数字で考えるハンナリーズ
〜「ペース」から紐解くチームの方針〜
今週末はハンナリーズの試合がありません、悲しきことかな!
というわけで今回はハンナリーズのスタッツを少し変わった?視点から考察してみました。
なるべく簡単に書いたつもりですので、数字は苦手…という方も試しに読んでみてください!
試合が無くて物足りない週末を過ごすハンナリーズファンの皆様にとって、多少のハンナリーズ成分の足しになれば幸いです。(他チームのファンの方にも是非読んでいただきたく思います!)
※数字は http://stats.basketballnavi.com から引用しています。
ペースってなんだ?
ペースという数値があります。
これはややこしい計算式で求められているのですが、簡単に言えば「チームの攻撃回数を示す指標」といえます。
実はここには大事な要素が隠されているんですが、それについては後述。
チームの攻撃回数はオフェンスリバウンドを取ったりすれば増えるってのは想像がつきますね。
ですが、ここでは攻撃回数に影響を与えるもっと根本的な要素を考えます。それは、
1回の攻撃にかける時間
です。
シンプルに考えるために
- お互いターンオーバーをせず絶対シュートを打つ、シュートを打ったら相手ボールになる(オフェンスリバウンドは考えない)
という状況を仮定します。
そんな時、両チームともオフェンスに15秒ずつかけた場合、1分間でそれぞれ2回ずつ、1試合=40分では80回オフェンス機会があります。
ですが、両チームともオフェンスに10秒ずつかけた場合だと、1分間それぞれ3回ずつ、1試合では120回オフェンス機会があります。
つまり、
1回のオフェンスにかける時間が長くなれば、1試合トータルでのオフェンス機会は少なくなります。
これが見落とされがちなポイントです。
ペースは大きいほうがいいのか?
攻撃回数は多いほうがいいのか、少ないほうがいいのか、どう思いますか?
そりゃたくさん攻撃したほうがいいに決まってる、と思うかもしれませんが、これが一概にそうは言えないんですね。
では、先ほどと同じ
- お互いターンオーバーをせず絶対シュートを打つ、シュートを打ったら相手ボールになる(オフェンスリバウンドは考えない)
という状況を考えます。さらにフリースローもスリーもなし、全部2点シュート、と仮定します。
自分たちのシュートは40%で決まる、相手のシュートは50%で決まるとしましょう。
攻撃回数がそれぞれ100回ずつだったとしたら、
自分たち:100×0.4×2=80得点
相手100×0.5×2=100得点
で20点差で負けてしまいます。
ですが攻撃回数がそれぞれ70回ずつになれば
自分たち:70×0.4×2=56得点
相手:70×0.5×2=70得点
となり負けてはいますが、点差は14点差に縮まるんですね。つまり、
シュート率=FG%で負けてるなら攻撃回数は少ないほうがいい
んです。
その根本の上で、さらに自分たちは攻撃回数に占めるターンオーバーの回数を減らしてシュート回数を増やす、相手にはターンオーバーをさせてシュート回数を減らします。
その上に細かい戦術があるわけです。
例えば、「オフェンスではこういう動きでフリーを作ろう」「ディフェンスはこういう守りで相手のシュートにプレッシャーをかけよう」「相手は○○が得意だから、それはさせないようにしよう」といったように、自分たちは良いシュート打って成功率をなるべく上げ、相手には厳しいシュート打たせて成功率を下げる、というようにです。
そうやってFG%の差によって生まれる点差をひっくり返すんですが、点差が小さいほどひっくり返しやすくなりますよね。
そのためにFG%で負けているなら攻撃回数は少ないほうがいいんです。
※もちろんコーチの好みやチームのスタイルなどもあります、これは一般論の話です。
ハンナリーズのペースはどうなの?
さて、ハンナリーズの戦い方はどうなのでしょうか。
ハンナリーズFG%は41.3%でB1の18チーム中12位、どちらかというと低い方です。
これはインサイドで圧倒できるビッグマンがいない、アウトサイドシュートが多くなる、高さがないので相手ビッグマンのブロックを気にしながらシュートを打たなければならない、などといった要因が挙げられます。
では気になるペースはどうなっているかというと、
69.1で14位、、、低い!
