The Graphコアプロトコルチームによる新ソフトウェア開発会社 Edge & Nodeを設立

著:Vipin Bharathan Translated Forbes article

Tegan Kline And Yaniv Tal

境界線を破壊してデジタルトランスフォーメーションに取り組む

ビットコインの生みの親といわれるサトシ・ナカモトは、その論文の中で、ユーザーが取引に簡単にアクセスできるようにするための2つのアイデアを挙げています。論文の第7節で、データをプルーニングする方法が議論されており、第8節でSimplified Payment Verificationによってネットワークノードをフル稼働させずに特定の支払いを検証する方法について触れています。最長チェーンのヘッダとトランザクションのマークル分岐を格納するだけで、トランザクションの検証には十分ということです。これらのノード実行における技術面では、ユーザーが必要とするデータの断片にビューを制限します。これらのセクションでは、絶えず成長するビットコインのブロックチェーンデータの中から特定のトランザクションを探すことがどれほど困難であるかについても、論文で紹介されました。

ブロックチェーンのストレージは通常、チェーンの末端に新しいブロックを追加し、新しいノードに分配されるように最適化されています。データは従来のデータベースのように保存されるのではなく、効率的な検索やフィルタリング、グループ化の機能を備えています。ビットコインから始まったこの設計は、Ethereumを始めとする他のブロックチェーンでも引き継がれており、彼らが使用するデータストア構造は、辛うじてデータベースと呼べる程度のものであり実際にはデータベースではありません。データベースでは、インデックスとして知られる構造が効率的な検索を可能にし、このインデックスは任意のデータベース設計の主要な概念の一部となります。

EDGE AND NODE

The GraphGraphプロトコルは、データ取得のためのクエリの構築と実行をより効率的かつ分散化するためのソリューションを提供しました。The Graphプロトコルの可用性は、DeFi(分散型金融)の急速な開発と展開を可能にし、2020年だけでも240億ドルの価値を持つ規模にまで爆発的な成長を遂げました。The Graph上にGRTトークンによるインセンティブシステムが構築され、12月にメインネットがリリースされました。The Graphのインセンティブシステムは、人々の貢献に対する支払いやシビル耐性を含む悪意のある参加者への抵抗弁としての役割など、多くの好循環を生む機能を持っています。また、ネットワークのガバナンスは、独立したネットワークであるThe Graphファウンデーションに引き継がれました。長期のステルスモードから、プロトコル開発を継続するために設立された新しいソフトウェアとサービスの会社Edge&Nodeとして現在は活動を開始しています。私は、CEO Yaniv Tal氏と、ビジネス責任者Tegan Kline氏に、新会社と彼らのビジョンについて話を聞きました。ここでは技術的、クリプトエコノミーの裏付けについても探っていきます。

インデックス

ブロックチェーンストレージからの読み込みの非効率性を克服するために、公開ブロックチェーンからのデータを実際のデータベースに読み込み、インデックス化して保存することで、データの複雑な検索やクエリを可能にすることができます。これがChainalysisのような企業の原動力となっています。ユーザーは、これらの特注のインデックスやデータの分析にお金を払うことを望んでいます。これらは、分散化されたプロトコルの上で実行される中央集権的で独自のソリューションです。

Ethereumは世界のコンピュータで、その主な特徴はスマートコントラクトの範囲、柔軟性、能力であり、トークンやDeFiの爆発的な普及につながりました。Ethereumは、前に述べたのと同じ制限、読み取りの難しさとデータの意味を作ることに苦しんでいます。しかし、Ethereumのスマートコントラクトでは、コントラクト実行の重要なポイントでイベントを発生させることができます。これらのイベントは、API(Application Program Interface)を使ってEthereumの外部から観測することができます。特定のイベントが検出されると、そのイベントのデータを収集してデータベースに保存し、クエリを容易にするためにインデックス化することができます。スマートコントラクトに紐付けられたこのデータは、元のデータのシャードであり、特定のスマートコントラクト上で実行されているdAppまたは分散型アプリにのみ適用されるビューです。スマートコントラクトの数のためにデータが爆発的に増加しているEthereumは、特定のdAppをターゲットにしたこのようなソリューションを必要としています。

