非エンジニアの Designer が Autoware トレーニングプログラムを受講してみた

bookslope
TIER IV MEDIA
10 min readAug 25, 2023

--

Autoware 実車研修プログラム

こんにちは。ティアフォー Design Team の坂本です。今回、同じ Design Team の江田さんと、ティアフォーが開発・主導するソフトウェア「Autoware」のトレーニングプログラムを体験してきました。

このプログラムは通常エンジニアを対象にしていますが、ティアフォーのプロダクトをよりユーザーフレンドリーなデザインにしていくため、私たち Designer も参加することになりました。エンジニアの多いティアフォーにおいて、非エンジニアである Designer の視点でその体験を振り返ります。

Autoware とは、自動運転向けのオープンソースソフトウェアです。これは Linux の OS の一つである「Ubuntu」(広く利用されているオープンソースのオペレーティングシステム)と、ロボット開発に利用される「ROS(Robot Operating System)」(ロボット制御のためのフレームワーク)をベースにしたものです。このソフトウェアを用いたトレーニングプログラムは、一般向けにも公表しており「自動運転システム構築完全講座」として法人からでも受講することができます。

Terminal での操作画面

それでは、それぞれの感想を振り返っていきましょう。

Q1. Autoware のイメージは? 実際に触る前と触ったあとの印象の違いなどはありましたか?

江田
研修の前はまさに「ブラックボックス」のイメージを持っていて、「すごい計算処理によって外の世界を認識して車を制御しているというもの」という程度の理解度でした。

研修を終えて、非エンジニアの私でもイメージとして5段階中のレベル1くらいまで理解できました。「外界を認識するためにどういった処理が必要か」「走行するルートはどういった仕組みで構築されるか」といった Autoware の構造が理解できるようになり、エンジニアメンバーとも技術に関する会話がしやすくなりました。

坂本
もともと「自動運転 OS」という言葉で知ってはいたので、運転に関するいろいろな操作が AI を使って簡単にできるというイメージを持っていましたが、実際には、一つずつ細かい設定を手動でしていかないといけないような複雑な機能の集合体というイメージです。

Q2. Linux と ROS を触ってみた感想はいかがですか?

江田
Linux の操作については RaspberryPi(ARM プロセッサを搭載したシングルボードコンピュータ)を扱っていた経験が少しあったのでそこまで抵抗はなかったです。

ただ、普段は GUI しか触れていないので、コマンド操作は自分のアクションの仕方やフィードバックが見えにくいところが難しかったです。

坂本
普段は macOS を使っているので、Linux OS「Ubuntu」を触ったことはありませんでしたが、幸い Unix コマンドで実務をしていた過去があったのでコマンド入力は懐かしく、ROS(Robot Operating System)を利用することにも抵抗はありませんでした。

自動運転に必要な機能のいくつかは、ビューアーとなるツールが存在するのですが、各ツールでの設定の多くがマップやセンサーなどの個別のデータを読み込んだうえで調整していきます。説明はわかりやすい反面、必要なデータと必要な設定が頭の中でつながらないので、復習しないと理解が追いつきませんでした。

Q3. 受講して良かったところはありますか?

江田
前職は自動車系ではなかったので自動車の歴史や車種、構造から学べたのはよかったです。また、受講前は Autoware の理解が少ないためにエンジニアメンバーとの共通言語がなく技術に関する会話をしにくいという状態でしたが、研修のおかげで気になる機能や技術的な課題をエンジニアメンバーに質問できるようになったと感じました。

坂本
画面投影をしながら解説いただく講義パートと、自分が手を動かす演習パートとが分かれていたので、何度も教材データ(録画されたもの)を行き来しながら見れて復習がしやすかったです。専門知識がない私にとっては、資料を見るよりも実際に講師の手元の画面を追いながらシャドーイングしていくほうが身につきやすかったので助かりました。

Q4. 受講して課題だと感じたところはありますか?

江田
実際に自動運転を実装する上での試行錯誤のプロセスを体験することが重要だと思うので、非エンジニア向けの内容でも自動運転のシミュレーションで簡単な課題を解決するような演習があると嬉しいと思いました。

坂本
大部屋で受講するリアルのセミナーではなく、リモート環境で一人で受講するため、つまづいたときに相談する相手がほしかったです。よくある質問(FAQ)のようなものがあると安心できたようにおもいます。あと、解説時にスルーするような細かい設定の違いが期待する結果が得られない場合があったので、設定画面はキャプチャしていただくなど、再現しやすい教材がるといいとおもいました。

Q5. 業務に活かすことができそうですか?

