着物で行ったよ香港島
装備一覧
着ていった
・木綿の越中褌
・麻の肌襦袢(自作)
・麻の長襦袢
・麻の縮みの長着(薄い紺)
・角帯
・足袋(紺)
・スポンジ底雪駄
・ハンチング帽
持っていった
・足袋(紺)、足袋(黒朱子)
・麻の長着(墨黒)
・上布の蚊絣の長着(黒ベース)
・ポリの絽の羽織(黒)
・羽織紐 x 2
・角帯 x 2
・着物ハンガー x 2
・甚平(寝間着、非常用)
・ダイソービニール風呂敷(90cm角5枚入り)
・ビニール洗面器
・コンパクト洗濯板
・速乾タオル
・革靴、靴下、ベルト、パンツ、シャツ、チノパン、紺縞のボタンダウン、リュックサック
悩んだ点
今回の旅程8月24日〜27日。4日間と短かく、気候もほぼ東京と変わらないため、あまり悩むところもありませんでした。
香港は温帯夏雨気候。夏は高温湿潤で、8月の平均気温は29度程度で、だいたい東京と同じような感じと考えてよさそうです。向こうで着るものは、東京で普段着ているものと同じで良いと判断しました。フライト中の寒さについて気になるところですが、フライトはわずか5時間前後で、機中泊もないため、特別な対策は不要だろうと判断しました。
東京で毎日しているように、麻系の長着を着流す(袴・羽織無しのスタイル、ポロシャツ着てるぐらいに相当するカジュアルなスタイル)のを基本にしましたが、一日、多くのお客様に会うイベントがあり、ややビジネスモードにしたかったので、絽の羽織を持参しました。
気になる下着類ですが、これまでの出張で「褌・麻襦袢は必ず一晩で乾く」との確信がありましたので、毎日洗濯・部屋干しすることを前提に予備の襦袢・褌は持参せず、だいぶ装備を軽量化しました。その代わり、汗をたくさんかくため、一回つかう分が小分けになっている洗濯洗剤「部屋干しトップ」を持参しました。
そんなわけで、着物に関してはほぼいつもどおりだったので、悩んだ点は正直無かったのですが、一日洋服を着ることにしたため、ここが一番困りました。
服はまだいいのですが、靴と鞄がかさばります。鞄はデンバーで貰ったリュックを使うことにして、ベルト・靴下・下着を革靴の中に詰めて、その靴をリュックに詰めることで省スペースと革靴の型崩れ防止を両立することにしました。
前回は二つ使った、ダイソー・キャンドゥ圧縮袋については、一つで良さそうだったので一つだけ使いました。使った一つがダイソー製だったのかキャンドゥ製だったのかは覚えていませんが、本当に便利です。
小道具の改善
ビニール洗面器
ホテルの部屋で洗濯をする際に、シンクで洗えばいいよね、と一瞬思うのですが、実は意外と面倒です。洗ったものをすすぐ前にどこに置いておくのか、水を切ったあとどこに置くのか、など。洗面器がひとつあれば、洗い物のときに格段に便利そうだなと思っていました。
しかし、洗面器はかさばります。難しいと思っていたところ、空気で膨らまして使うビニール洗面器の存在を知りました。これならばと入手し、持っていくことにしました。楽天で1200円くらいでした。
コンパクト洗濯板
手洗いするときに、いまいちすっきり洗いきれていない感じが嫌で、どうにかしたいと思っていた折、毎週末の趣味のダイソー散策をしているときにコンパクトな洗濯板を見つけたので、買って持っていくことにしました。
速乾タオル
バスタオルが足りないと、洗濯の後にちょっと困るかもと思って速乾タオルを持っていきました。
風呂敷の包み方
毎度おなじみの風呂敷 in 風呂敷 in 風呂敷構造です(詳しくは過去記事を参照ください)。
今回は洋装の関係でリュックサックがあったのですが、リュックサックも風呂敷の中に包みました。
風呂敷階層は以下のような感じです。
唐草風呂敷(180cm角)
PC等、機内持ち込み風呂敷(90cm角)
畳んだ状態の予備の風呂敷
カーテンで作った自作風呂敷(180cm角)
着物類を包む風呂敷(90cm角)
着物類を入れた圧縮袋
ハンガーが入った風呂敷(70cm角)
洗面器具・ケーブル類が入った風呂敷(70cm角)
リュックサック
畳んだ状態の予備の風呂敷
PC等が入った機内持ち込み風呂敷は、空港で荷物をチェックインする直前に取り出します。畳んだ状態の予備の風呂敷が各階層に装備されており、買い物した時とかに必要に応じて使います。
出発の日
前回と同じ泥棒風ファッションです。特筆事項無し。
チェックイン
