ブロックチェーンVCの投資傾向

VCはブロックチェーンプロジェクトにどんな期待を抱き、何を託しているのだろうか?

はじめに

ブロックチェーンプロジェクトを中心に投資するベンチャー・キャピタル(VC:Venture Capital)の投資傾向について調査したので、公開したいと思います。

Top 25 VC Firms Investing in Blockchain Companies

今回調査したのは、2018年6月段階でクリプトプロジェクトに最も投資した25のVCについてです。こちらの記事に掲載されている50のクリプトファンドのうち特に投資額の多い25社のほぼ全てについてホームページやメディアに掲載されている範囲でそれぞれの投資理念や投資基準、ポートフォリオを考察し、まとめました。

以下、傾向をみていきましょう。

1.プラットフォーム事業を中心に投資するファンドが多い

投資額最大のクリプトファンドDigital Currency Groupやサンフランシスコ最大ファンドPolychainはじめ、「ブロックチェーンを用いたプロダクトが社会に浸透するためのプラットフォームを扱うプロジェクト」に投資するファンドが非常に多いです。

このプラットフォームには例えば経済の心臓となる金融×ブロックチェーン、(ウォレットや取引所のような)トークンの日常的な使用容易性の確保、スケーラビリティ解決・異なるチェーンの相互性やトークンの流動性の確保といったものがあります。

すなわちアプリケーションよりも汎用ネットワーク領域やブロックチェーン基幹技術のようなプロトコル領域が現状投資の中心であり、アプリケーションへの投資についてももっぱら公共性の高いインフラとなるような事業に集中していると言えます。

特に早くから複数のVCから出資を受けている企業には送金・決済サービスを提供する「Circle」、ウォレットの「Abra」などがあります。大手取引所「Binance」「Huobi」「Coinbase」などもシード期やシリーズAでの投資を受けています。

イーサリアムプロジェクト

さてイーサリアムとの関連で言えば、VCにとってはイーサリアムベースのプロジェクトであるか否かという点よりも、あくまでも投資家から資金を集めてくるVCの性質上、プロジェクトの質やチームメンバー、開発状況と言った個別具体的な事案に即した投資判断が重要になってきます。そのため投資が集中しているイーサリアムプロジェクトは、これらの要素について優れた点を持ち、競合プロジェクトとの明確な差別化が図られた唯一無二の特性を持つことが多いです。

具体的にはERC721トークンを用いたDappsとして脚光を浴びる猫育成ゲーム「CryptoKitties」や異なるチェーン同士の流動性を確保するプロトコルの「republic protocol」、高速決済を可能にする「ZIlliqa」、クリエイター支援・募金サービス「Gifto」、オンラインセキュリティを強化するインフラの「Internet of Services(IOST)」といったものが挙げられます。

シード、シリーズAに投資し、約10年でのExitを目指すファンドが多い

タイムラインとしては基本的には通常のVCと同様にシード〜アーリー期のプロジェクトへの投資を行い、5~10年でのエグジットを目指すファンドが多めです。ただ、シカゴに拠点をおくLimmitless Crypto Investmentsのようにブロックチェーンが新しいテクノロジーでハイリスクなのを考慮して長いスパンでの投資を目標にするVCもあります。

投資対象数

ほとんど全てのファンドにおいて最低1プロジェクト、多いときは投資対象の半数以上をプラットフォーム事業が占めるVCもあります。例えばサンフランシスコに拠点をおくPolychainというVCは2018年時点での投資案件数が17社なのに対して、プラットフォーム事業が半数以上を占めます。

2.中国ファンドは中華系プロジェクトを中心に投資している

中国系ファンドの総数は比較的多く、投資額上位50社のうち8社は中国大陸と香港に拠点をおくVCです。

これらのVCのポートフォリオは、プロジェクト立ち上げ時のメンバーに中国人および華僑が多いいわゆる中華系プロジェクトへの投資を積極的に行なっています。投資対象となるプロジェクトとしては取引所や既存大手企業からの同業での参入と言ったある程度ビジネスモデルが長期に渡って利益が見込めそうなものが中心です。

FBG Capitalなどの例外はあるものの、北京に拠点をおくNode Capitalは実施したリード投資4社全てが中華系、22の投資案件数の全てが中国大陸、香港、台湾、シンガポールのプロジェクトです。その投資内容もNEOのようなEthereumではない独自プラットフォームへの投資割合がアメリカのVCに比べて多いです。

シリコンバレーとは異なり独自路線をいく中華系同士の強力な結びつきによって形成されたネットワークがみてとれると言えます。

3.ICOとの関係

しばしばメディアにおいては「ブロックチェーンプロジェクトはICOとVC、どちらから資金調達を行うべきか?」といった論争がなされます。しかし個人的にはこのICOとVCは二項対立では語ることができないと思います。というのも、先述したLimmitless Crypto Investmentsや北京に活動拠点をおくInBlockchainなど、ICOを投資のタームの一つに位置付け、ICO段階のプロジェクトへの投資を行うVCが少なくないからです。

ゆえに、プロジェクトサイドとしては「資金調達の難易度が高い代わりに投資後のバックアップなどが受けられるVCと投資家から直接調達が可能なICO」という双方の性質を理解した上で立ち上げるプロジェクトの進行具合とマーケットの性質、ロードマップに合わせて活用するのがベストと言えるでしょう。

4.Vitalikの投資に対する姿勢

これまでは2018年に入りますます盛んになっているVCによる投資の傾向をみてきました。投資について、イーサリアム生みの親Vitalikはどう考えているのでしょうか。

この著名なTwitterへの投稿にもみられるように、Vitalikは基本姿勢として過度な投資を批判しています。これは投資によってプロジェクトの価格が高騰してしまうことで手数料が高くなったり、開発に集中できなくなることで真に開発者が没頭するべきユースケースの発展が阻害されてしまうからだという理由です。イーサリアムをさらに拡大させるための開発に集中すべきというのが変わらない彼の一貫した姿勢であり、ゆえに彼は2018年1月に参加していた中国のVC、Fenbushi Capitalから去っています(結局advisorとして残ることにはなりましたが )

VitalikはVCやICOそのものを批判しているわけではありませんが、VCによる投資が加熱している今、イーサリアムプロジェクトに投資する予定のVCはイーサリアム開発の先導者がこのような思考で動いている(そして大多数のイーサリアム開発者は彼をフォローし従っている)ことを留意しておく必要がありそうです。



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