GraphQL

Facebookは、企業がWeb上で公開しているAPI中心のビューを管理するための言語を開発しました。これは、SQLへのオマージュとしてGraphQLと呼ばれています。GraphQLはオープンソースとして公開されています。GraphQLの主な考え方は、データを記述する言語を開発し、Web API上にユーザーが欲するものだけを求める手段を提供するというものでした。これにより、インターネットのサイロとなってしまうデータを削減し、ユーザーのニーズに合わせた簡潔で完全な回答を提供することが可能になります。GraphQLはまた、APIのアップグレードが原因でクエリが壊れてしまうのを防止することもできます。

Web3

Web界の最新のアバターであるWeb3は分散化に焦点を当てるものであり、これはdApps自体の分散化のみを意味するだけでなく、その上に提供されるクエリ層のようなアプリケーションも分散化することができます。このようなエコシステムの創出がThe Graphプロトコルの物語を描くものとなります。

Ethereumのデータをクエリするという課題に対してGraphQLが採用されるのは当然のことであり、その結果としてThe Graphが誕生しました。開発者やトレーダーによる熱狂的かつ多数のフォローと、ERC-20および全てのDeFiソリューションに基づく巨大なエコシステムを持つEthereumがターゲットとなるのは自然なことです。また、Ethereumのエコシステムは、ICOやDeFiブームで資金が潤沢に集まっている巨大な開発者やユーザーベースをもたらしています。

サブグラフ

The Graphはさらに進化を続け、開発者が誰でもインデクサーになれるようにする枠組みを作成しました。これはサブグラフと呼ばれるものです。

The Graphとその進化は、dSaaS(分散型ソフトウェア・アズ・ア・サービス)に焦点を当てています。オープンソースのOracleであるChainlinkのように、この理念を具現化したプロトコルは他にもよく知られています。

Chainlinkは、同じくEthereumを中心としたブロックチェーンに外部から信頼できるデータを持ち込みます。一方、The Graphはブロックチェーンから外部の世界にデータを持ち込みます。テクノロジーとインセンティブ駆動型のクリプト経済学が混在するこのような分散型プロトコルの自然な進化は、ガバナンス構造を確立に繋がり、それがThe Graph Foundationで現在起こっていることです。The Graphの初期メンバーでもある主な開発者は、Edge & Nodeと呼ばれるプロトコルをサポートする為の独自のソフトウェア会社を立ち上げました。

サブグラフがDeFiを可能にする

The Graphが構築したのは、サブグラフを作成するためのエンジンと、それを動かすエコシステムです。サブグラフは、The Graphのエコシステムに参加するための主要なメカニズムです。誰でもサブグラフを作成してインデクサーとして機能することができます。ただし、インデクサーは悪意のある行為を防ぐためにトークンを担保としてステークする必要があります。このインセンティブエコシステムは先月、メインネット上で開始され、インセンティブとガバナンスの仕組みに力を与えるGRTと呼ばれるトークンが使用されています。よく知られているDeFiプロトコルの多くは独自のサブグラフを使用しており、ここにはUniswap、Synthetix、Aragon、Gnosis、Balancer、Livepeer、DAOstack、AAVEなどのビッグプロジェクトが含まれます。

テストネット上のサブグラフを使って開発中にプロトコル自体の効果を透過的にすることができれるとdAppのセットアップ労力はかなり軽減されます。Ethereumブロックチェーンに隠されたデータを見るためのインフラのセットアップに苦労する代わりに、サブグラフを定義するシンプルな設定ファイルとサーバーがあれば、特定のDeFiデータをクリエイターに公開し、特定のDeFiのユーザーに提供することができます。これがThe Graphプロトコルの強みです。実際、Ethereum上のDeFiエコシステムは約10億ドルから2020年には約240億ドルにまで飛躍的に成長しました。これは、The GraphとChainlinkによるプロトコルと、それらのエコシステムの開発者と参加者によるレバレッジの力が大きく働いていると考えられています。これらのコミュニティはトークンによって駆動されているため、もはやエンジニアがビジネスマンやベンチャーキャピタルを説得して資金を調達する必要はありません。

New logo EDGE & NODE

Edge & Node

The Graphのコアチームにより設立された新しいソフトウェア開発会社Edge&Nodeの設立が発表されました。The Graphから分離され、トークンによる資金提供についてはThe Graph Foundationがガバナンスの部分を運営します。Edge&NodeはThe Graph Foundationと2年間のサービス契約を結んでいます。今後は、コアプロトコルの維持と新しいツールやアプリケーションの構築を支援していきます。

