ウェブメディア運営は、ファッションブランドから学べることがあるかもしれない。〜そして僕はヴィトンが好き(笑)〜

Kota Suzuki / スズキコウタ
tiny little thingz
Published in
7 min readFeb 21, 2018

最新号の『POPEYE』が「二十歳のとき、何をしていたか?」という特集で、なかなか面白かったです。

特に印象深いのが「Undercover」のデザイナーである、「ジョニオ」こと高橋盾さんへのインタビュー。藤原ヒロシさんやNIGOさんとの出会いや、伝説の店「NOWHERE」につづく黎明期の話は、ストリートカルチャー好きにはたまらないわけですが、それ以上に「おっ」と思わせたのが、「ファッションウィークで世界進出して以降は、コレクションを終えた後に意識的に充電期間を設けていた」という話。

充電期間中に、次はどんなテーマで、何にインスパイアされた洋服を生み出していくか考える。それによって、定期的にソーシャルインパクトを生み出すようにしていた、というわけです。この話を、さっそく直後の会議で、マイボスの鈴木菜央さんにも話しました。

マイボスとのmtgでのホワイトボード。内容は内緒!

充電期間‥‥あっても良くないですか?

僕はウェブメディアの副編集長という、すごくコンテンツやソーシャルインパクトを量産する・策略を練る仕事をしていますが、ウェブの編集って充電期間がないんです。

greenz.jpというのはファストに抗うような内容を発信するメディアではありますが、定期的にコンテンツを発信し、読者に飽きられないようにする、ライターさんのモチベーションを維持するというのは、全然スローな仕事じゃなくて、はっきり言って激務です。

平日は毎日「ほしい未来は自分の手でつくる」という人々を生み出すため、コンテンツを発信しつづける。クライアントがいる記事の場合は、その意向も伺いつつ仕上げて、ひたすらアップしていく。「終わりのない持久走」というと辛く悲しく響きますが、実際そんな感じです。

なので正直、充電して次を練ることに専念する期間というのは、あまりないんですね。充電期間があるかないか。実は、それってウェブメディアの編集業務において、僕らの媒体だけでなく軽視されていることかもしれません。ウェブメディアは常に走っていて、出し続けているのが当たり前、と。

人それぞれのキャパシティやスキル・感性の違いがあるので一概には言えませんが、少なくとも僕には「終わりのない持久走」を続けながら、高橋盾さんのごとく、人々を揺さぶる、インパクトある一発をかますことはできないかなと思っています。

そうぼんやり考えていたら、僕らもたとえば3か月発信し続け、1か月は充電期間、つまり少し休みつつ仕込みに充てる。それを3周こなして1年を過ごす。そんなビジネスモデルでもいいんじゃないかと思えてきました。

たとえば、4・5・6月は「サステナビリティ」をメインコンセプトに掲げて発信活動をする。7月は次のテーマを見据えた充電・仕込みと、別班が前期のテーマを書籍化するだけで、ウェブは発信休止。そして8・9・10月は、違うテーマでたとえば「キャリアデザイン」をメインコンセプトに掲げて発信活動を再開する。11月は、また充電・仕込みと別班の書籍化、と。

職人性の継承とトレンドとの同期、その両立をルイ・ヴィトンから学ぶことができるかもしれない。

こういうモデルの妄想を始めたときに、ふと思ったのは、僕が大好きなルイ・ヴィトンが参考モデルになりそうだということ。特にメンズ・コレクションのビジネスは、コンテンツ販売・発信の事業に応用し得る、実によくできたモデルだなと感じたんです。

元来、ルイ・ヴィトンというのは職人が設立した、クラシックなデザインで頑丈、なによりクオリティの高い革製品でユーザーの暮らしを美しくするブランドです。日々淡々と、いい革製品のプロダクト〜デザインモデルが完成すると、ひっそり店舗に入荷し販売されていきます。(僕も愛用する「ポルト モネ・ロン」なんか、もう何年もマイナーチェンジさえしていないはずです。)

