Kazuhiro Ogura
Jul 20, 2015 · 15 min read

懲りずに着物でUSA

2015 Summer (前編: デンバー編)


・洋服は着ない、持って行かない。服装は機内含め、着物のみ。

・スーツケース、ダメ、絶対。荷物は風呂敷に包む。

ほぼ毎日着物生活の僕が、昨年秋のラスベガス出張に続き、今夏のUSA出張にも着物オンリーで行ってきましたのでレポートします。着物で海外出張、あるいは海外旅行を考えている男子の参考になればと思います。

今回は2015年7月7日〜7月16日の10日間、目的地はデンバーおよびオーランドです。デンバーでは Gophercon 2015 、オーランドではマイクロソフトの WPC15 に出席する計画でした。


悩んだ点

出席する二つのカンファレンスは両方ともIT系ながら、どテック系とITビジネス系で、求められる服装のモードがやや異なります。洋服で言うと、Tシャツ・デニム・スニーカーに相当する格好と、タイなしジャケットありに相当する格好の両方を準備する必要がありました。

さらに、デンバーはステップ気候(涼しい)、オーランドは亜熱帯性気候(暑い)と気候もかなり異なります。

風呂敷で移動するためには、荷物は最小限に減らす必要がありますが、今回は出張の総日数も10日間とそれなりに長く、国内移動もあることから、5日間ラスベガスのみに滞在した前回に比べると、だいぶ頭を使う必要がありました。

いろいろ考えた結果、下記の装備で臨むことにしました。

装備

着ていった

・木綿の越中褌
・麻の肌襦袢(自作)
・麻の長襦袢
・単衣紬
・角帯
・足袋(紺)
・スポンジ底雪駄

持っていった

・脚絆
・木綿の越中褌
・麻の長襦袢
・足袋(紺)、足袋(黒)、足袋(白)、タビックス(黒)
・麻の縮みの長着(紺)
・涼しそうな絣の長着(黒ベース)
・お召しの単衣長着
・謎の高そうな単衣長着(黒)
・一つ紋の羽織(紗)
・羽織紐 x 2
・角帯 x 2
・ホースヘア調の雪駄
・着物ハンガー x 2
・甚平(寝間着、非常用)
・ダイソービニール風呂敷(90cm角5枚入り)

着ている着物の他に、着物4着と羽織1枚を持っていった感じです。

前回よりもだいぶ荷物が多いのは、途中でエンジニアモードとビジネスモードの切り替えがあるためです。しかし持っていった着物がいずれも単衣または薄物(裏地の無い薄い着物)のため、荷物は思っているよりも小さくまとまりました。

飛行機の中は経験上寒いので、行きは脚絆と単衣紬で防寒し、デンバーについたら「麻の縮みの長着」か「絣の長着」を着流す(→パーカー・Tシャツ・デニムぐらいのエンジニアモードのつもり)。

オーランドのWPC15会場では「お召しの長着」か「謎の高そうな長着」に一つ紋の羽織をあわせてCEO風に振る舞う(→袴なし、羽織ありでタイなしジャケットあり、若干よそ行き、ぐらいのビジネスモードのつもり)。

猛暑のオーランドの町を歩く機会があれば「麻の縮みの長着」を、場合によっては浴衣スタイルで襦袢を省いて凌ぐ(→短パン・Tシャツぐらいの休日モードのつもり)。

襦袢と褌は毎日部屋で洗う。

……というような計画でした(しかし、後述するように誤算がありました)。

小道具の改善

ハンチング帽

前回、ステレオタイプ風の泥棒を強く意識した大判の唐草風呂敷を使用し、割と各方面から好評だったので、どうせならもっと泥棒に近づきたいと思いました。どうしたらいいか、考慮に考慮を重ね、ベージュ色のハンチング帽をかぶることにしました。楽天で送料込み2052円でした。