今回はキャセイパシフィック航空です。前回、ユナイテッド航空のカウンターでは、私の唐草風呂敷は「ビニール袋に包む」という処置を受けたのですが、今回は
風呂敷を段ボール箱に入れる
……という処置を受けました。対応頂いた方によると「タグを付ける場所が無いため」とのことでした。なんか大げさで申し訳ないので、「そこの結び目に通せば付けられますよ」と抗弁してみたのですが、「長距離を移動しますので……」ということで、段ボール箱に入れられてしまいました。風呂敷は変形自在なので、薄い箱にも入れることができました(ちなみにお金とかはかかりませんでした)。
マジックを手渡され、箱にお名前を書いてください、ということだったので、「オグラ」と書き、無事チェックインとなりました。
ゲート入り
チェックイン前に、メインの唐草風呂敷から機内持ち込み用風呂敷を取り出し、「お使い包み」にしてあるその風呂敷を解いた上、「風呂敷バッグ結び」にしなおしてゲート入りに備えました。
飛行場・機内での「風呂敷バッグ結び」は前回からやっているのですが、こうしておくと保安検査等で急にPCやKindleを出し入れしなければいけなくなったときや、飛行機から降りるときに身の回りのものを素早く収納したいときにも楽です。
機内(羽田空港→香港国際空港)
英国人の内気な天才少年が中国人の超天才美少女といちゃいちゃする「X+Y」という映画を鑑賞しながら「おい!少年!羨ましいぞ!」「あっ!こら!お前にはまだ早い!」「天才爆発しろ!」と懐手で握りこぶしを作って脳内でツッコミを入れているうちに香港に到着しました。
前回は機内で「脚絆」を装備しましたが、今回は普通に着流し姿で飛行機に乗りました。帯は片ばさみにしました。フライト時間が短いせいか、特に気温が低すぎることもなく、快適でした。
到着→荷物受け取り
あたり前ですが、僕の間抜けな字で「オグラ」と記名された段ボールがターンテーブルに載ってやってきました。その場で荷解きし、段ボールをゴミ箱に捨てました。資源がもったいない気がしたので、なんとか改善したいと思いました(改善法は後述)。
香港市内へ
当社の他のメンバーと合流し、SIMカードと八達通(オクトパスカード、SUICAに相当するカード)を入手し、Airport Express(成田エクスプレスに相当する乗り物)に乗って香港島へ。空港からAirport Expressのプラットホームには段差も改札口もなく、大変スムーズでした。
気候
8月の香港の気候は、ほぼ想定どおり、8月中旬の東京のような感じで蒸し暑く、東京と同じ服装で自然に過ごせました。ただし、室内の冷房は東京よりもだいぶ強めです。
私達が滞在していた期間は、ずっと曇りでどんよりした天気でした。現地の人は「どんよりしていて風が無いのは今中国から飛来するPM2.5が多い時期だから」と言っていました。
人々の反応
米国では、ジャッキー・チェン、ニンジャ、カラテ、少林寺拳法、CEO(私)の区別がついていないケースが多く見られ、たびたび武闘家扱いを受けてきました。
一方、ここ香港はカンフー映画の本場。武闘家を見分ける眼には当然、一日の長があるはずです。
しかしながら、現地の方は着物姿の人が居ても特に気にしないようで、一切いじられることがなく、武闘家扱いされるのかどうかすらわかりませんでした。私の印象では、通行人に二度見される頻度は
米国>>>>>>>>>>東京=シンガポール>>>>香港
という感じです。むしろ東京より自然体で歩けた気がします。
なぜなのか考えてみたのですが、香港は超が付く国際都市。ホテルの近くにもモスクがありましたし、いろいろな民族衣装を着た人が普通に歩いていました。香港の人は少なくともバイリンガル、だいたいトリリンガルで、普段は広東語を話し、必要なときに英語・北京語を話していました。政治的にも、1987年以降は中華人民共和国の一国二制度の方針の元で人々が暮らしており、そのような背景で、きっと私達よりもずっと多様性慣れ・異民族慣れ・異文化慣れしているのだろうなと理解しました。このグローバル時代においては大きな強みだと思いました。
今回はセミナーで当社の人間がプレゼンをする機会もあり、セミナーに参加したのですが、講師も参加者も広東語と英語を必要に応じて使い分ける感じで、特に、他社のプレゼン中に、一見して西洋人風の参加者が部屋に入ってきた瞬間、スピーカーが広東語から英語にスルっと言葉を切り替え、特に誰も気にしていない様子なのには驚きました(当社は英語でプレゼンしました)。