江田
我々 Designer は表面的なビジュアルだけでなく、作る人や使う人など関係者全体を俯瞰して最適なプロダクトやソリューションのあるべき姿をデザインするので、ティアフォーのコアでもある Autoware を理解することはとても重要な活動です。今回の Autoware 研修によって得られた知識を使うことで Web.AutoPiloto.Auto の個別のプロダクトにおける課題解決に貢献できると考えています。

坂本
もちろんできます。実際の Autoware の最新バージョンは、受講した際の初期バージョンよりもいくつか自動化されているため、受講時に細かな設定や入力をした経験が、根本的な部分でのソフトウェアの理解に役立ちます。

また、デザインという点では、ソフトウェアの使いやすさやアクセシビリティを考慮していく取り組みになるため、今回のトレーニングで学んだことや課題がそのまま実装に対してよりよい提案に結びついていくことが期待できます。

Q6. 実車での研修を終えてみてどうでしたか?

江田
実車研修の認定試験に見学者として参加させてもらいました。

基本的には自動運転タクシーでの実験手順を受験者と一緒に確認し、自動運転の制御のパートでは後部座席に乗せてもらい実際の自動運転走行での手動と自動の切り替えなどを体験しました。たまたま前日に自動運転バスにも試乗させてもらっていたので自動運転タクシーとの比較ができて面白かったです。

特にセンサーやソフトの違いによる制御の仕方や乗り心地の違いなどが分かり、車種や ODD(Operational Design Domain の略で「運行設計領域」を指す)の違いが深く理解できました。また、制御画面の UI なども詳しく見れたので、今後の ユーザビリティの改善にも繋げられる良い体験ができました。

坂本
東大柏キャンパスにある実験フィールドで、実車研修に参加しました。

車両まわりの構成から事前の点検方法、Autoware の立ち上げからコースでの自動走行まで、実際に操作こそしませんでしたが、その方法や操作を細かく体験することができました。研修後半には、オーバーライドのトレーニングやトラブルシューティングなどを体験し、現場で起こる問題の切り分け方や復帰方法などを教わりました。

免許制ではないらしいのですが、実車トレーニングを受けたことで、自分でも自動運転車が操作できるようになりたいとおもいました。

まとめ

今回、非エンジニアの Designer 2名が本プログラムを受講したことで、これまでにはない気づきが得られました。

  • 自動車の歴史から座学を学べたことで、どういうデータが揃うと自動運転ができるのか仕組みから理解ができた。
  • どういうソフトウェア(機能)で、自動運転を制御しているのか理解できた。
  • 実現したいことを理解できたため、エンジニアとの共通言語ができた(コミュニケーションがしやすくなった)
  • 実車を制御するうえで、ドライバーをサポートするソフトウェアの課題が発見できた(自動車 HMI や利用状況の理解ができた)
  • ソフトウェアがエンジニア向けに特化しているため、非エンジニアに展開していくうえで課題が発見できた(さらに使いやすくできることがわかった)

今後、ますますティアフォーのプロダクトがユーザーフレンドリーになっていくことにご期待ください。この TECH BLOG でもご報告していければと思います。

実車研修をご一緒したティアフォーのスタッフ

プロフィール

江田直紀
ティアフォー Design Team の江田です。学生時代に工業デザインとサービスデザインを学び、新卒入社で BtoB の重工業メーカーに約10年間勤務したのちティアフォーに参画しました。前職では船舶などの操縦システムや自律移動機械の管制ナビゲーションシステムといった BtoB のデジタルプロダクトの UI デザインや企画、設計に関わってきました。業界は異なりますが自動運転システムとの親和性も強く感じています。これからティアフォーのプロダクト開発に関われるのが楽しみです。

坂本貴史
ティアフォー Design Team の坂本です。もともとグラフィックデザイナーでしたが、その後、Web をはじめデジタルプロダクトの情報アーキテクチャやクリエイティブ全般に関わり、日産自動車では次世代 EV の HMI にも関わっています。MaaS などのサービスデザインや事業開発を支援するコンサルタントとしての経験もあります。

今回、2人が受講したトレーニングプログラムは、どなたでも受講ができますので、興味ある方はぜひ TIER IV アカデミーの「自動運転システム構築完全講座」からお申し込みください。

ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。

キャリアページ:https://careers.tier4.jp/

Contact

  • For press, community and speaking requests, contact pr@tier4.jp.
  • For business opportunities and partnership, contact sales@tier4.jp.

Social Media
Twitter | LinkedIn | Facebook | Instagram | YouTube

More

--

--

bookslope
TIER IV MEDIA

Design at TIER IV, designing for Software-Defined Autonomous Mobility.