「うちはディフェンスのチーム、相手を60点台に抑えたい」という浜口HCの言葉から考えるに、これは意図的と言えるでしょう。
シーズン序盤はコッツァーが速攻で頑張って走って速く攻める場面がよくありましたが、最近では減っているのはここを考えてのことかもしれません。
また村上は速攻で輝くタイプの選手ですが、彼も確実にレイアップまで持っていけるようなシーンじゃない限り、速攻で強引にシュートまで行かず止まってハーフコートオフェンスに移行しますよね、あれもコーチの指示かもしれません。
試合中「もっと村上を出せよー!」と感じることがあると思いますが、村上を長時間出しすぎるとペースが上がってしまう、ということがあります。(ただし彼は持ち前の激しいディフェンスで相手の攻撃機会を奪い、また試合の流れを変えることに貢献しているという面もあります。)
ただ速攻で岡田がフリーの場合は躊躇わず早打ちすることも多いです。
あれはチーム1のシューターである岡田のフリーのスリー成功率の高さを買ってのことでしょう、現に彼以外が速攻で早打ちするシーンはあまり見られません。
実際浜口HCがどこまで指示しているかは、本人に聞いてみないと分からないので推論の域に留まりますけどね。
ああ浜口HCに話聞きたいなあ〜!!
さらにハンナリーズを解剖
最初にペースという数値には大事な要素が隠されていると言いましたが、それは
ペースはオフェンスリバウンドを除外して計算されている
ということです。
要はオフェンスリバウンドを2回連続で取れば合計3回続けてオフェンスができますが、ペースの計算ではそれは「1回の攻撃機会」とされます。
つまり厳密に言えば「ペース≠攻撃回数」なんです、正確には「ペース=攻守の切り替えの回数」といった方がより正確なんです。
逆に言えば
「自分たちの攻撃回数=ペース+オフェンスリバウンド数」
といえます。
なので当然ですがオフェンスリバウンドを取れば攻撃回数が増えるんですね。
ハンナリーズのオフェンスリバウンドは、
10.8本で3位、、、、、えっマジ?
そうなんですよ意外や意外、高さのないハンナリーズですがオフェンスリバウンド力はリーグトップクラスなんです。
これはコッツァーがなんとか弾いてくれてたり、あとは小島や村上や川嶋たちガード陣が果敢にオフェンスリバウンドに飛び込んでいるのが大きい気がします。(たまに村上が見せるあのエグいオフェンスリバウンドなんなの…)
てなわけでハンナリーズはペースを低くし、オフェンスリバウンドをとることで、
相手の攻撃回数を減らし、自分たちの攻撃回数を増やすことに一定の成功を見せています。
ただし相手にオフェンスリバウンドを取られてしまうと、相手の攻撃回数が増えてしまいます。
この辺はハンナリーズの課題でしたが、ここ数試合は以前のようにオフェンスリバウンドで圧倒されなくなってきています。
ではそうやって得た攻撃機会をハンナリーズはどう使っているのでしょうか。
これは数字だけでは詳しく分析できませんが、分かる範囲で考えてみましょう。
まず目を引くのがターンオーバーの数で、
12.9回で15位、、、、あっちゃ〜…
せっかくペースを低く保ちながらもオフェンスリバウンドで自分たちの攻撃回数を増やしていたハンナリーズですが、ターンオーバーの数が多く、シュートまでいけてないことが多いんですね。
しかもターンオーバーをしちゃうと、そこから相手に速攻を出される危険が高くなってしまいます。
相手が速攻を出すと、簡単に失点してしまうだけでなく「オフェンスにかける時間も短くなってしまうので、ペースが上がる」という悪いことづくめなんです。
うーんもったいない…
では打っているシュートの内訳はどうでしょうか。
ハンナリーズはシュートを平均63.1本打っていますが、そのうち約3割の18.6本がスリーです。
スリーの占める割合が3割というのは、リーグランキングは出してないんですが、かなり少ないほうにあたります。
前回の記事 https://medium.com/hannaryz-logs/11-6-%E4%BA%AC%E9%83%BD77-69%E5%90%8D%E5%8F%A4%E5%B1%8B-ot-aaeb091f394a?source=linkShare-c2f1634d87b9-1478799381 でも書きましたが、ハンナリーズのスタイル的にスリーはもうちょっと打ちたいんですよね。
スリーをもっと打ってもっと決めるんだ!頼んだぞ内海!
