、それ」という内容で、ぶっちゃけ、少しコツをつかめば誰でもかけそうな記事でしかなく、つまり「本当は別に読む必要がない」ものだったりして、つまり「時間の無駄」であることが多い。

では、こうした記事を読まずに済ます方法はないのか?

4つの方法が広く知られているのでご紹介する。

あなたの時間を節約し、より生産性を高め、多くのものを生み出すために、この記事は絶対に読もう。その分の時間を大きく節約できること請け合いだ。

①「n個の方法」的な記事のつくられ方を知る

まず、こうした記事はどのようにしてつくられるのかについて知ろう。ズバリ、「n個の方法」的な記事は、どこか別の記事や書籍からの引用、孫引き、ひ孫引き、玄孫引きだ

つまり、元ネタのコピー。よく言えばキュレーション。悪く言えば劣化コピーでしかない。

ウェブの記事もそうだが、そのウェブ記事が引用しているアメリカのビジネス書、自己啓発書からして、実はだいたいこの手法で書かれていることが多い。

たとえば、勝間和代の紹介で、日本でも広く知られることになったマルコムグラッドウェルの『急に売れ始めるにはワケがある』。読んだことがある人はご存知の通り、その主張の多くが、何か別の書籍からの引用だ。

この本では有名な割れ窓理論や、口コミネットワーク理論などを紹介しているが、別に自らその理論を実験や調査を通じて明らかにしたわけではなく、著者のちょっとした経験や聞きかじった話を付け加えて、他の書籍で知られている話をパッチワークでまとめているだけだ。

パッチワークや引用がそれ自体で悪いわけではない。①どのような視点で、②何をまとめるか。そこに価値があることは少なくない。

この本の原題は「ティッピング・ポイント」。つまり、ある地点を通過すると、傾いた塔が大きく倒れるように、「急に口コミが進行する」。この現象をテーマに、古今東西(つっても「西」だけなんだがな、たいていは)の書籍の、有用な知見を紹介しているわけだ。

著者が紹介している本をすべて読もうと思ったら膨大な時間がかかる。その時間を節約できることには意味があるし、1つのテーマのもとに、知りたいことをまとめて知ることができるのは、それ自体は時間を節約できるし、理解も深まるから、悪いことばかりではない。

でも、引用元が間違ってたら文字どおり「元も子もない」ことはお忘れなく。そして、引用元が間違っているかどうかを検証するためには、引用元を読むしかない。「パッチワーク本」「キュレーション本」のメリットは、「一次情報検証からの距離」とトレードオフであることをお忘れなく。

日本でもベストセラーになった、ハース&ハースの著書。彼らも自分たちの本は「何冊もの本を読んでそれらをまとめる」ことで書いていると公言している。

②合理性や効率性の過度の追求は不合理・非効率を生むことを知る

「パッチワーク本」「キュレーション本」のエキス、エッセンスのみをさらにまとめると、「n個の方法」的な記事になる。その場合、「一次情報検証からの距離」がますます遠くなる。キュレーションはある程度は便利だが、あまりにも離れるくらいなら、素人がそこそこのクオリティで書いた「キュレーション本のキュレーション記事」を読むくらいなら、質の高いキュレーション本を一冊きちんと読むくらいにしといたほうが、バランスもよいし、生産性も高いんじゃないだろうか。

これらの話の元ネタ。エリック・シュローサー。『ファーストフードが世界を食いつくす』。

合理性や効率性を追い求めすぎると、それらを追求すること自体が目的となってしまい、目的と手段の転倒を起こす。それだけではなく、過度な合理性や効率性は非合理性や非効率性を生み出すこともお忘れなく。

有名なのはマクドナルドだ。マクドナルドでは、客が効率的に回転するように、椅子をある程度硬くして座り心地を悪くしたり、店内温度を調整したりしているという。これが本当なら、「客においしいものを安く提供する」という目的を追求した結果、客に座り心地の悪さや居心地の悪さを提供するという非合理が生じていることになる。大量のポテトやナゲットを提供するために、生産者に押し付けている非合理については言わずもがなだ。

