着物で台湾いきたいわんIII

Kazuhiro Ogura
The Kimono Guy
Published in
10 min readDec 12, 2017

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2017 Winter (Osaka/Taipei)

・洋服は着ない、持って行かない。服装は機内含め、着物のみ。

・スーツケース、ダメ、絶対。荷物は風呂敷に包む。

着物出張シリーズ。また台湾に出張に行ったので、海外出張、あるいは海外旅行を考えている男子の参考になればと思い、書いてみます。

着物で台湾は過去二回書いていて(2016春, 2016秋)ネタ切れ気味なので、その後行ってもブログに書かないこともあったのですが、今回は東京からの大阪出張からのそのまま台湾出張、という新しいパターンだったので、ブログにしてみることにしました。

スケジュール

二泊三日で大阪と台北を回る予定でした。

11月15日(水) 東京→大阪
午前中に東京から大阪に移動。大阪オフィスに出勤後、お客様を表敬訪問。その後、展示会のブースで新製品の宣伝をする。

11月16日(木) 大阪→台北
朝10時の便で関空を出発。台北の桃園空港に13時ごろ着く。そのまま現地のスタートアップ系展示会を視察し、そのあと台湾現地法人に出社。

11月17日(金) 台北→東京
午前中に台北の金融機関を訪問して用事を済ませ(実はこれがメインの用事)、18時過ぎの便で松山空港から成田に帰る。

一見普通の出張予定のように見えるのですが、着物出張としてはかなり難易度の高い構成でした。

・冬のお客様訪問モードと、ブースで新製品宣伝モード(尻端折りに法被のお祭り風)を同じ日に実現する必要がある

・気温10度以下の冬の早朝の大阪を出発して、28度の亜熱帯の台北に飛ぶ

・翌日、また気温一桁台の東京に戻ってくる

短期間でいろんな服装に切り替える必要があり、どうコンパクトに荷物をまとめるか、またどうやって亜熱帯と日本の冬を大げさな着替え無しですばやく切り替えるか、が難しいテーマでした。

この季節の大阪の気温は最低9度、最高15度くらい。一方台北はこの季節にしては暑い週で、予報では29度とかそんな感じで、真夏でした。下手すると一日の間の気温差20度。大げさな着替えなく空港で対応できる方法を編み出して乗り切る必要がありました。

装備

毎度ながら部屋洗濯が前提の最小構成です。

いつもと大きく違うのは長襦袢+褌ではなく半襦袢+ステテコを基本装備としたところで、これは一日目に股引+尻端折りで展示会のブースに立つつもりのため、下半身に襦袢がない方が尻端折り的に煩わしくなくて良いと判断したためです。股引の下に褌を履くと、おしっこがしづらいのでステテコにしたいという事情もありました。

お客様表敬訪問は、大島+羽織で行くことにしました。まさに普段しているような、カジュアルな感じの格好ですが、ジャケパンIT系経営者ぐらいのモードで開き直ることにしました。

着ていった

・ステテコ
・肌襦袢
・木綿半襦袢
・袷の大島紬(長旅の友)
・羽織(交織)
・角帯
・ネル裏足袋
・雪駄(アメ底)
・ハンチング
・アフガンストール(シュマグ、首に巻く)
・レッグウォーマー

持っていった

・ステテコ
・麻の縮みの長着
・木綿の単衣長着
・麻半襦袢
・晒裏足袋
・股引(祭衣装)
・越中褌(非常用)
・甚兵衛(非常用および寝間着用)

夏冬の切り替え

台北←→日本のフライト前後の夏冬の切り替えに悩みましたが、結論として、夏の着物の上に袷の大島を重ね着して、それを着たり脱いだりすることで気温に適応することにしました。どのタイミングで脱皮したり重ね着したりするかは現地で考えることにしました。

一日目(東京から大阪)

出発の朝、東京で

唐草風呂敷を背負って新幹線で大阪に向かい、ホテルのフロントに風呂敷を預けたあと、お客様を訪問しました。ここまでは特別なことは無しです。

その後、展示会場に移動し、ブースに立ってで新製品の宣伝をしました。簡易的な着替え室があったので、そこですばやく股引を履き、尻端折りをしてイベント用の法被を着ました。

どうやったら着物の人がB2BのIT展示会に溶け込めるかを考え抜いた末の苦肉の策。自然でしょ?

(ちなみにお祭り風の服装なのは僕が空気を読まずに勝手にやっていることで、他の社員やコンパニオンさんたちは普通に洋服に法被を羽織っています)

誤算としては、法被が筒袖のため、下に着ている着物(普通の袖)の袖が通らず、常に腕まくりしている状態になってしまうため、結構寒かったです。終了時間まで頑張って製品の宣伝をして、股引を脱いで会社の人たちと食事に行きました。

二日目(大阪から台北)

フライトは10時。ホテルは西梅田でした。

早起きして麻半襦袢に絽の半襟をつけた上で、麻縮みの上に腰紐だけ結び、その上に袷長着を重ね着して、一番上は腰紐を省略して帯だけを締める。羽織は着ない。足袋は晒裏を履いて、寒いのは我慢、という感じで、朝7時前くらいにホテルを出発しました。

