海外生活における孤独について
ヨーロッパに住み始めて3年と3ヶ月になります。
初の赴任国のオランダに到着した時は26歳と10ヶ月になる頃。ちょうど20代後半戦をどうやって謳歌するかと考えてた頃に自分はこちらにやってきました。
海外で働くのは前々からの夢だったものの、いざ打診を受けると手放すものの大きさを考えるようになります。何気ない日本での日常、仕事帰りの同僚との飲み、仲の良い友達との旅行、身になることは少ないけど楽しい時は楽しい合コン、などなど。多分みんな独身という状態でわいわいできるのってこの時期が最後なんじゃないかなと思いつつ、ヨーロッパで働くということを決めたのが2012年の出来事。
「ま、現地でも友達はできるだろうし、失うもの以上に若いうちに海外で働くことで得られるものの方が多いはず。嫌になればいつでも仕事辞めて帰ってこればいいや。」
当初はそう考えていました。
しかし海外に住み始めて直面する現実。オランダのそんなに日本人もいないエリアでの赴任となったため、同年代の気の許せる日本人がなかなか見つからない。現地人と仲良くなろうにも、友達の探し方が分からない、職場の同僚も遠くに住んでる人が多く仕事終わるとささっと帰ってしまう。
社交的な人なら要領よく人の集まるところに顔を出しさっさと友人を作ってしまうのでしょうが、内向的な自分にはそれがなかなか出来ない。社交の場に頑張って顔を出してみて知り合いは出来るも、そこからなかなか発展しない。
そこで改めて、社会人になってからというもの社外の友達がほとんど出来ていないことに気づき、大人になってからの友達作りの難しさというのを痛感したのでした。学生の頃はただそこにいるだけで自然と友達の輪が広がっていった。でも社会人になってしまうと、仲良くなる努力をしないと気軽に付き合える友達はなかなか出来ない。まして海外に住むとなると、その倍くらい努力しないと日本と同じように交友関係を築くことは出来ないのだ、と。
今年からロンドンに住み始めると、周りの日本人の数も圧倒的に増えたのでオランダ時代と比べると友達はぐんと作りやすくなりました。ただ、自分で行動しないと出会えないし、知り合いから友達になろうと思うと努力しないといけないという事実は変わらなくて。友達づくりを「努力」と思うかどうかは本当に人次第だと思いますが、そもそも日本人の絶対数が少なく、現地の人たちも自分たちのコミュニティがあってわざわざ日本人と仲良くなりたいと思う人は限られている事実を考えると、日本の生活とは大きく異なることは分かります。
このように、海外に移り住むということは自分の人間関係を一度リセットしてしまうことを意味します。そして、日本に残してきた友人たちはこれまで通り仲間と戯れ楽しい時間を過ごし、そして自分の知らないところで各々の人生を一歩一歩進めていって、新しいライフステージへと入っていく。赴任初期は帰国のたびに気軽に飲みにいけてた友人たちが、家庭を持って予定を合わせにくくなり、どんどん飲み会の人数も減っていく。一方で自分は海外に戻るとまた一人部屋でPCとにらめっこ。こうして海外生活における孤独が募っていくというわけです。
なんでこんなことを書いているかというと、海外に住むということは一般的には美化される傾向にあり、そこにつきまとう孤独にはあまり着目されることがないような気がしたから。国際結婚や留学で鬱になって帰ってくる人がいるとは聞いていましたが、先に書いたような悩み事が拡大した結果なのだろうなと個人的には理解できます。
グローバル化が唱えられるようになって久しい昨今、基本的に自分はより多くの人が海外生活を経験してグローバル社会で活躍できるようになってほしいと願っている人です。ただ、こういった孤独リスクも踏まえた上で、海外生活に挑戦する時期やタイミングを考えてほしい。異国で生活するということは、海外での素晴らしい経験を得る一方で、日本で経験できるはずだった素晴らしい何かを捨ててくるということなのだから。
友人の結婚披露宴に出席するために日本に帰国して久々に同期たちと飲み語り、ふとそんなことを感じたのでした。