Edge.Auto 車載HDRカメラの解説

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1 day ago

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ティアフォーEdge.Autoチームの本橋裕一です。自動運転向けのハードウェアプラットフォーム、特に車載HDRカメラ(以下「カメラ」)の開発とお客様とのコミュニケーションを担当しています。今月からティアフォーが開発、提供しているカメラについてのブログをシリーズで公開します。

第1回目は、ティアフォーのカメラの紹介、ティアフォーがカメラ開発に取り組む理由、そしてデジタルカメラと車載カメラシステムの概要について解説します。

ティアフォーのカメラの紹介

「ティアフォーは自動運転ソフトウェアを開発している会社なのに、なぜカメラを作っているの?」と思われる方も多いと思います。ティアフォーは自動運転用のオープンソースソフトウェアのAutowareを基盤としたソフトウェアの開発に強みを持っていますが、私たちが提供するプロダクトは自動運転ソフトウェアだけではありません。

ティアフォーには、3つのプロダクトがあります。

  • Web.Auto:クラウドを活用した自動運転システムの開発運用プラットフォーム
  • Pilot.Auto:拡張可能な自動運転ソフトウェアプラットフォーム
  • Edge.Auto:センサーやコンピューターとソフトウェアツールを組み合わせたリファレンスプラットフォーム

今回紹介するEdge.Autoは、自動運転車両をはじめとした、高い品質が要求される自律移動体の開発におけるセンサー類やコンピューター、ハードウェアの選定という課題を解決するためのプロダクトプラットフォームです。現在、以下のプロダクトを提供しています。

Edge.Autoのセンサーフュージョン開発キット

Edge.Autoプラットフォームでは、自動運転開発に限らず、建機・農機・物流ロボット、バス、トラック、無人搬送車両(Automated Guided Vehicle:AGV)、自律移動ロボット(Autonomous Mobile Robots:AMR)という様々な移動体の開発に共通する課題に対するソリューションを展開しています。その中でも、私たちが最初に取り組んだのが自社製カメラの開発です。

自動運転車両はLiDAR、レーダー、カメラといった「眼:センサー類」から取り込んだ情報を「脳:Electric Control Unit(ECU)」で処理し、「手・足:アクセルやブレーキ」を制御します。人間が目を瞑って車を運転できないように、自動運転には高性能なセンサーが必要です。中でも、カメラは比較的低コストでありながら、空間密度の高い情報を取得できます。また、他のセンサーからは得られない色情報も取得できるため、自動運転車両には不可欠なセンサーとなっています。

しかしながら、大手自動車メーカーが採用しているカメラはティアフォーの数量規模では入手することができません。一方で、市場で入手可能な産業用途のカメラは、ティアフォーが求める品質と信頼性の確保が困難です。そこでティアフォーは自社でのカメラの開発を企画し、2021年より製造パートナーと連携してオリジナルカメラの開発を始めました。

ティアフォーのカメラのポジショニング

2024年7月時点で「C1カメラ」と「C2カメラ」の2製品を提供しており、新機種として8.3MPの解像度をもつ「C3カメラ」の開発も進行中です。「C」はCameraを意味します。ティアフォーのカメラは、自社の自動運転車両への搭載だけでなく、前述のような課題を持つ顧客をはじめ、自動運転・先進運転支援システム(ADAS)の研究開発を行う企業や大学、研究機関などで既に幅広く採用されています。

ティアフォーが開発するC3カメラ

デジタルカメラと車載カメラシステムの概要

デジタルカメラとは、光の情報をデジタルデータとして記録することができるデバイスです。デジタルカメラを実世界とデジタル世界のインターフェースとなるデバイスと捉えることもできるでしょう。デジタルカメラの用途は非常に幅広く、以下に一例を示します。