日本でも日頃カンカン帽をかぶることがあるのですが、帽子をかぶると、いい感じの「隙」が生まれるようで、知らない人によく話しかけられるようになる、ということを経験しています。多分「ああ、ファッションでやってるんだなこの人」という感じで立ち位置がわかりやすくなるんだと思います。海外でもそうなるといいなと期待しました。

ちなみに、着物には合わないとされている腕時計も、「隙」を生む良い感じのアイテムだと考えており、最近よくするようにしています。

衣類圧縮袋

ダイソー・キャンドゥ双方にて、衣類圧縮袋に技術的なイノベーションが見られており、逆止弁付きの圧縮袋というものが売られていましたので、新たに2つ買い直しました。逆止弁が無いモデルと比べると、革命的に空気を抜きやすくなっており、人類の革新だと思いました

前回同様、着物類は「本畳み」という長方形になるたたみ方でたたんだ上、防水と体積圧縮を狙って、この衣類圧縮袋に入れるようにしました。

圧縮によって着物に変なシワがよらないか気になったのですが、ホテルに着いたときに開封して空気を入れるようにしたところ、特に問題ありませんでした。

風呂敷の包み方

風呂敷は、中の物がバラバラになったりしないよう、風呂敷 in 風呂敷 in 風呂敷構造で包みます。

持って歩くときには肩にかけるようにし、預けたりするときには茶巾寿司形態に変形させます。

この辺は前回と同じなので、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

出発の日

出発の日、ハンチング・紬・唐草風呂敷を装備すると、完全に泥棒でした。

我ながら完全にドロボーすぎたので、試しに交番の前でウロウロしてみましたが、圧倒的な善人面のおかげで、特に職務質問なども受けませんでした。

チェックイン

前回、羽田でデルタ航空にチェックインした際には何も言わずに無言で預かってもらったのですが、今回は係員の方が「私、こういった形のものは初めてで……」と難色を示されました。「大きなビニール袋に入れましょうか?」と訊かれたので、「いや、大丈夫だと思います」とNOで答えたはずなのですが、

「そうですね、ビニール袋に入れましょう」

とご自身で意思決定され、僕の風呂敷を大きなビニール袋に入れてベルトコンベアに載せました。

ゲート入り

機内持ち込み荷物は、通勤にも使っている90cm角の風呂敷で持ち込むのですが、前回、少し煩わしいと思ったのが、風呂敷からのPCの出し入れでした。

ゲートを通る時や、TSAの検査を受ける際にはPCを出すように指示されますが、この際にいちいち「お使い包み」にしている風呂敷の結び目を解くのが面倒でした。そこで、今回は空港・機内では風呂敷バッグ結び(下に写真あり)にするようにして、中のものを取り出しやすくしました。

機内(成田→デンバー)

成田からデンバーは直行便があり、大変快適でした。しかし、高度が上がるにつれ、機内の気温もグッと下がります。着物の防寒上の弱点である足に脚絆を装備したのは大正解でした。

実は、もともとは江戸時代の旅人を意識して、脚絆・手甲・わらじで出発する計画だったのですが「そこまでやるなら三度笠や振り分けも用意するべきではないか」「股引は白か、黒か、水色か」などとしょうもないことで迷っているうちに準備で挫折し、一旦その計画は放棄しました。

しかし、そのことをFacebookでつぶやくと、知り合いのお医者さんから「脚絆は風邪予防に役立つ」とのアドバイスを受けたので、持っていくことにしたのです。

実際脚絆が無ければかなり寒かったので風邪を引いたかもしれません。田中先生、ありがとうございました。皆さんも着物で海外旅行をするときには脚絆を持って行きましょう。

脚絆はゲートに入る前にあらかじめ巻くと、セキュリティ等で面倒がありそうだったので、搭乗直前に装着しました。

帯は本当は片ばさみとかにしたほうがいいと思うのですが、横着して貝の口で結んだままにしました。

到着→荷物受け取り

風呂敷はいつもどおりターンテーブルに載ってやってきました。ただし、チェックイン時にビニール袋に入れてもらったため、ビニールに包まれていました。持ちにくいのでビニールはゴミ箱に捨てていきました。

