Maker Faire Seoul 2023に行ってきました:3日目・4日目 ソウル市立科学館で展示

Takuya Ichise
TAKUYA ICHISE
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12 min readNov 20, 2023

旅行の3日目と4日目は、Maker Faire Seoul 2023で展示を行いました。展示初日の夜には、漢江に浮かぶ水上複合文化空間「セビッソム」を訪れる機会がありました。

Maker Faire Seoul 2023について

2023年10月8日(日)から9日(月)までの2日間、午前10時から午後5時まで「Maker Faire Seoul 2023」が開催されました。私は同僚の Yuta Kurotakiと会場で合流し、共同で出展しました。

「Maker Faire Seoul 2023」は創作の楽しさを共有するイベントで、世界各地で開催されるMaker Faireのひとつです。2012年に国内で初めて開催され、メーカームーブメントを紹介しました。パンデミック前の最後のイベントである2019年の第8回は、国内最大のメーカー行事として、700人以上のMakerが150以上のプロジェクトを展示し、1万6千人以上の観客が訪れました。今年は第9回目の開催で、合計56チームが出展しました。

会場

会場のソウル市立科学館は、韓国ソウル特別市に位置する公共の科学館です。2019年はワールドカップ競技場駅近くの文化備蓄基地で行われました。

アクセス方法

最寄り駅の下渓駅からは徒歩でアクセス可能です。このエリアは坂が多く、ソウルの特徴として、少し坂を登ると美しい景観が広がる場所が多いです。このエリアも坂を登ると、山が見えてました。下渓駅周辺には、朝9時には開店していないスーパーやマクドナルドがありますが、駅から会場への途中にはコンビニエンスストアも点在しています。

出展申請

出展には内部審査があり、限られた展示スペースのため、全ての申請者が参加できるわけではありませんでした。

私は一般メイカーとして応募しました。本来は1テーブルでの申請でしたが、なぜか2テーブルが用意されていたため、2人でそれぞれ1テーブルを使用しました。

出展の分類は以下の通り

一般(個人)メイカー:無料

  • 趣味の工学者、アーティスト、技術者など個人またはグループ向け
  • 提供内容:展示スペース(2100x2100mm)、テーブル1台(1800x750mm)、椅子2脚、コンセント2口

コマーシャル(スタートアップ)メイカー:220,000ウォン(VAT含む)

  • 自作の商品を販売する個人またはグループ
  • 2017年以降の事業登録、5人以下のスタートアップ企業対象(商品販売および広報可)
  • 提供内容:展示スペース(2100x2100mm)、テーブル1台(1800x750mm)、椅子2脚、コンセント2口

企業(メイカー・スペース)メイカー:550,000ウォン(VAT含む)

  • スタートアップ条件に該当しない企業
  • makeallに登録されたメイカー・スペース
  • 提供内容:展示スペース(5000x2500mm)、テーブル2台(1800x750mm)、椅子4脚、コンセント4口

スポンサー企業:別途案内

  • 広い展示スペースが必要な企業や、メイカー・フェアのスポンサー希望企業

物品保管

会場内に保管される個人物品に関しては、1日目の終了後にモンゴルテントでカバーをかけて保管されました。この方法で、物品の安全を確保しました。ただし、貴重品については安全のために持ち帰ることを選びました。

食事とお土産

Makerへのお土産として、厚めの生地のTシャツ、エコバッグ、ステッカー、ペン、書類ケース、プロジェクト説明シートなどが提供されました。海外のMaker Faireではお土産が配られることが多いですが、ソウルのお土産の数は過去最高でした。

食事に関しては、2日間とも昼食が提供されました。事前に「軽食」と聞いていたため、念のためにコンビニで買ったパンを用意していましたが、提供された食事は想像以上にボリュームがありました。さらに、おやつもたくさん提供され、食べきれないほどの量がありました。このような心配りが、展示の活力になりました。

タイムテーブル:

10月8日(日)