  • スマートフォン(近年スマートフォンベンダーではカメラの画質向上が主な訴求要素)
  • デジタル一眼レフ・ミラーレスカメラ
  • アクションカム・Vlog用カメラ
  • ドローン(高画質なカメラが搭載)
  • 医療用カメラ(内視鏡・遠隔手術システムに活用)
  • 放送番組制作用ハイエンドカメラ
  • 防犯・監視カメラ
  • 工程内検査装置用カメラ

デジタルカメラの中核部品はイメージセンサーと呼ばれる撮像素子であり、フィルムカメラのフィルムに相当します。

イメージセンサーはレンズを介して入射した光を電気信号(電圧・電流)に変換し、さらにデジタルデータに変換します。イメージセンサーの方式は、かつてはCCDイメージセンサーが主流でしたが、近年はほぼ全てCMOSイメージセンサーが採用されています。CMOSイメージセンサーの内部構造や動作の詳細については今後の連載で紹介します。

もう1つの中核部品が、Image Signal Processor(ISP)です。ISPはイメージセンサーから出力されるありのままの画像データに各種の画像処理を行い、きれいにする役割を持っています。すっぴんのデータにお化粧をするイメージです。

ISPで各種の画像処理が行われた後の画像データは、ディスプレイに表示されたり、コンピュータービジョンに入力されたりします。信号の流れは、以下の通りです。

イメージセンサー

ISP

画像表示ECU、コンピュータービジョン用ECU(ティアフォーではPerception ECUと呼んでいます)

自動運転車両をはじめとする自律移動体に搭載されるカメラシステムの場合、前述のイメージセンサー、ISPおよびECUの物理的な配置は、車両全体のアーキテクチャ設計から決定されます。例えば、Surround Viewing Monitor(SVM)システムでは、カメラは以下のように離れた位置に実装されます。

  • フロントバンパー付近
  • サイドミラー(左右)
  • リアバンパー付近

画像処理や表示を行うECUは車両中央部付近に配置されているのが一般的です。このようにそれぞれのコンポーネントが物理的に離れた位置に配置されている場合、広帯域な信号を長距離伝送する必要が生じます。

SVMシステムのカメラとECUの配置例

上記の課題を解決する技術として、現在車載向けに広く用いられているのがSerDes(Serializer/Deserialzier)と呼ばれる技術です。この技術を使うと、広帯域な画像データの伝送と電源の供給、各種の制御信号の通信を1本のケーブルを介して行うことができます。SerDes技術の主なサプライヤーは以下の通りです。

  • Analog Devices(Gigabit Multimedia Serial Link:GMSL)
  • Texas Instruments(Flat Panel Display Link:FPD-LINK)
  • Sony(Gigabit Video InterFace:GVIF)

ティアフォーのカメラではAnalog Devices社のGMSL2を全機種に採用しています。このようなカメラのインターフェース技術についても、今後の連載で紹介します。

今回は、ティアフォーのカメラの紹介、ティアフォーがカメラ開発に取り組む理由、デジタルカメラと車載カメラシステムの概要について解説しました。次回は、近年のイメージセンサーの内部構造や動作の概略について解説する予定です。

ティアフォーのカメラを評価してみたい場合は、Amazonのティアフォーストアでご購入いただけます。ご質問などある方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。

Yuichi Motohashi | 本橋 裕一
Edge.Autoチーム

2023年よりEdge.Autoチームでカメラと開発キットを担当。前職では車載用CMOSイメージセンサーの企画・開発・製品化および欧米のOEM・Tier 1への導入に10年以上従事。専門は車載用CMOSイメージセンサ(画素/HDR方式・機能安全・サイバーセキュリティ・信頼性)及び車載カメラシステム。

ティアフォーでは、「自動運転の民主化」というビジョンに共感を持ち、自らそれを実現する意欲に満ち溢れた新しい仲間を募集しています。

今回のチームで募集中の職種

その他にも多くの職種で採用をしています。詳細は、ティアフォーの「求人ページ」をご覧ください。

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