UXデザインの成果を最大化するためには
こんにちは。UXデザイナーの浅沼です。
今回は、10月29日にTigerspike 東京オフィスで行いましたUX meetupのテーマ「UXデザインの成果を最大化するためには」について書きたいと思います。
東京オフィスでのUX meetupの実施は今回が2度目。初めてのUX meetupでは、TigerspikeのUXデザインプロセスと事例についてご紹介し、参加者の方々とディスカッションや意見交換を行いました。そのなかで、UXデザインに携わる方々と話をさせていただくと、UXデザインのプロセスやツールに対する話題よりも、「UXデザインを推進しているが、思うような結果が出ない」、「UXデザイナーはいるが、組織のなかで機能しない」といったプロジェクトや組織に関わる課題について話を多く伺いました。
そこで、第2回となるUX meetupでは「UXデザインの成果を最大化するためには」というテーマを設け、Tigerspikeがプロジェクト推進や組織づくりにおいて大切にしていることや実践していることを中心に、以下の6つの視点にまとめて話をさせていただきました。
1. クライアント業務の視点
クライアントは依頼主でなくパートナーである
2. ソリューション創出の視点
制約にとらわれることなくベストな解を提案する
3. プロジェクト管理の視点
プロジェクト内での役割が明確である
4. チーム構成の視点
UXメンバーに多様性がある
5. デザインアプローチの視点
UXとTechの距離が近い
6. 社内カルチャーの視点
会社がUXの価値を信じている
1. クライアントは依頼主でなくパートナーである
クライアント業務では、どうしても業務を依頼する側と依頼される側という二分された関係性になりがちです。この場合、クライアントの意図や考えを常に推測しながらプロジェクトを進めることになります。
Tigerspikeでは、クライアントとパートナーという立場で、クライアントと一緒に課題解決に取り組むことを大事にしています。具体的には、プロジェクトの最初にクライアントとワークショップを行いプロジェクトに関わる顕在ならびに潜在情報をプロジェクトメンバー全員で共有します。また、継続的にユーザー体験設計の支援を行うクライアントパートナーシップも開始し、クライアントと協働し複数のプロジェクトを推進しています。
パートナーという関係性を構築し、クライアントと同じ目線で課題解決に取り組むことにより、クライアントが抱える真の課題や暗黙的な制約を理解することができます。これにより、クライアントの戦略に立脚したユーザー体験を設計することができます。
2. 制約にとらわれることなくベストな解を提案する
プロジェクトの多くは、ビジネスや技術の制約がつきものです。しかし、プロジェクト開始時の前提や制約のなかには、プロジェクトメンバーの思い込みが多く含まれている場合が少なくありません。
Tigerspikeでは、まずそれらの前提や制約を疑うことから始めます。ユーザーの要望や行動を決めつけていないか。本当にデジタルだけで解決すべきものなのか。アプリにすることを目的にしていないか。何事も主観だけで決めつけず客観的な視点を持ってプロジェクトに参画します。実際に、前提条件に疑問を持ったUXデザイナーがユーザー調査を提案してユーザーの声を聞いた結果、前提条件が覆り、プロジェクトの対象範囲を変更した事例もあります。
与えられた前提や制約を検証し、本来取り組むべき課題を明らかにすることにより、最終的にユーザーにとってもビジネネスにとってもベストな解を創出することができます。
3. プロジェクト内での役割が明確である
プロジェクトが始まると、なぜかUXデザイナーがユーザー体験設計に直接関わる業務だけでなく、クライアントとプロジェクトの調整業務まで行なっているという話をよく耳にします。
Tigerspikeでは、プロジェクトメンバーの業務範囲や裁量を明確に定義し、開発責任者、プロジェクトマネージャー、UXデザイナー、UIデザイナー、エンジニアという職務に分かれてプロジェクトを推進します。UXデザイナーは、ユーザー課題の解明やソリューションの可視化などユーザー体験設計に関わるアウトプット創出に専念します。ですので、プロジェクトにおいて、UXデザイナーがそれ以外の業務、例えばクライアントとの予定調整や会議の議事録作成などに時間を割くことはありません。
UXデザイナーをはじめプロジェクトメンバーの役割と裁量を明確に定義することにより、UXデザイナーのリソース不足によるアウトプットの質の低下やプロジェクトの遅延といったトラブルを回避することができます。
4. UXデザインチームに多様性がある
UXデザインのプロジェクトは、金融、保険、小売、運輸、製造など様々な業界において、新規事業コンセプトからアプリ開発まで様々なフェーズを対象に行われます。
TigerspikeのUXデザインチームは、広告代理店、ビジネスコンサルティング、ITソフトウェア企業、大手メーカー、Startupなど多様な職歴や経験を持ったメンバーから構成されます。また、海外での就学、実務経験者も多く在籍しています。会社としても、東京オフィスを含め欧米とアジアに9ヶ所のグローバルオフィス拠点を持ち、メンバーも40以上の国籍から構成されます。
会社組織を含めUXデザインチームに多様性を持たせることにより、様々なプロジェクトに柔軟に対応することが可能になるだけでなく、多面的な視点やアプローチからUXデザインを推進することができます。
5. UXとTechの距離が近い
プロジェクトにおいて、素晴らしいUXのコンセプトを構想して開発直前まで進んだものの、技術的な問題で実現できずに、再度コンセプトから検討し直すといった話をよく聞きます。
Tigerspikeでは、UXチームとTechチームが一緒になってプロジェクトに取り組みます。要件確定後の開発段階だけでなく、要件が固まる前のコンセプト構想段階においてもTechメンバーがプロジェクトに参画し、技術要件の確認や技術的な実現性の検討を行い、プロジェクト内でレビューを実施します。
プロジェクトの初期段階からUXチームとTechチームが連携しプロジェクに参画することにより、技術的な実現性を担保したうえで、実現可能なユーザー体験を提案することができます。また、新技術の活用可能性を早期に検討することで、UXデザイナーが技術起点で新たなユーザー体験の着想を得ることもできます。
6. UXの価値を信じている
UXデザインの理解の深さは、会社の理念や働く環境にも反映されます。
Tigerspikeでは、会社での日々の業務体験を大切にしています。Tigerspikeらしい社内文化の醸成やチームの構築のために多くの活動を行っています。例えば、毎日11時にメンバー全員でプランクという軽いエクササイズ、毎週金曜日の5時から社内でゲームをしながらの飲み会、隔週金曜日に持ち回りでメンバー全員のランチを作る、といった活動を行っています。これらの活動が形骸化しないように、これらの活動を取りまとめるオフィスマネージャーが中心となって、社内で議論しながら活動内容を決めています。また、マネジメント側が、担当者が週1日をこのようなチームビルディングの活動時間に充てられるように業務時間を管理しています。b
働く環境やチームビルディングを通して、社内メンバー全員が体験から得られる効果やその重要性を理解することにより、UXデザイナーだけでなくプロジェクトに関わる全員がユーザー体験の価値を信じることができます。
あらゆるビジネスにおいてユーザー体験の重要性が提唱されるようになってきているなかで、日本では、まだまだUXデザインのプロセスやツールにフォーカスした議論が多いように感じます。目的とするユーザー体験を創出し、それをユーザーに確実に届けるためには、業務プロセスや組織づくりなどマネジメントの観点からもっと議論する必要があるのではと思ってます。
最後に
現在Tigerspikeでは、一緒に楽しく仕事ができる仲間を募集しています。詳細は弊社HPもしくはGreenをご覧ください。みなさんのご応募お待ちしています。