「時間の節約」「効率化」という考えがいかに我々を貧しくするかを知るためには、何も社会学者やジャーナリストの難しい本を読む必要はない。ミヒャエル・エンデの『モモ』。この一冊で十分だ。

不思議な少女モモが「じかんどろぼう」と戦い、人々から盗まれた時間を取り戻すという、子ども向けのメルヘンだ。

「じかんどろぼう」がどうやって、我々から時間を盗むかというと、これがまさに「効率化」によってなのだ。

「あなたはこれだけの時間を無駄にしている」「こうすれば時間が節約できる」「貯蓄できる」。このセールストークだけで、いとも簡単に人は「自分の豊かな時間」を「じかんどろぼう」に、喜んで差し出してしまう。時間の節約に励めば励むほど、人は幸せから遠ざかる。このことをこれほど説得的に論じた本を筆者は知らない。

③質の高い少数の「元ネタ本」=古典を読む

だいたい、ビジネス書や自己啓発書は、最新の「トレンドワード」のもとにまとめられているが、その内容は少数の古典に書いてあることとそんなに変わりがないことがほとんどだ。

ビジネス書、自己啓発書の古典として知られる、カーネギーの『人を動かす』『道を開く』あたりを読んでみればいい。書いてあることは、ほとんど昨今のビジネス書の内容、「n個の方法」記事の内容と変わりがないことが簡単に理解できるはずだ。内容が同じなだけでなく、古典、つまり、多くの人からすでに何年、何十年も支持されてきたベストセラーなだけあって、その紹介も上手く、大変「腑に落ちる」ことばかりだ。

わざわざ評価の定まらない、「劣化コピー本」「劣化記事」を大量に手にして読む。時間の無駄ではないだろうか。

筆者はビジネス書、自己啓発書をそれなりに読んではいる。が、その中でベンジャミンフランクリンへの言及は数え切れないくらいなされている。

だったら、ベンジャミン・フランクリン自伝を直接読んだほうが話は早くないだろうか。

新しい記事をたくさん読むより、優良な古典を繰り返し読む。そのほうが得られるものは大きいだろうし、何より無駄な時間の節約になる。その時間でキムチでも漬けたり、娘を遊園地に連れていってあげたほうが、よっぽど豊かな人生を送れることは保証する。

④余計な記事はブロックする

それでもフィードには毎日「n個の方法」記事が無数に流れてくると言うかもしれない。だったら、そんな記事ばかり流してくるユーザーを、かたっぱしからブロックしてはどうだろう。

筆者は、リアルな付き合いがベースのFacebookですら「自分には関係がないな」と思ったら、情け容赦なく「非表示」ボタンを押している。

仲の良い友達でも、サクっとブロック。それで関係が険悪になったことはまだ一度もない。それどころか本人に向かって「非表示にしてる」と告げたことすら何度もある。何か起こったことは、これまた今のところ、一度もない。それで仲が悪くなるなら、その程度の人間関係。今の内に切れたほうがせいせいするんじゃないだろうか。

本当に大事なものしかフォローしない、ちょっとでも「魂が濁ったな」と思ったら即ブロック、アンフォロー、非表示。SNSに限っても、これだけで読者のQOLがアップすることは筆者が保証する。

いかがだっただろうか。効率化や合理化はほどほどに。でないと、効率化、合理化に多くの時間を使うことになる。その時間を節約したほうが人生は間違いなく豊かになるのだ。

どのアプリを使うか。メモ帳を使うか。タスク管理をどうするか。SNSはどう使う? それを考えたり、論じたりすることが楽しいうちはよいが、ちょっと疲れたなと思ったら、そんな探究は適当なところでやめにして、自転車にでも乗って出かけよう。午後から自転車に乗って出かけてくる。

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森哲平
テッペイの森

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。