  • 9:00~10:00: メーカーチェックイン
  • 10:30: グループ写真、10:40: オープニングパフォーマンス
  • 11:00~17:00: 展示(1日目)
  • 18:00~21:00: 展示仕上げと撤退、参加者団体写真撮影

10月9日(月)

  • 9:00~10:00: 展示準備、10:30: グループ写真、10:40: オープニングパフォーマンス
  • 11:00~17:00: 展示(2日目)
  • 18:00~21:00: 展示仕上げと撤退

展示の初日の夜には「メーカー交流会」が開催され、ご当地ビールやキンパ、ピザ、ヤムニョンチキンなどが振舞われました。この交流会はメーカー間の親睦を深めるイベントであり、忘年会のような和気藹々とした雰囲気が漂っていました。以前にマニラでのMaker交流会が非常に良かった経験がありますが、今回のソウルでの交流会もそのホスピタリティに劣らず素晴らしかったです。

ドローンを使ったグループ写真撮影

運営スタッフ

イベントの運営スタッフとメーカーとの間には良好な関係があり、その仲の良さがイベント全体の印象に大きく寄与しました。スタッフとメーカーが和気藹々と話しながら準備や運営を進める様子は、メイクイベントに慣れた運営チームの印象を強く与えました。

日本語を話せるスタッフが数名おり、彼らの存在は言語の壁を感じさせないスムーズなコミュニケーションを実現していました。さらに、運営スタッフは頻繁に各ブースを訪れ、何か困っていることがないかを確認してくれるなど、参加者のサポートにも熱心でした。

特に印象的だったのは、私が床展示を希望していたにも関わらず、会場の路面が穴だらけで床展示が難しい状況だったことです。この問題を運営に伝えたところ、彼らは迅速に対応して大きな段ボールを用意してくれました。このような細やかな対応は、運営チームの柔軟性と参加者への深い配慮を示しており、大変感謝しています。

客層

今回のイベントでは、ファミリー層の来場者が特に多かったのが印象的です。会場が駅から少し離れた場所にありましたが、それにも関わらず多くのお客様が来場されました。このような来場者の動向は、イベントの家族向けの魅力が高いことを示しています。

展示物の特徴

出展数は56チームでしたが、展示の質やブースの熱量により、物足りなさは全く感じませんでした。展示物はバランスが取れており、世界の他のMaker Faireと比較しても特定のジャンルに偏ることが少なかったのが印象的でした。例えば、日本のMaker Faireでは小規模なエレクトロニクスやロボットが多いですが、韓国ではロボットやデジタルファブリケーション、ミュージックなどがバランスよく配置されてました。これは、ソウル市がスポンサーであるため、スポンサーの意向に左右されず、多様なメーカーが自由に活動できる環境があるためかもしれません。

各国のMaker Faireの特徴を見ると、台湾は3Dプリンタやレーザーカッターが、フィリピンは民族系クラフトが、タイはモーターが、中国はSTEAMとマイコンが、アメリカは車改造系が、シンガポールはヤングメイカーが、チェコはPRUSAが目立つと感じます。

ソウルのMaker Faireでは、特定のマイコンや3Dプリンタに焦点を当てるよりも、解決したい課題を優先し、そのための手段として技術を活用している様子が見受けられました。メーカーたちは、愛好家集団としてではなく、具体的な課題解決を目指しているようでした。

私は、Maker Faireの魅力は、作る行為を身近なものにし、作り方や中身を隠さずに分かりやすく説明することにあると考えています。自分が作りたいものを作り、それを細かく分解して説明することが大切です。これは、来場者に作品を理解してもらうための根気を要求する日本のMaker Faireとは異なり、ソウルのMaker Faireではその本来の魅力がより強く伝わってきました。これは日本のメーカーやMaker Faire運営者にも見てもらいたいポイントだと思います。

