懲りずに着物でUSA

Kazuhiro Ogura
The Kimono Guy
Published in
12 min readDec 20, 2017

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2017 Winter (Las Vegas)

洋服は着ない、持って行かない。服装は機内含め、着物のみ。
スーツケース、ダメ、絶対。荷物は風呂敷に包む。

着物出張シリーズ。アメリカに着物で出張に行ったので、海外出張、あるいは海外旅行を考えている男子の参考になればと思い、書いてみます。

日程

AWSのイベント、re:Invent 2017への参加が目的の旅でした。

2017年11月27日(月)に出て同日に着いて、12月2日(土)早朝に出て12月3日(日)夕方に日本に帰ってくる感じで、現地にいたのは5日間という感じです。

気候と服装の検討

着物でラスベガス出張は実は三度目で、さすがに慣れてきました。前回行った際のフリー時間に、Ingressのバッジを集めるのに一日費やして20kmぐらい着物で歩き回ったことがあり、土地勘もそれなりにあります。そんなわけで、服装に迷うことはありませんでした。

ラスベガスは、砂漠気候に属し、年平均湿度が20%と、年中ひどく乾燥した気候です。蒸し暑く感じることは、この季節であればまずありません。そして室内は外気温15度くらいでもなぜか冷房が入っています(そして現地の人はなぜかTシャツで過ごしている)。

着物で失敗しやすい「厚着しすぎ」を気にしなくていいので、着物野郎には快適な気候です。着物出張スポットとしては、難易度が低いおすすめスポットといえるでしょう。

今回行った11月末〜12月頭の予報を下調べすると、最高気温が18–26度ぐらいでした。日本だと「もし26度になっちゃったら袷だと暑い!死ぬよ!着物が溶けるよ!」という感じになりますが、ラスベガスの秋冬に関しては厚着目でも大丈夫と判断しており、適当に準備してリラックスして行きました。

唯一迷ったのは、re:Invent打ち上げといえるre:Play(ほぼEDMパーティー)に着ていく服です。もみくちゃになるケースがあるので、ビールがかかったりする心配もあるわけですが、なんとなく懐古主義的に、三年前にre:Playでも着たお召しの長着を着ていくことにしました。

装備

着ていった
・ステテコ
・レッグウォーマー
・交織の羽織
・ボロい角帯
・大島紬(長旅の友)
・麻長襦袢
・麻肌襦袢
・ネル裏足袋
・ハンチング
・アメ底雪駄

持っていった
・ステテコ
・肌襦袢
・越中褌(非常用)
・甚兵衛(非常用)
・半襦袢(非常用)
・茶色の長着
・高そうな黒いお召の長着
・角帯
・HDE帯(後述)
・ネル裏足袋何枚か
・半襟何枚か
・着物ハンガー

毎度ながら、荷物を減らすため、襦袢と下着は部屋で洗濯が前提の装備です。防寒よりも洗濯容易性を優先していいかな、と判断し、襦袢は麻装備にしました。

ニュー唐草風呂敷

三年前に初めて着物で出張したのがre:Inventでしたので、今回は私の着物出張の三周年記念にあたります。度重なる着物出張による、会社のブランドイメージへの貢献を理解してもらい、スーパーデザイナー達に協力いただいて会社のロゴ入り唐草風呂敷を作っていただきました。準備万端です!

いきなり猛ダッシュ

エグゼクティブ風に、悠然と成田エクスプレスに乗り込む予定だったのですが、JR中央線が人身事故で止まってしまいました。仕方ないので東西線で高田馬場まで行って山手線に乗り換え、日暮里から京成スカイライナーで成田に向かいました。

ただでさえ目立つのに、唐草風呂敷背負ったキモノ・ガイが階段を一段飛びでダッシュして泥棒感100%アップです。

ちなみに去年もそんなことがありました。成田は鬼門です。

チェックイン

今回は成田からロサンゼルス経由でラスベガスです。ANAでした。唐草風呂敷はビニールに包んでいただきました。

成田からロサンゼルス

僕はとにかく時差ボケが嫌いです。アメリカでの長い海外カンファレンスだと、2日目〜3日目ぐらいに体調が悪化してダウンしてしまうのを経験しているので、どうにかして時差ボケを軽減しようと、今回は一週間前から徐々に体内時計を西海岸時間に合わせるよう、メラトニンを飲んで睡眠時間をずらし、早寝早起きを心がけました。

