留学生

🍂Studying abroad

Fumitoshi Kato
Aug 24, 2017 · 4 min read

1853年のペリー来航以来、数多くの若者たちが西欧文化を学ぶべく海を渡った。いわゆる日本の「夜明け」と呼ばれる頃である。慶応3年(1867年)、越前福井藩士の日下部太郎(くさかべたろう)はラトガース大学に入学した。彼は大学を3年間で、しかも首席で終えたが、結核のため卒業式の前夜にこの世を去った。だがその優秀な成績が評価され、のちに正式に卒業が認められたばかりでなく、アメリカ最高の学称であるファイ・ベータ・カッパの称号があたえられた。パスポートの番号は第4号、つまり、彼は日本からの正式な海外渡航者としては4人目だったということになる。

彼が眠るというウィロー・グローブ墓地は、ぼくが通うキャンパスにほど近い、とても静かな所にあった。勉強の気晴らしに、というのがもっぱらの言い訳ではあったが、ぼくのあたまのなかは、すでに幕末の頃への憧憬でいっぱいになっていて、どうしても出かけざるをえなかったのだ。前の日に降った雨のせいで枯葉が地面に張りついて、空気はなんとなく重い感じがした。その一角に日本人留学生の共同墓地を見つけたときには、思わず気分が高揚した。

25年前には写真を撮らなかった。この写真は、Hidden New Jersey (http://www.hiddennj.com/) というブログの記事から。(SOURCE: http://4.bp.blogspot.com/-QH5gf6Z-9Dk/UlX0U6xOatI/AAAAAAAADqI/gxoqo1tJ0rE/s1600/2013-10-09_12-17-29_98.jpg)

そこには、日下部太郎のほか、長谷川鍛郎、小幡茶三郎、阪谷達郎、川崎新二郎、入江音次郎、松方蘇介らの日本人留学生たちが眠っている。7本の墓石は、何度か修復を重ねながら、ちいさなアメリカの田舎町で大切に保存されてきたのだ。残念ながら、彼らはアメリカでのさまざまな経験を日本に持ち帰ることなく、いずれも20代という若さでこの世に別れを告げた。そののち、明治30年頃までのあいだ、ラトガース大学で学んだ日本人留学生はおよそ300人にものぼるという。その多くは、帰国後、科学技術、政治、教育やビジネスといったさまざまな分野で活躍し、日本の「近代化」に大きく貢献している。

いまや〈国の内外にも天地にも平和が達成される〉という平成の時代である。百年前とはずいぶん事情がちがう。じっさい、アメリカの学生数は、日下部らが海を渡った頃から急激に増加した。高等教育の「大衆化」がすすんで、大学に行くことの意味が大きく変わったことはいうまでもない。1990年に「留学および技術修得」のためにアメリカに渡った日本人はおよそ69000人。20代にかぎっていえば、渡米人数は女性のほうがはるかに多いらしい。そんななかでアメリカにやって来たぼくたちと、幕末の「若獅子」たちをくらべることじたい、ナンセンスだといわれるかもしれない。

だが、「なにか」を求めてこの地に降り立ったという点では、おなじ留学生ではないか。このぼくでさえ、「大志」を胸にいだいて海を渡ったのだ。ぼくたちは、日本に何を持ち帰ることができるのだろうか。これからのアジア、いや世界で、どんな役割を果たすことができるのか。目先のことにとらわれすぎてはいないだろうか…。百年という昔から眠っている「先輩」たちの前では、そのくらい大きなことを考えないと、なんだか恥ずかしいように思えた。

翌日、ラリタン川に沿って2マイルほど走った。寒くて息まで凍りそうだったが、なぜかもっともっと走れるような気がした。🏃

この文章は、1992年11月(当時、New Brunswick在住)に書いたものです。原文のまま、数字の表記だけ修正。リンクや画像・地図は今回追記しました。
- Reference: The Daily Home News (NJ), January 11, 1958; The Yomiuri America (NY ed.), June 26, 1992

the first of a million leaps

コミュニケーション、フィールドワーク、場づくりなどがおもなテーマですが、あまり気負うことなく書いてみることにします。「キャンプ」と呼んでいるフィールドワークは15年目、カレーキャラバン(http://curry-caravan.net/)は8年目、「10年メモ」は5年目に突入しました。

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Fumitoshi Kato

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日々のこと、ちょっと考えさせられたことなど。軽すぎず重すぎず。「カレーキャラバン」は、ついに7年目に突入。 http://fklab.today/

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