Edge&NodeのCEO Yaniv Tal氏と事業責任者のTegan Kline氏にインタビューをしましたので、以下に要約を記します:

Yaniv Tal氏は、中央集権的な企業の経営活動をより民主的な形へと変えていくであろう「dSaaS上で価値を創造するために働く分散型チームのネットワーク」について、「Web3が仕事の本質を再定義する可能性について」雄弁に語りました。コンピュートタスクは、メインフレームからクライアントサーバー、エッジへと着実に移動してエンドユーザーに近づいてきました。ブロックチェーンによる共有ビジョンは、プロプライエタリなソリューションをオープンなAPIへと変貌させるのに役立っています。Talは、Edge&Nodeが新しいパラダイムの中でアプリケーションを構築し、サービスを管理することで、このビジョンに重要な貢献をしていけるであろうと考えています。

Tegan Kline氏は、DeFiはThe Graphプロトコル無くして実現できなかったというテーゼを強調しました。The Graphプロトコルは、141のインデクサーにより月間100億のクエリを処理するまでに成長し、これまでに15億GRTがステークされ、GRTは既にCoinbaseで8番目に人気のあるトークンとなっています。

The Graphがエンタープライズ・ブロックチェーンの分野で活躍できるかという質問に対して、Tal氏は、パブリック・分散化の世界へのコミットメントを改めて強調しました。パブリックブロックチェーンの世界には、まだ解決しなければならない多くの問題があります。Edge&Nodeはこの世界のソリューションの創出にフォーカスしていきます。

最新のForbes Blockchain 50では、22のEthereumプロジェクトと9のQuorumプロジェクトがリストアップされていますが、これらのプロジェクトは問題なくThe Graphを使用するようになるでしょう。それぞれのノードに対して特注のサーバーが必要となりますが、The Graphプロトコルはオープンソースであるため、可能であることは間違いありません。

未来

一方では、分散空間を規制する動きもその発展と同様に進んでいます。今後も、特に金融特性を有するDefi領域に対する規制により締め付けが強化されるのは必然であると言えるでしょう。パブリックブロックチェーンを監視・監視するためのクエリ言語は、詐欺や悪意のある活動やテロリズムの支援活動にフラグ立てするためのアンビエントシステムの一部となるでしょう。The Graphベースのコードは、適切な規制に対応したサブグラフが構築・実行された場合、特定の取引を素早く表面化させることができます。多くのDeFiソリューションはこの用途としてのサブグラフを特に必要とするかもしれません。これはDefiとCeFi(中央集権型金融)を収束させていく為の1つの機能となる可能性があります。

最後のポイントは、The Graphプロトコルを通じて複数のブロックチェーンプロトコルを読み取る可能性です。将来多くのチェーンが同時に動作する可能性があり、これはオムニチェーン世界とも呼ばれますが、もしかしたらパブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーンのハイブリッドオムニチェーンの世界が主流になるかもしれません。このような分散型ユーティリティは、資産やプロトコルの相互運用性を生み出す上で非常に重要になるでしょう。チェーン間の取引はdSaaSによって行われ、他のものよりも分散化されたものもあるでしょう。

ERC-20のような標準規格によるインセンティブスキームの設定やトークンリリースは、従来の市場に見られるような歪みをDeFi市場にも引き起こし始めています。DeFiはCeFiに似てきています。アーリーアダプターとビルダーのグループが、ユーティリティートークンの大部分を囲い込み、エコシステムの中で圧倒的な票を獲得しています。トークンの価値が急激に上昇したことで、それがどのようなユーティリティー・プロトコルを有するものなのかを全く気にしない投機家も集まってきています。このようなユーティリティ・トークンの歪みに対処する方法としてはいくつか考えられます。一つは、二次投票スキームを採用したり、エコシステムで使用されていないトークンの価値を下げることです。もう一つの方法は、ERC-1155やERC-1400を通じて複数のトークンをリリースするか、その手の可能性に対応するために新しいEIPを作成することです。これらはすべて、今後のコラムのための思考の糧となるものです。

さて、dSaaS環境への新規参入者であるEdge & Nodeの登場を祝い、本記事を締めたいと思います。

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The Graph Japan
The Graph Protocol Japan

オープンAPIによる分散型アプリケーションを可能に GraphQLでブロックチェーンデータをクエリする為のインデックスプロトコルです