ゴンザガの目指す先【和訳】

じゃり
The Chewing Gum
Published in
13 min readMar 19, 2018

※旧サンズブログにて2017.4.8に投降した記事を再掲したものです。

こんにちは、じゃりです。私事ですが、先日アメリカまで現地観戦しに行ってました。もちろんフェニックスも行きましたよ。その観戦記はまた時間があればブログに残したいと思っています。

今回それはちょっと置いておいて。今年のNCAAファイナルフォーがちょうど僕が行ってる時期のフェニックスで開催されたんですね。僕もセミファイナルの2試合を見に行きました。日本人の八村君が在籍しているからゴンザガが勝てばいいなーくらいに思っていたんですが、セミファイナルの前日にフェニックスダウンタウンでゴンザガのスタメンのナイジェルウィリアムス-ゴス君(以下NWG)らと偶然遭遇し、一緒に写真をとってもらいました。非常に気さくに応じてくれて、感化されやすい僕はそれによってゴンザガを応援することを決意。ゴンザガはセミファイナルを勝ち上がりましたが、残念ながら決勝でUNCに敗戦。決勝で最後シュートを決められなかったNWGがかがみこんでいたのを見て、僕も涙しそうになってしましました。

そんなNWGがマーチマッドネスが始まる直前にThe Players’ Tribuneに寄稿した記事があったので訳してみました。ゴンザガ大バスケ部がどんなチームか垣間見える記事で、ヘッドコーチのマイクフューについての話もあり、面白いなと思いました。

以下拙訳

勝拙訳

うちのチームのグループチャットは、かなりバカだ。

つまりめちゃくちゃ面白いってこと、特に内輪ネタは最高だ。まぁ見ればわかると思うけど。バスケのこともたまに少し話すけど、うちのグループテキストが素晴らしいのはそこでほとんどバスケの話をしない点だと思う。だから基本的には大量のばかげたジョークで埋まってて、時々イケてる(自分でいうのもあれだけど)ミームが載せられて、またジョークが流れてくる。

※注:ミーム(=インターネットミーム)とはいわゆる面白コラ画像や面白コピペなど、ネットで拡散されているもののこと。

誰かがテキストを送ったり、ジョークを送っているのを見れば、僕らが凄く仲良くやってるってことがわかると思う。それは真実だ。でも僕らがいつもやってるそのグループチャットを何か月分も遡ってみていくと、別の側面が見てとれるだろう。どのコメントもシーズンのそれぞれの地点で、僕らがどこいて、どう感じていたかを思い出させてくれる。

だからそれを遡れば、ばかげたグループチャットが今シーズンの僕らのストーリーを教えてくれる。

11月から2月にかけてのシーズン最初の29試合の間、グループチャットはジョークとミームばかりで特に深い意味もないものだった。僕らはいいプレーをできていたし、負けていなかったから、コート上でもコート外でも楽しく過していた。

でも2月25日、僕らの今年最後のカンファレンス内での試合の日、にスクロールすると、何かが違うなって思うだろう。まるでラジオの電波が途切れたみたいに静まり返ってるんだ。その試合から数日間は誰も何も言わなかった。

なぜなら、その夜僕らは今シーズン初の負けを、そしてレギュラーシーズン無敗の望みが絶たれる負けを喫していたから。

僕は2015年の春にワシントン大から転校してゴンザガ大にきた。1年目の去年はNCAAの規則に従ってレッドシャツ(試合登録できない練習生)だったから、今シーズンがブルドッグス(ゴンザガ大の愛称)としての初のシーズンになる。ここに来るにあたって僕は2つの目標を自分自身に課した。1つはゴンザガが未だ達成したことのないファイナルフォーに進出すること。もう1つは学生としてもっと社交的になること。

カルチャーショックというのが正しい表現なのかわからないけど、ゴンザガに転校してきたことは僕にとって大きな変化だった。チームメイト以外は知らない人ばかりだった。ワシントン大には学生が3万人いたけど、ここには5千人しかいない。ワシントン大ではほかの学生とは切り離された生活を送っていた。でもここゴンザガでは物事が全然違う。