その一方で、年に2〜3回、パリのファッションウィークや、時折大都市でのポップアップコレクションで、大きなテーマを掲げ、トレンドと同期した新作を発表するのです。最近でも、モノグラム・エクリプスとか、モノグラム・スプリットは、クラシックなヴィトンの模様をトレンドとマッシュアップさせ、世界中のファッショニスタの心を奪いました。さらにコレクションのカタログとして出版がある。それは顧客への商品案内であると同時に、アーカイブ化という役割も担っているといえます。

(そういったモデルをルイ・ヴィトンが始めたのは、マーク・ジェイコブスがメンズディレクターになったのがきっかけだったと記憶してます。それをキム・ジョーンズが引き継ぎ、彼が退任した今、ヴァージル・アブローが後任? なんて噂になっていますが。)

何をいいたいかというと、ブランドの価値を高めるために、コンセプトを打ち出すキャンペーンとしてファッションコレクションを展開する。(コレクションの間には、絶対に充電期間があるはずです。)そして日々、淡々と普遍的なものもつくっていく。この並行感のバランスを、ウェブメディアは真似して取り入れていけるんじゃないかということ。

ヴィトンinspiredで運営モデルを試作してみた

話をグリーンズとウェブメディアに戻してみましょう。

先の例示に戻ると、4・5・6月は「サステナビリティ」を掲げたメイン特集。でも、その期間も「サステナビリティ」だけを追いかけるのでなく、たとえばダイバーシティについての普遍的コンテンツが生み出せるなら、それも淡々と発信する。そしてメイン特集の記事発信を終えたら、ファッションブランドがカタログを出すように、ウェブ記事のコレクションを中心に据えた出版をしてアーカイブ化していく。ウェブメディアの場合は、その出版をマネタイズの一部分にしていく。そんなの素敵じゃない? と思えてきたんですよね。

https://docs.google.com/spreadsheets/d/1k3iu9eakeuaTj9KTu2lFFSE0kOyxxI6E5aR48XWZIMk/edit#gid=0 で拡大表示できますよ。覗いてみてください。

グリーンズは、ルイ・ヴィトンのようになればいいんだ。

そう書くと、かなりいっぱいの誤解を生み出しそうですが…(笑) 盛り上がった僕は「よーしルイ・ヴィトンが発行している書籍を読んで勉強しよう!」と思いましたが、高い・・・ しばし支出を抑えめにせねばいかぬ僕には、勉強開始まで少し時間がかかりそうです。。。とほほ。

でも、年末に徳谷柿次郎さんも話してましたが、ウェブメディアは記事の数を減らしたほうがいい。

本数でプレゼンスを高めるのでなく、質とその訴求を丁寧にやることでブランディングしていく。そして記事一本に注ぐ金銭的コストも増やしていってほしい。そう願います。

P.S. #1

もし、これやってみたいと思い立った方がいたり、こんなヘンなこと考えてる副編集長がいるから、フリーランスでなにか企みたいという方いたら、こちらまで。もっと編集部づくりについて話が聴きたいという方は、3/3に講義の場があります。

P.S. #2

バスの車中で凄まじい勢いで書いた、このエッセイを自宅で読み返してみると・・・ それにしても僕はヴィトンがホントに好きだなあ(笑)

最近は「クーヴェルテュール・パスポール」と「アポロ・バックパック」がめちゃくちゃほしくて、毎日ウェブサイトを見てはニヤニヤし、それで我慢してます(笑) オザケンがいうところの「消費する僕と消費される僕」という構図に陥らないように注意しないといけませんね!

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Kota Suzuki / スズキコウタ
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greenz.jp 副編集長 / 2kai Productions ミュージシャン&フリーランスエディターhttps://greenz.jp/author/kota/ https://www.wantedly.com/users/3287033