着物を着ていることについて、アポイント先で無礼だと思われていないか少し気になっていたので、それなりに酔っ払ってから実際どう思うか、ある経営者に訊いてみたのですが「なぜこいつはこんなに礼儀正しいんだ(why are you so polite?)、と一瞬引くけど、ぜんぜん悪い気はしない。大丈夫だよ」と言われました。IT業界限定かもしれませんが。
観光
香港では結構予定がぎっしりで、実質数時間しか観光する時間は無かったのですが、一日目、アポ先を訪問した後、ビクトリア湾で毎日繰り広げられる光のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」を観に行きました。音楽と、湾を取り囲むビルから出るレーザー光が連動して夜景を彩るショーに圧倒されました。ただしクソ暑かったです。
ご飯は朝昼晩、茶餐廳、広東料理、北京料理、飲茶、スイーツなど色々食べましたが、何を食べてもリーズナブルで大変美味しく、本当に大満足でした。噂に聞いていた独特の接客スタイルについては、当初当惑しましたが、すぐに慣れました。美味ければ全てよし。
乗り物はタクシー、MTR(地下鉄)、二階建てバス、トラン(二階建て路面電車)に全て乗りましたが、一番面白かったのは、やはり日本では体験できないトランでしょうか。
トランは独特の細長いフォルムをしており、運賃は日本円にして40円ぐらいと格安です。冷房が無く窓が開いているのですが、二階に上がると気持ちいい風が吹いており、着物だと体中で風がそよぐのを感じられ、大変気持ちがよかったです。
そして僧侶扱い
街角に黒っぽい僧服を着た仏教式と思しき托鉢僧の方がいらっしゃり、着物のようで着物では無いんだな、と思って興味深く見ていると、付近で横断歩道を待っているときに、西洋人と思しき人から声を掛けられました。
Why don’t Buddhist monks work?
なぜ僧侶は働かないんだ?
なんでだろうね、と答えたのですが、話をしているうちに、
You shouldn’t just beg for money. You should work.
金をせびるんじゃなく、働くべきだろう。
と。一応、祈ってるんだよ、と答えましたが、youは、よく英日翻訳で訳出されない一般論のyouではなく、俺のことを指しているようだと気づきました。でなければわざわざ僕に声をかける必要がありません。しかし、僕は僧侶ではないので、完全に言いがかりです(笑)
信号が青になって渡っている間に、とりあえずいちおう、金をせびってるだけじゃなくて、祈っているんだよ、と僧侶を養護してみましたが、
That isn’t Buddhism!
それは仏教ではない!
と反論され、結局議論は平行線でした。
最近、仕事のBGMとしてよく般若心経を聞いているせいなのでしょうか……
ガンダム
宿泊したホテルの最寄りの駅があるタイムズスクエアでは、なぜかガンダム関連の展示が行われており、なんと巨大なガンダムタイプモビルスーツが展示されていました。タイムズスクエアは電車に乗る度に通過するので、結局毎日ガンダムの写真を撮る感じになりました。
一方で、リアルタイムなガンダムがガンダムZな私としては、様々なガンダムが展示されているにも関わらず、香港とゆかりの深いガンダムであるサイコ・ガンダム(MRX-009)の姿が見られないのが残念でした。
しかしたった今、上記のショー「シンフォニー・オブ・ライツ」のビルから出るレーザービームがサイコ・ガンダムの拡散メガ粒子砲によく似ていることに気づき、満足しました。
14階の無い世界
いろいろな先を訪問して回っているうちに、香港のビルに14階が無いことに気づきました。早速Quoraで訊いてみたところ、広東語で「十四」が「実死」(必ず死ぬ)の発音に似ているからなんですって。40階が丸ごと無いこともあるんだとか。各国それぞれの縁起の担ぎ方があって、面白いですね。
深圳
一日、深圳を洋服で訪問しました。事前に、香港に着物着ていこうと思うんだけど、大丈夫かな?と何人かの事情通に聞いたところ、全員が「ぜんぜん大丈夫だと思うよ」という感じだったのですが、深圳については、あまり情報がありませんでした。