私の展示内容:「omicro balloid」と「omicro」

私のブースでは、「omicro」と「omicro balloid」という2つのプロジェクトを展示しましたが、今回はいくつかの困難に直面しました。

omicro」は自走式の球体型ロボットで、スマートフォンやタブレット、Apple Watchを通じて操作されます。これまで、床上での移動展示を多く行ってきましたが、今回の会場の地面は穴だらけで、床上で動かすとomicroが穴にはまる問題が発生しました。この問題を解決するため、2日目の朝に運営スタッフから提供された段ボールの上に持参したシートを敷いて展示を行いました。また、わずかに雨が降ったため、隣のブースを参考に机を縦に配置したところ、これが非常に効果的でした。

omicro balloid」は、複合現実と自律型AI技術を活用したマルチエージェントシステムです。このプロジェクトでは、iPadアプリをコントローラとして使用し、omicroを制御します。通常、球体型ロボットと複合現実空間上のゲームAIが連携して動作しますが、今回の屋外展示会場では強い光の影響でomicro balloidのロボット検出機能が正常に働かず、困難に直面しました。この問題を解決するため、ロボット検出機能を使用せずに、AR積み木としてアプリを展示しましたが、このシンプルな展示方法が意外にもお客様の反応が良く、普段とは異なる肯定的な結果をもたらしました。

変則的な展示にも関わらず、お客様に楽しんでいただけたことは大変嬉しく、このイベントでの重要な収穫となりました。

自分の展示と反省: Maker Faire Seoul 2023 KPT

Keep

  • AR展示と球体型ロボットの展示: 独立して行ったこれらの展示は成功でした。異なる2作品として展示し、訪問者の関心を引くことができました。
  • 雨中の屋外展示: 台北以来の屋外展示で、レインジャケットを持参したのは正解でした。
  • 床展示: 初日に床展示ができなかったため、運営に依頼してダンボールを確保し、床に敷くことができました。
  • 展示の配置: 机を縦に配置してテントの中で展示し、これが非常に効果的でした。
  • アプリの安定性: iOSアプリが修正により安定し、問題が解消されました。watchOSアプリも同様に良好でした。
  • ARアプリと球体型ロボットの連携: 興味を持った企業からの連絡があり、成功を収めました。
  • 展示の多様性: ARメインでの展示は成功し、ハードウェアに依存しない展示の可能性を確認できました。
  • インタラクティブ要素: キューブと犬の展示は、来場者に触ってもらいながら進行し、好評でした。

Problem

  • 屋外展示の問題: 明るすぎてOpenCVの2値化色検出が動かなかったり、画面が白飛びする問題がありました。
  • 安定性の問題: 球体型ロボットの2号機が不安定で、展示エリアの床面の問題もありました。
  • インターフェースの問題: UIが見づらく、操作が分かりづらい点があった。

Try

  • オブジェクト検出処理の変更: 会場でCoreMLを用いた物体検出が機能したので、オブジェクト検出処理の実装方法を変更する予定です。
  • 製品改善: ミニホイールを既製品に戻す、ARアプリのUIを見やすくする、球体型ロボットへの改良などを検討しています。
  • 展示改善: 屋外展示用の軽量で強度のある床材の準備、AR展示用の三脚説明書の用意、ブースの自動説明システムの導入などを計画しています。

水上複合文化空間「セビッソム」

展示初日の夜、日本のMaker Faireでもお馴染みのTaewon Kangさんに案内していただき、漢江に浮かぶ水上複合文化空間「セビッソム」を訪れました。

最後に

このイベントを通じて、Maker Faireの真髄を再確認することができました。それは、技術と創造性を活かして新しいものを作り出す喜びを共有し、それを広く伝えることにあります。また、会場の運営スタッフとの良好な関係、多様な参加者層、特にファミリー層の参加がイベントの魅力を高めていました。これらの経験は、私たちの創造活動に新たなインスピレーションを与え、今後の展示活動に生かされることでしょう。

5日目に続きます。

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Takuya Ichise
TAKUYA ICHISE

🗻Engineer, Maker 🎥http://youtube.com/@tichise