コトが起きない要因から、生き心地の良さを見出す

江口晋太朗 | SHINTARO Eguchi
The Living Library
Published in
2 min readAug 12, 2017

自殺する傾向ではなく、自殺“しない”傾向を探すー岡檀さんが導き出したのは、「自殺希少地域」としてのまちのあり方でした。

学問における調査研究では、何かコトが起きたことについて調査を行うことが一般的です。しかし、何かコトが起きるということは、コトが起きないことにも原因もあるはず、そう考えた岡さんは、全国でも自殺率が極めて低い「自殺希少地域」である徳島県南部の小さな町、海部町を調査することに。自殺率の低さにコミュニティや住民の気質に特徴があると考え、4年間にわたる現地調査をもとにデータ解析やフィールドワークを行い、5つの自殺予防因子があることを導き出しました。

「病、市に出せ」、他者との関係は「疎で多」、「困っている人がいたら、今、即、助ける。助けることができなければ、誰かに相談し、問題が解決するまで関わること」。まちの特徴を紐解きながら、「生き心地のいい町」を浮き彫りにしていきます。

「コミュニティ」という言葉は、世間一般的に広がってきましたなか、誰もが生き心地のよい地域とするために必要な考え方、振る舞い方とはなにか。他者へのまなざし、他者との関わり方。自分のあり方について考える一冊かもしれません。

また、岡さんの著書をもとに、ホームレスや被災者の支援活動などを行っている精神科医の森川すいめいさんが、全国5か所の「自殺希少地域」を訪れたルポも読み応えがあります。当事者に寄り添いながら、まちの人々との何気ない会話の節々から、そのまちの居心地の良さについてまとめあげています。こちらもあわせてどうぞ。

--

--