「地方創生」コンサルタントの後始末

森哲平
テッペイの森
Published in
5 min readJan 21, 2017

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地方創生をテーマにした宝島ムックが発売になりました。『東京五輪後に地方は崩壊する』。いつもながらの宝島クオリティ。内容をパラパラ見て、いろいろ感じるところあります。

読んでて思ったんですが、地方創生コンサルと、自治体って、ちゃんと秘密保持契約結んでんでしょうかね……。普通は結ぶのですが、結んでなかったらどーすんだろ、って思って。

たとえば町や村のコンサルで入ってもらったが、地元の人や移住者から嫌われてる、トラブル起こす。成果も数字も残してない、アイデアは既に出涸らしってコンサルなんて無数にいると思うのですが(風の噂で結構話を聞く)、彼らを無理にバッサリ切ると「後がこわい」じゃないですか。

ただでさえ地方創生コンサルって、「横展開」するわけでしょう? 自分が手がけた、四国は徳島、◯◯での成功事例紹介セミナー!とか、北海道◯◯に学ぶ〜ってので、遊説して、お金稼ぐとともに、次の自治体に営業かけるわけで。あ、それ自体が悪いってんじゃないです。

ただ、秘密保持契約結んでたら、本当は業務上知り得た情報を第三者に許可なく伝えるのは契約違反なんだけど、100歩譲って成功してる、上手くいってる話なら許せるとしても、「解雇」した途端、同じノリで「なぜ◯◯町は失敗したか?」って、講演仕事、原稿仕事引き受けかねない。

仮にそんなことしなくても、酒の席のインフォーマルな情報交換までは現実的に縛るのが難しい。結局、外に情報漏れるのが怖くて「抱え込んでる」自治体とか、少なくないのかもなーって思ったり。年々少しずつギャラ落としてって、勝手に向うから笑顔で出ていかせるようにするとか、他の自治体にババ抜きのババのように引き抜かせるしか方法ないんだろうな。

切られたくないコンサル側からすれば、とにかく地元の人、移住者と仲良くするしかない。カネで揉めたり、手柄を吹聴したりせず、good natured personって証明を地元でし続けるしかないんだけど、中小企業の社長と同じ。地元(社内)にいても居場所がないから、地元のムラ話をネタに、ムラの外、都市においしい酒を飲みに行ってしまう。それは地元からすれば「裏切り」「利用」にしか見えないが、ご本人は「私が村を宣伝してやってるんだ!」。本来は地元と自分との間に同じ利害関係を設定しなきゃいけないコンサルタントが、ますます利害が相反していくのよね。

田舎の情報は濃密、かつ、インフォーマルだから。ちょっと中にいないと、どんどん情報量に格差が出て、チューニングが難しくなっていく。で、ますます「なぜ理解されないんだ!」とイライラ。外に出てくと、自分の「苦労」がわかる「友達」ばかりだから、いやー、楽しい!……って、そこでのネタ交換してるとこまで、このご時世、ご丁寧に、Twitter、Facebookが見せてくれるのだよな......。

こんなややこしいもんの後始末。どうすんだろう。

このムック、元神山町地域おこし協力隊のコヤさんの記事が掲載されてます。元はmediumに投稿した以下のストーリーに加筆修正したもの。

コヤさんの記事、地元の方からは、あるいは「オレはちゃうぞ!」って地域おこし協力隊の方からすれば「言いたいこと」あるとは思いますが、mediumの投稿を見るかぎり、非常にモデレートで、「ああ、そういう体験も結構あるんだろうな」って感じ。......なのだが、これが宝島ムックに載った途端、文章のトーンは加筆修正してあるので、さらに落としてあるはずなのに、逆に結構辛辣に感じる。他の記事と一緒に読むだけで、印象が変わる。情報って「まとめ方」次第なんだなあと思った次第。

あと、逆に「地方創生」に対してフェアじゃないなって記述もチラホラ見える。

こちら、美波町のサテライトオフィスについて。記事本文では具体的に触れていない。それにもかかわらず、写真のキャプションでは「まるで横並びしたかのように流行を模倣した地域振興策」とだけ入れられてて、フェアじゃないなと。

取材を受けいれて、写真撮影も許可したのに、「こんな形」で印象操作されるってなあ......。批判があるなら批判したらいいし、「なぜこのサテライトオフィスは単なる流行模倣なのか」って指摘したらいいけど、これだとほんと単なる悪口。フェアじゃない。

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森哲平
テッペイの森

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。