その結果、日本にいるのに西海岸時間になってしまい、国内で時差ボケ状態になるという間抜けな状態になりましたが、とにかく米国時間にはある程度事前に適応することができました。成田からロサンゼルスへの10時間のフライトでも、メラトニンを飲んで6時間ぐらいぐっすり眠りました。

他のメンバーはやっぱり三日目ぐらいで一回ダウンしていたのですが、僕は比較的平気だったので、効果あったと思います。メラトニンは米国の薬局で$10ぐらいで買えます。

入国審査とセキュリティ

入国審査官には特に何も突っ込まれず。お前はカラテマスターかと訊かれた三年前のような、面白い事件は起こりませんでした。というかあれ以来そんな経験してない。昔と比べて堂々としているからなのかなあ。

セキュリティでは、

Is this Yukata?

と訊かれました。まさか浴衣なんて単語を知っているとは思わなかったのでびっくりしました。

そういえばベルトを取れとも言われませんでしたね。

ロサンゼルスでのトランジット

これまでの旅では実は小さな失敗をしていて、唐草風呂敷の愛おしさに、ロサンゼルスで受け取った風呂敷をビニールから出して、国内線ターミナルまでの長い長い長い距離を、風呂敷をカートに乗せて移動していました。しかしながら、今回バゲージクレームでそれをしようとしたら係員の人に止められて、

どこ行くの? (Where are you going?)

と訊かれました。ラスベガスだよ、と答えると、それならビニールから出さないほうがいいよ、タグがついてるからね、と言われました。なるほど。そういうもんなのか。

そのまま歩いて行くと、トランジット用のバゲージチェックインの場所があって、タグが付いている荷物はそのまま荷物仕分け用のベルトコンベアに乗せてくれたので、助かりました。こうすればよかったんですね。風呂敷じゃない人には当たり前なんだろうけど。

海外旅行Tips:乗り継ぎがあるときは風呂敷はビニールから出すな

ロサンゼルスでは中途半端な3時間ぐらいの待ち時間があったので、とりあえずターキーサンドを食いました。

ラスベガス到着

ラスベガスに着陸する際、マンダリンベイの壁面に #vegasstrong と書かれた大きい横断幕がかかっているのを見かけました。現地の方は悲劇から強く、前向きに、立ち直ろうとしています。

一方で、街全体としてはやはりすこし警戒感が高いような感じがしました。

今回は、町を歩いているときに、警備員の方に、ノートPCを入れて持ち運んでいる風呂敷包の中身を改められることがありました。

止まってください、これは何?(Hey, what’s inside this?)

これかい?ノートPCだよ! (Inside this? My laptop!)

みたいな感じです。中身を見せて、と言われましたが、もちろん友好的に対応しました。

それでも、ラスベガスはラスベガスです。やってくる99%の人が羽目を外そうと思って、楽しみに来る街。

空港でのUber待ちの間に、

どっからきたんだ?準備はいいか!?準備はいいか!?
Where are you from? Are you ready for the party? Are you ready for the party?

と声をかけてきためっちゃハイテンションな若者に、到着直後の緊張感から

え、何の準備? (Which party are you talking about?)

マジレスしてしまったのが今でも悔やまれます。日本人らしく

うぇいうぇ〜い!(Way waaaay!)

と答えるべきでした。昼も夜も安全で、歩いているだけで楽しい街、それがラスベガス!

ベネチアンのモール、グランド・カナル・ショップスでは陽は沈まない
Sandsに続くre:Inventの門

re:Invent

外に出る時以外は基本的に着流しで歩き回りました。

今年のre:Inventは43,000人と、ものすごい規模で、セッションを回っているときにはめったに知り合いに会うこともなく、単独行動していました。会社からも6名来ていましたが、昼間はほとんど顔を合わさない感じでした。

海外ではたいていそうなんですが、来場している技術者とかは、多国籍な職場とかでダイバーシティ教育を受けているためか、道端で話したりする際に、服装に対して露骨に突っ込んでくることはめったにありません。

一方で、警備員さんとかはみんな遠慮ない感じで絡んでくれて、Nice attire! とか I like your kimono! とか言ってくれて、嬉しかったです。