ゴンザガでの最初の日の最初の授業は心理学の授業だったんだけど、25人しかいなかった。以前は大きな講義ホールで400人で授業を受けていたのに。

授業が始まる前、僕の前の列にいた3人の学生がうちのバスケ部について話をしているのが聞こえてきたから、彼らの会話を聴こうと頭を傾けた。

たぶん僕は多少わざとらしすぎたんだろう、彼らみんながこっちを向いて僕を見てきた。

「バスケをやるの?」 一人が聞いてきた。

僕は転校生なんだと伝えて、ああ、プレーするよ、って答えた。

授業がもうすぐ始まろうとしていた。彼らが僕をバスケ部の新入りとして評価しようとしてるのが見てわかった。

「ここではバスケ部の存在ってやっぱデカいの?」と尋ねて、会話をもうちょっと続けようとした。

「そう、彼らはここではめちゃくちゃデカい存在なんだ。」そしてもう一人は「じゃあ俺らのチームで一緒に戦うんだね?」と。

そこで教授が入ってきて教室は静かになった。

「ありがとう。でも、いや、今年はたぶんプレーしないと思う。」と小さな声で言った。

その日から彼らとは授業のノートや、宿題のことなんかについて話をするようになったけど、バスケ部の話は持ち上がらなかった。そんな友達ができてうれしかった。

そして数週間後、“Kraziness in the Kennel”が開かれた。

(注:Kennel=犬小屋)

毎年10月のシーズン直前に、ゴンザガはオープンスクリメージをか開催していて、それを“Kraziness in the Kennel”って呼んでいる。公正に評価できる立場じゃないけど、それはこれまでで最も熱狂的なもののひとつだった。ほぼ全員の学生がKennel(僕らのジムの愛称ね)に押しかけて、2時間くらいずっと踊ったり飛び跳ねたりしていた。スクリメージの前に各選手が紹介されるんだけど、音楽がなって照明が落ちる。スモークマシンもある。本当にすごい。

僕の名前が呼ばれると、当時僕はキャンパスにほとんど誰も知り合いはいなかったんだけど、観衆は熱狂してくれた。まるで僕のことを知ってるみたいに。まだゴンザガのユニフォームを着て1分もプレーしていないのに。もちろん彼らは全員に対して熱狂してるんだけど、それは僕がそれまで受けてきたスタンディングオベーションのなかで最も素晴らしいものだった。今でもそれは変わらない。

数日後に、僕が心理学の教室に入った時の仲間の顔を忘れることはないだろう。

「おい!君がうちのバスケ部に来たなんて信じられないぜ!」「コーチ・フューは俺たちを殺す気かよ!」って。

マークフューについてはみんな知ってるだろう。ゴンザガのコーチ歴18年、18回連続NCAAトーナメント出場、15回のカンファレンス優勝。しかしこれらの数字以上に、コーチフューは5千人規模のイースタンワシントンにあるイエズス系の大学を全国的でも有数のバスケットボールが人気の土地に押し上げたことで有名だ。彼は僕がここへ来た理由の一つでもある。

僕はほとんどの人が見ることのない彼の側面を見ている。なので、心理学専攻として、彼に対する僕の印象を伝えようと思う。

コーチフューの性格は様々な違った側面をもっている。彼は家族持ちで、超絶負けず嫌いだ。燃えるようなスピーチをし、規律にうるさい。しかし同時に鋭いユーモアのセンスとを持ち、皮肉との境を分かっていて、それによって僕はまず彼に気を許すことになった。

12月、ステイプルズセンターでのアリゾナ大との大一番に向けて僕らはロサンゼルスにいた。コーチフューはロッカールームですでに闘志むき出しでいた。試合前のスピーチで罵り言葉を飛ばしまくっていて、フリースタイルでもやってるのかと思ったよ。

「俺たちはここに遊びきたんじゃねえ“$%&#$!!」

そんな感じでまくし立て、普段よりずっと活気にあふれていた。

彼がしゃべり終えたとき、僕らは黙って座っていた。僕らのランクは8位で、アリゾナ大ワイルドキャッツは16位だったけど、ゴンザガは2011年以降彼らを倒していなかった。

そしてコーチは言った。「あぁ、俺はさっき教会から来たばっかりなんだ。」「俺のスピーチを価値あるものにしてくれ。」って。

彼が首を横に振りながらそんなことを言ってたけど、僕らはそれを超面白いと思った。そしてチームの士気は上がっていた。

その日は69–62で勝った。コーチが試合前に作り上げたムードが試合に影響したかどうかは分からないけど、ま、悪くはないよね。

その時、ゴンザガに来るという選択は僕がこれまで下してきた決断の中でベストのものだったと確信した。
実際コーチフューは、みんなにそう思わせていると思う。彼の8歳から17歳の4人の子供はよく練習に顔を出している。チーム全体が彼らを知っているというのは、本当にいいことだと思う。僕にとっては今年が初めてだけど、カルナウスキー、僕らがBig Shemと呼ぶ髭をたくわえた216cmのセンター、なんかはコーチの子供たちと長い付き合いがある。彼らが凄く仲が良いのが分かると思う。

でも僕らの練習において一番重要な訪問者は雌のドイツシェパード犬、ステラだろう。

ステラはコーチの飼い犬だ。

ステラは最高に可愛くて、言うまでもなくとても従順だ。この大人のドイツシェパードはK-9に似てる。練習でステラはサイドラインに静かに座って僕らを見ている、まるで僕らのプレーを評価しているんじゃないかと思ってしまう。コーチが怒鳴ると、よく怒鳴るんだけど、ステラの耳が飼い主の声に反応してピンと立って、僕はそんな時いつもすこし緊張してしまう。心の中では、ステラが友好的な犬だって知っているけど、その時は、ちょっと考えてしまう。もしコーチが彼の犬を僕らに向けてけしかけたらどうしよう?