てことですね笑。
これ以外で大事なのがフリースローの本数と確率。
フリースローはバスケで一番簡単に点が取れる手段です、身長差とかフィジカルの強さは関係ありません。
ハンナリーズは、
試投数16.0本で7位、成功率73.2%で8位。
うん、普通ですね。
できればここももうちょっと多く打って確率もあげたいですね。
岡田はリーグ全選手中4位の91.3%と素晴らしい確率で決めてくれるので他の選手も続いて欲しいですね、とくに小島はもうちょっと確率あげて欲しいところ。
最後にディフェンスレーティングという数字をみましょう。
これは「100回ディフェンスしたら何失点するか」という指標です、つまりチームのディフェンス力を数値化したものといってもいいでしょう。ハンナリーズは、
107.9で14位、、、、うーん残念、、
良いディフェンスをすること、つまり簡単にフリーを作らせないようにしたり、さっきも言ったようにターンオーバーからの速攻を減らしたりすることが重要ではあります。
しかしこればっかりは仕方ないところもあります。
この前の名古屋のバーレルみたいにゴリゴリプレーをされたり、高さを使って上から強引にシュートに持って行かれると止められないですから。
そんな中で少しでも失点を減らすためにローテーションの策を練ったり、ゾーンを使ってみたりと浜口HCは日々考えているはずです。
こないだ見られた「1–3–1っぽいゾーン」もその一環と捉えることができます。
そういったことの積み重ねでディフェンスレーティングをもう少し良くすることができれば勝ち星も増えるはずです。
名古屋ってすごい…!
バスケットボールは相手より多く点を取れば勝つスポーツです。
ですので元も子もないことを言えば、シュート率が高い=FG%が高いチームは基本的に強いんです。
ここで11/10日時点でのB1全18チームのFG%と勝率の関連性をグラフ化したものを見てみましょう。
※右に行けば行くほどシュート率が高く、上に行けば行くほど勝率が高くなります
やはり全体的な傾向としてはシュート率が高いチームほど勝率が高く、シュート率低いチームは勝率も低い傾向にあります。
川崎のFG成功率はリーグトップで、50%を超える圧倒的な数字。2点シュートに限った成功率は57%とヤバイ、マジでヤバイ。
横浜はFG%が高いのになぜか勝率が低いですね。試合を見ていないので何とも言えませんが、数字から考えられる要因としてはディフェンスレーティングがリーグ17位と低いことが挙げられます。点はたくさん取るけどそれ以上に取られてるってことですね。
ここで注目して欲しいのが名古屋。
名古屋はFG%が40.4%でリーグ下から3番目とハンナリーズよりさらに悪いにも関わらず、勝率は64.3%でリーグ5位なんです。
なぜでしょうか。
まずペースが68.9でリーグ17位、ハンナリーズよりさらに低くしています。
オフェンスリバウンド数はそこまで多くないんですが、ターンオーバーが9.1でリーグ2位の少なさ。
簡単に点を取る手段であるフリースローの試投数も18.1本でリーグ4位。
さらにディフェンスレーティングはリーグ5位、つまり良いディフェンスをして相手FG%を下げ失点を低く抑えています。
オフェンスリバウンドが少めであること以外は、「FG%が低いチームがやるべきこと」を全て実行できています。
これが名古屋が高い勝率を誇る要因であると言えるでしょう。
まとめ
- FG%が低いならペースは低くしたほうがいい
- ハンナリーズはFG%が低いので、ペースを落としている
- さらにオフェンスリバウンドに積極的に絡むことで自分たちの攻撃回数を増やしている
- 課題としては「もう少しスリーとフリースローの本数を増やし、確率もあげたい」「ターンオーバーで攻撃機会を失うことを減らしたい」といったことが挙げられる
ということですね。
ここまでいろんな数字を見てきました。
ですが、読んでくださった方からは某富ヶ丘中学校出身のあいつの言葉が飛んできそうです。
そうなんです。
実際いくらデータに基づいた綿密な作戦を練っても、バスケットボールが持つ不安定要素を完全に取り除くことはできません。
素晴らしいディフェンスを実行しても、相手がスーパーショットを決めてくると、守る側としてはそれ以上どうしようもありません。
全く注目していなかった選手が、ある日大活躍することもあります。
もちろんその裏には選手の気持ちの強さや、長年積み重ねてきた努力といったものが存在します。
逆にうまくいかないだろうと思っていた事が、実際やってみると絶妙な良さを生み出すことだってあります。
そこにバスケットボールが新たな段階へと進化する予兆を感じるかもしれません。
それがバスケットボールを含め、あらゆるスポーツの最も難しい部分であり、最も面白い部分でもあると僕は思っています。
「人事尽くして天命を待つ」
もちろん数字なんて全く知らないって人でも試合観戦を存分に楽しめます。
しかし、実際にプレーする側からすればデータやスタッツといった数字は「人事を尽くす」ための1つの大きな手段です。
我々観る側も、数字を見ることで試合自体を違う視点から楽しむことができます。
今回の内容がその手助けになれば嬉しいですね。
今まで全く数字に興味がなかった人も、試合結果のスタッツページを覗いてみてはいかがでしょうか。
きっと試合への新しい楽しみができることと思います。
※前回11/6の京都対名古屋のスタッツリンクを載せておきます↓