シラフじゃないときは、みんな割と遠慮なく絡んでくれます。PubCrawlという、会場付近の大部分のパブが無料になるというものすごいイベントでは、羽織紐に興味を持った人の質問に答えたりしました。

PubCrawlで撮った。残ってる写真が全般にベガスっぽいんだけど、昼間はちゃんと仕事してました。

忍者

三年ぶりに来たre:Inventでは、マスコットキャラがなぜか白い忍者 (AWS Cloud Ninja)になっていました(笑)

アメリカには、アジア人以外がキモノを着るのは文化盗用であり、不適切だ!と騒ぐけしからん輩がいると聞いていたので、気にしすぎるあまりニンジャとかサムライとか言わなくなるんじゃないかと心配していたのですが、気にしている様子は微塵も見られず、安心しました。すばらしいです。最高ですw

43000人の参加者の中で着物を着ていたのは多分僕とその忍者(写真によるとカタナ持ってるやつとヌンチャク持ってるやつの二体存在するっぽい)だけだったと思うので、ぜひ写真を撮りたかったのですが、ついにその機会は得られませんでした。次回はぜひ撮りたい!

QRコード入り角帯という幻

今回は、嫌がるスーパーデザイナーたちに時間を使っていただき「QRコード入り角帯」を作っていきました。

扇子の束を持ち歩いて、打ち上げイベントのre:PlayでQRコードをスキャンして、キモノガイから扇子をもらおう!という破廉恥なキャンペーンをする予定だったのですが、re:Playには荷物持ち込みができないという決定的な問題にぶち当たった他、QRコードの表示位置や認識精度にも課題があり、今回は企画倒れに終わりました。

またの機会にリベンジしようと思います。

ダウナー期

私はかれこれ三年ぐらい毎年数回こんなことをやっているわけですが、着物出張で海外に行って2日くらいすると

「なんで俺こんな格好してるんだろう……やめたい……洋服着たい……」

というダウナー期に陥ります。

乗り越える方法は簡単!洋服を持っていかないことです。こうなった次の日ぐらいから、急に楽しくなりますよ!

re:Play

re:Playでは、DJ SNAKEに合わせて着物で1万回ぐらいジャンプしました。ただただ楽しかったです。

イメージ画像……ではなく、実際の現場で撮った写真です

巨大なアトラクションがたくさんあったんですが、ちょっと巨大すぎて写真に収まりきらなかったです。

残っているのはVIPラウンジのアトラクションでサーバーワークス大石社長と撮った誰得プリクラだけ

中華料理屋で店員と間違われる

今回はあんまり面白い事件は起こらなかったんですが、ヌードルアジア(中華料理屋)で腕組んで並んでいたら「席空いてますか?」と声をかけられる事案がありました(笑)

日本の飲み屋さんでは間違えられたことがあるんですが、中華料理屋で間違えられるのはアメリカならではの体験で新鮮でした!

帰路

帰りは、AM6時のフライトで、なんでこんな時間にしちゃったんだろうと悔やみつつ、部屋で一人でDr. Pepperダイエットとかダイエットペプシワイルドチェリーとかを飲みつつ徹夜してAM4時頃にチェックアウトしました。

眠かったけど機内で良く寝て帰ってきました!風呂敷はビニール包みになっていました。最近はもっぱらビニール包みです。

補足ネタ:長旅用着物と長旅用ボロい帯

三年前に初・海外出張で着ていった初代の長旅用大島紬は、その後の日常的な酷使に加え、国内・海外出張での酷使によって、裾などあちこちが擦り切れ、最近引退しました。ありがとうな。

長旅はやっぱり、服がそれなりに痛みます。僕は長旅用普段着を決めて、道中はそれを着ていくことにしています。今は二代目の長旅用大島紬を着ています。

帯はホントにボロボロの長旅用綴れ帯を締めています。ちょっとずつ結び方を変えたり、端を詰めたりして背中のアタリどころを変えて、全体的な崩壊を防いでいます。

総括

・ラスベガスは元気でした!着物出張チャレンジ先としてもおすすめ!
・何回来てもお土産に迷う

ごめん、今回はギャンブルしなかった。また来るね!

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Kazuhiro Ogura
The Kimono Guy

エクストリーム和装家。HENNGE (f/k/a HDE) で経営、プログラミング、営業、雑務など//HENNGE株式会社 代表取締役社長 小椋 一宏/Kazuhiro Ogura Founder, President and CTO of HENNGE