そこでQuoraで検索してみたところ、ちょっと変な風に見られるかもしれないけど、ぜんぜん大丈夫だよ、という人がいる一方で、半分ぐらいの人が、やめた方がいいかもね、とか、その時の中日情勢によるね、とかボコられる可能性があるからやめたほうがいいよ、とか回答している状況だったので、だいぶ悩んだ末、今回は洋服で行くことにしました。
行ってみた感想としては、着物だったとして嫌な目に遭う状況はあまり想定できず、大丈夫だったような気もするんですが、華強北の電気街で、めっちゃ狭いパーツ屋街(でも室内)を歩きまわったりもしたので、洋服でまあ結果OKかな、という感じでした。次回は着物で行ってもいいかも。
事前の知識が無かったため、香港と深圳の間は、改札でパスポート確認されるぐらいの感じなのかなと思っていたのですが、まったくそうではなく、書類を提出しての出国手続きと入国手続きがあるような感じで、早い話が「国境」を超えるような感じでした。ここで予定よりもだいぶ時間を使ってしまい、深圳を見て回る時間はほとんどありませんでした。
「国境」の川の上にかかる、屋根と窓に囲まれた橋を渡って入管手続きを終えると、そこは違う通貨が流通し、異なる文字と異なる言葉を使う世界。不思議でした。
部屋での洗濯
部屋洗濯に関しても、これまでと特に異なる点は無いのですが、香港のホテルの部屋が狭く、前回のデンバー出張のようにアイロンやアイロン台を使ったりする余裕も無かったので、今回は洗濯物は部屋に備え付けのタオルと、持参してきた速乾タオルだけで脱水しました。
毎度のごとく、麻襦袢は一晩で乾き切りました。そして毎度のごとく足袋は乾くのに1.5日ぐらいかかりました。
ビニール洗面器は、ちょっとしたことに便利で、かさばらないし、あって大正解でした。全ての旅行者にオススメです。
洗濯板は、気休めだった気もするのですが、よく汚れが落ちたような気がします。
いつも微妙に困るのが干す場所なんですが、タオルで十分脱水すると、水が滴ってくることも無いので、僕は洗面所のドアとかクローゼットのドアとかに引っ掛けて乾かしています。乾かすことを考えると、脱いだ着物に風を通す着物ハンガーとは別に、洗濯物を干すための着物ハンガーが必須だと思います。
帰路:風呂敷の工夫
あっというまに帰る日になってしまいました。当日は最後の訪問先を訪問し、飲茶を食った後、帰路に付きました。キャセイパシフィックだと、空港ではなく、香港駅で荷物をチェックインできます。便利です。
ところで、これまでの数回の風呂敷チェックインの中で、係員の方が私の風呂敷を見てまず必ずおっしゃることがあるのに気づきました。「タグを付ける場所が無い」ということです。
まず「タグを付ける場所が無い」という話からはじまり、そこからいろいろな理由がついて、結局ビニールに包んだり、箱に入れられたりするのです。箱やビニールを結局到着地で捨てることになることがもったいないので、どうにかしたいところです。
もしかして係員の方が恐れているのは、不安定に取りつけられたタグが取れてしまうことなのだろうか?と思い、今回は、意図的にタグを付ける場所を作る工夫をしてみました。
上の図のように、普通に対角同士をギュッと真結びした後、外側になっている結び目をループ状にして真結びして、あからさまな輪っかを作ってみました。
チェックイン時にこの輪っかを強くアピールし、タグはここに付けてくれよ!と先手を打ってお願いしたところ、ああ、そこに付けるのね、という感じで、ありのままで受け入れていただけました。
そして羽田では普通にターンテーブルから出てきました。
そしてまさかの僧侶扱い
羽田の税関では、なんか厳しい時期みたいで、みんな止められていました。私も止められ、「風呂敷の中身を見せていただいてもいいですか?」と言われたので、私の風呂敷 in 風呂敷を解いていると、
「お仕事ですか?」「何日ぐらい滞在されましたか?」
と訊かれました。普通です。そして、着物をチェックしつつ、
「こちらは、お仕事で使われる衣類ですね」
…と確認がはじまりました。普通です。
しかし、最後に洗面器具が入っている風呂敷を指差し、
「こちらは、お仕事の道具、お経とかですね?」
と尋ねられました。
「いいえ、洗面器具です!」
とにっこり答えました。ネタが少なめの出張だったので、最後の最後にネタを提供していただき、ありがたかったです。
まとめ
・香港の人たちはsuper open-minded
・着物の男性は西洋では武闘家扱い、東洋では僧侶扱い