つまり僕らの練習では、コーチの4人の子供がスタンドにいて、「もしかしたら獰猛な、でもたぶん友好的」なドイツシェパードのステラがサイドラインから見ている、って感じ。

最近の練習で僕がボックスアウトをミスった時、コーチがスクリメージを止めて僕を呼び出した。一通り怒鳴った後、サイドラインの方にとても気楽に歩いて行って、ステラの前で立ち止まった。

彼はお座りの仕草をした。ステラは座る。もう一度仕草をすると、ステラはお腹を下にして寝転がる。

そして彼が笛を鳴らし、僕らはスクリメージを再開した。

今年の僕らのチームは、コーチがここゴンザガでカルチャーを築いてきたチームは、特別だ。彼は僕らに感じてほしいんだと思う。僕らみんな家族の一員なんだ、って。

僕らは今年新しいインバウンズプレーを考え付いた。コーチがそれのコールを思案していた時、誰かが明確な答えを叫んだ。

そして、僕らは今、そのセットプレーを「ステラ」ってコールしている。

転校生として、ゴンザガのバスケ部について外部の立場からも見てきた。だからその評判も知っている。

皆が言うのはこんな感じだ。

ゴンザガはいい。でも…

そうだろ?皆聞いたことがあると思う。

ゴンザガはいい。でも楽なカンファレンスだから…

ゴンザガはいい。でもスケジュールがそこまでキツくないし…

ゴンザガはいい。でもファイナルフォーはむりだろうな…

最初の2つは気にならない。実際どうかは僕らが知ってるから。

でも最後の1つは、、、心に突き刺さる。なぜなら、それが事実だから。ゴンザガがファイナルフォーに進出したことがないのは事実だから。

僕らはそれの批判に対する返しをまだ持っていない。

さっきも言ったように、2月25日にブリガムヤング大に負けた後グループチャットは静まり返っていた。

1日か、2日かして僕がある動画を載せた。

その動画は試合残り40秒のところから始まる。ゴンザガは3点リードでボールを保持している。ジャンパーをミスする。リバウンド争いでファールをし、相手のUCLAはフリースローラインに立つ。2本決まって残り20秒、1点差。スティール、レイアップ成功。UCLAが1点リード。残り9秒、ゴンザガはまたターンオーバー。それから先は知ってるよね。アダムモリソンはジャージで顔を覆い、涙を流した。UCLAは喜びを爆発させている。

※注:2006年、ゴンザガは当時カレッジバスケ界のスター、アダムモリソンを擁していたがNCAAトーナメントのスウィート16でUCLAに逆転負けし、悲願のファイナルフォー進出を逃していた。

もしゴンザガが勝っていれば、カレッジバスケにおける大きな偉業を達成していただろう。でもビデオを見たとき、そこに見られるのは悲嘆そのものだ。ゴンザガは勝利を求めていた。アダムモリソンは勝利を求めていた。でも後に残ったのは彼とそのチームがどう負かされたか、ということだけだ。

そして僕はグループテキストにもう一つメッセージを送った。「今年は違うぞ」と。

数週間前、練習に誰かが訪ねてきた。背が高くてジーンズにパーカーという恰好の男だった。

ジムの向こう側でコーチフューが彼と話をしていた。僕は近くに行こうと思ったけど、彼はすぐに行ってしまった。

でも僕には、彼が誰だかちゃんとわかる。

その日、アダムモリソンの近くにいっていたら、僕は彼に「ありがとうございます」って言ったと思う。他の人がそう言うかは知らない。でも僕は彼に、そしてザグスのユニフォームを着て戦ったすべての選手にこう言いたい。

「僕らはあなたたちに借りがある」

イースタンワシントンンの小さなジムでの、長年受け継がれてきた彼らの活動に。

偉大な勝利に、そして悲しい敗北にも。

小さな学校から、大きな脅威へとなったこの学校に。

道を切り拓いてきたすべての元ザグスに、僕らは借りがある。

さぁ、彼らのやってきたことを僕らで仕上げよう。

Nigel Williams-Goss

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