米国入国

前回のラスベガス訪問時は入国審査で

「お前はカラテマスターか」

と訊かれたので、そのような面白ネタを若干期待していたのですが、今回は残念ながら特に面白いネタはありませんでした。前回よりも詳細に行動予定を訊かれたのが、泥棒風の出で立ちだったからなのかどうかはよくわかりません。

Lyft

現地での移動には、日本でも展開しているUberの競合サービスにあたる「Lyft」を大活用しました。現地に着いてから、もともと興味のあったLyftに試しに申し込んでみたら、キャンペーンなのか、$20 x 5の無料クレジットが配信され、結果としてはチップ以外のお金は一切払わずに移動することができてラッキーでした

UberやLyftの難しい点の一つは、知らない土地で自分を見つけてもらって、車に乗り込むところですが、Lyftのユーザー写真を泥棒風の写真に変えたことで、運転手さんにもすぐに気づいてもらうことができました。

誤算

デンバーでの誤算は、想定よりも気温が低かったことです。天気予報では、30度以上になる日もあったので、東京と同じような気温かと思っていたのですが、着いてみると、雨が降っていてめっちゃ寒いのです。

「マイル・ハイ・シティー」とも呼ばれるデンバーは標高約1600mの町。寒い時は寒い。この週は7月なのに外気温が12度ぐらいに下がることもあり、とても麻の縮みなどで歩き回れる気候ではありませんでした。結果的には、家を出たときに着てきた紬を毎日着ることになりました(襦袢と下着は毎日洗いました)。

後で調べてみたら、その週だけ異常に雨が降り、異常に寒かったようです。

部屋での洗濯

前回同様、荷物を減らすために毎日部屋で洗濯をしました。ステテコではなく、越中褌を装備してきたのも、洗濯しやすいことを重視したためです。前回はユニクロのドライステテコを持っていったのですが、イマイチ洗いにくく、そして乾きにくく、若干苦戦しました。対して、今回持ってきた越中褌は、紐のついた長方形の布なので大変乾かしやすく、次の朝までには完全に乾きました。結果的には大正解でした。

麻の肌襦袢は、特に何もしなくても絞って適当に干しておくと、必ず翌朝には乾きます。経験上確信があったため、着ているものの他には予備は持って行きませんでした。

しかし、麻の長襦袢は、条件によっては衿のあたりが朝までに乾ききらないことがあることを経験上知っていたので、今回は部屋にあったアイロンを活用しました。手洗いして軽く絞った後、バスタオルと一緒に巻いて上から踏み、水気をよくバスタオルに移した上で、アイロンを当てて水分を飛ばし、襦袢はそのままアイロン台にかけてみました。少し不安はあったのですが、朝にはカラカラに乾いてくれました。

ビジネス系のホテルだとアイロンかズボンプレッサーがあるか、フロントで借りられると思うので、出張に行かれる方は活用すると良いと思います。

そんな訳で、麻製品と褌は旅行装備として最強だと思います。次回からは多分長襦袢は予備は持っていかないと思います。

問題は足袋で、これは、何をどうやっても乾きにくいです。部屋に干しっぱなしにして、1.5日ぐらいかけて乾かしましたが、ホテルをチェックアウトする日(干しっぱなしにできない日)にはドライヤーを使う必要があり面倒でした。何足か持っていくしかないと思います。

人々の反応

前回ラスベガスでは、外をウロウロする機会は比較的少なかったのですが、デンバーではダウンタウンを移動したため、それなりに歩きました。

ハンチングに紬姿でダウンタウンを歩いていると、道行く人にたびたび声をかけられました。なぜか、特に若い男性にウケが良かった気がします。 “Awesome outfit!” “Excellent outfit!” “I really like your outfit!” などといちいち褒められ、いい気分になりました。褒められたらちゃんとお礼を言うようにしました。