重ね着したあとの絽の半襟、麻縮み、袷長着の3段の襟の様子。眠い目こすって準備しました。ヨレヨレなのは大目に見てください。

ちなみに僕は全襦袢と全半襟を同じ規格のマジックテープで統一しており、半襟の付け外しは中学生の財布みたいな感じでバリバリバリバリ、とやれば完了なので、夏半襟への付替えは苦ではありませんでした。

流石に重ね着は暖かく、また風呂敷包みで背中を覆っていることもあり、羽織なしでも特に寒いとは感じませんでした。朝の鋭い寒さが心地よい感じ。

バス停から高速バスに乗って関空に向かい、無事に8時すぎに到着。いつもどおりに風呂敷包みをチェックインして搭乗ゲートに向かいました。空港だとビニールとか段ボールとかに風呂敷包みを入れられてしまうことが多いのですが、生でそのまま預かってもらえました。さすが関空です!

単独行動だったので飛行場での自分の写真は撮れず。唯一の飛行場っぽい写真。実は関空も桃園も初体験でした。

フライト前に脱皮するか、現地で脱皮するか迷ったのですが、飛行機の中は寒いことが多いし、向こうの飛行場も多分冷房ガンガンなので、重ね着のまま飛行機にのりました。脱いで手荷物を増やすよりも着ていたほうがラクです。

関空から桃園空港まではわずか3時間半程度。あっという間に着きました。

台北到着

台北はさすが亜熱帯、飛行機から降りた瞬間から湿気を感じました。風呂敷を受け取り、到着ロビーで待ち合わせしている間に素早く一番上の長着を脱いで、帯だけ締め直す。公衆の面前での着替えですが、帯だけなので、そんなに注目は浴びませんでした。脱いだ長着は荷物カートの上で本畳みをキメて、風呂敷包みにしまいました。

コンベアに乗ってやってくる風呂敷包みを受け取り、重ね着を脱いでカートの上で本畳みをキメる

こうすることで普通に麻縮みを着ている夏服の状態になり、気温28度に無事に適応できました。

SIMを買って現地の仲間たちと合流して、次の予定は展示会視察です。新しく出来た桃園空港線MRTで、都心まで快適に移動しました。ホテルが反対方向にあるので、唐草風呂敷はコインロッカーに預けました。

展示会はMeet Taipeiというもので、スタートアップ系の展示会です。政府や自治体などがスタートアップをプッシュしているのがよくわかる展示会でした。サイボウズさんやチャットワークさんなど、日本資本の会社も出展されており、活況でした。

脱皮して、風呂敷をロッカーに預けた後なので身軽になった。クラウド各社もスタートアップ向けの支援策を打ち出していました。

毎度ながら台湾の方々は心優しく、何人かの方が日本語で声をかけてくださいました。

その後HDE台湾に出社して、仲間たちと火鍋を食べて、その日はぐっすり寝ました。

HDE台湾と風呂敷、そして火鍋(おいしかった!)

ところで、台湾に来るなら絶対作ったほうがいいのが悠遊卡(ゆうゆうカード)です。電車やバスに乗れる他、コンビニで買い物もできるなど、日本のSuicaの位置づけのカードです。しかしながら、Suicaと比べて感度が厳し目に設定されており、着物の袂に入れたまま改札を通ることはできません。むき出しのカードを改札等に接触させる必要があります。着物男子は注意しましょう。

日本の改札は袂に入れたSuicaで通れる

三日目(台北から東京)

朝から木綿の単衣。出勤後、用事を済ませるために銀行へ。銀行の方々は猫のイラストのTシャツを着ていたりと、極めてカジュアルな格好でした。台湾の銀行は私服OKなのかな〜と思っていたのですが、後で訊くとカジュアルフライデー的な運動で、金曜日はそういうスタイルなのだとか。

銀行での手続きを終えて、これでミッションクリアなので、会社の近くの「天下無敵麻辣麺」という日本人にも文字だけで味の傾向がわかる有名店で辛い油そば的なものを食べました。絶品でした!

店名でソーシャル検索すると、超級辣(超辛いメニュー)に挑戦して救急車で運ばれてしまう挑戦者達の写真とかが出てくる。普通の辛さを頼めば、普通においしいし、子供向けのメニューもある。

帰りは松山空港から。なんとこの日は31度まで気温が上昇。暑いのでなんとなくそのままの格好で飛行機に乗り、成田についてから、バゲージクレームのあたりで袷長着を上から重ね着しました。バスに乗って帰りましたが、東京の夜には少し暑いぐらいの感じでした。

帰りの風呂敷は、風呂敷の結び目だけ外に出して、本体はビニールで包むという新しいパターンで運んでいただきました。

まとめ

寒暖の差にビビっていましたが、重ね着で調整可能、という新しい知見を得た旅でした。今後は冬の台北出張も安心です!

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Kazuhiro Ogura
The Kimono Guy

エクストリーム和装家。HENNGE (f/k/a HDE) で経営、プログラミング、営業、雑務など//HENNGE株式会社 代表取締役社長 小椋 一宏/Kazuhiro Ogura Founder, President and CTO of HENNGE