その服は何という名前なのか、どの国から来たのか、と訊かれることもよくありました。

一方、1500人が集まるGopherConのカンファレンス会場では、他の国の技術者と談笑する機会もたくさんありましたが、服装に触れられることは比較的少なかったように思います。出席者は、ほぼ全員がIT業界で働くガチエンジニアなので、ダイバーシティが高い職場で働いていたりして、ちょっと人と違う格好の奴がいる程度では動じないか、触れてはいけないと考えるのかもしれないなと思いました。

嫌な思いをしたり、困ったりすることは一切ありませんでした。

そして武闘家扱い

前回のラスベガス訪問では、盛んにカラテ・マーシャルアーツ・ケンドーなどと言われたのですが、デンバーでは泥棒風のコーディネートのためか、入国からホテルに着くまでは武闘家扱いを受けることはありませんでした。

しかし、朝Lyftの車を待っていると、ホテルのシャトルバスの運転手さんが、胸の前でパーとグーをあわせて、武闘家風のお辞儀をしながら “Good morning, sir” と声をかけてきました。

結果的にその運転手さんとは毎朝遭遇することになりました。一日目は笑って “Good morning!”と返しましたが、二日目も同じように挨拶されたので、僕も同じようグーとパーをあわせてお辞儀しながら、低い声で「グーーーーッドモーニーーーン」と返してみたら喜んでくれました。そして

「日本からか?あれだろ?黄色い服を着て、モンク達が山の中でカラテの修行をしてるんだよな!」

と博学ぶりを披露してくれました。

いろいろ違うよとも思ったのですが、適当に同調していると、「今でも実際に修行している奴がいるのか?」と訊かれたので、「もちろんだ」と答えておきました。

むやみに人の夢を壊してはいけないのです。

忍者扱い

エレベーターの中で、 “Ninja?” と声をかけられる準武闘家扱い事案もありました。日本人の耳にはネンジャ?と聞こえるので、 “Pardon me?” と訊き返してしまいました。

学生扱い

一度だけ、台湾から来た技術者の方に “Are you a student?” と訊かれる事案がありました。 当方おっさんなので、もちろん悪い気はしません。しかし、嘘をついてはいけないと思い、“No, I’m a CEO” と答えました。書生風に見えたということなんでしょうね。

着物へのダメージ

GopherConでは、参加者特典として、素敵なリュックサックをもらいました。身の回りのものは風呂敷で包む、というポリシーがありましたが、つい嬉しくて着物にリュックで歩き回っていたところ、一緒に首にかけていたカメラのストラップと、リュックサックの肩掛けが干渉して摩擦を生み出したようで、着物の首のあたりに小さい擦り切れを作ってしまいました。

また、同じ紬を何日間も連続で着て、雨に降られながらあちこち歩きまわっていたせいか、短期間にもかかわらず、裾がだいぶ擦り切れてしまいました。とりあえず縫い物セットで応急処置したものの、予め裾テープ等で強化をしておく必要があったと思いました。

いずれも自宅で補修可能な範囲のダメージですが、この辺りは次回以降の教訓とします。皆様におかれましては、着物にリュックを背負うときには十分お気をつけください。

前編まとめ

デンバーは寒かったものの、人々も親切で、良い街でした。Lyftのドライバーと雑談したところによると、アメリカ人にとっては、家族で引っ越してきたいような、住みいい街とのこと。

西海岸方面からも飛行機で二時間ぐらいとアクセスがよく、今後飛行場とダウンタウンを結ぶ鉄道が整備される計画もあるそうです。そうなると移動の便がよくなり、ますます着物で訪問したくなりますね。

後半:オーランド編に続く

The Kimono Guy

洋服は着ない、持って行かない。服装は機内含め、着物のみ。 スーツケース、ダメ、絶対。荷物は風呂敷に包む。The Kimono Guyによる着物で出張シリーズ。

    Kazuhiro Ogura

    Written by

    エクストリーム和装家。HENNGE (f/k/a HDE) で経営、プログラミング、営業、雑務など//HENNGE株式会社 代表取締役社長 小椋 一宏//Richie Ogura Founder, President and CTO of HENNGE

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