デザイン思考を学んでいるときに陥る罠 その2

デザイン思考を学んでいるときに陥る罠 の続きです。

今回も、「こうすれば回避できる」みたいなものもなく、授業で単に難しかったところを列挙しています。無理やりですが、振り返ってみて、「こうすれば良かったんじゃないか…」的なものも挙げてみました。

5. テーマが広すぎて、方向性が定まらない

自分たちの選んだテーマは、

富士スピードウェイへ向かう自動車愛好家の旅行体験を再デザインせよ

というテーマでした。

なかなか課題やアイデアが絞りきれず、「やはり渋滞中だよなー」とド真ん中を攻めてみたり、「旅行体験というのならその家族も?」と幅を広げすぎたりと、迷走しました。

テーマが絞りすぎてもアイデアが狭くなり良くないですが、ある程度範囲を限定した方が考えやすいです。出来れば、最初の方に攻めどころ(ターゲット、シチュエーションなど)を決めておくと、あるいは、「今はココを攻めよう!」とチームの中で統一しておくと良かったかもしれません。

6. テーマに共感できない

テーマはチームで選んだのですが、自分は運転しないし、そもそも車に興味ないし…と、テーマに共感できないとツラいです。自動車愛好家から話を聞いても「そーなんだー」としか思えず、そこから「本当はこう思っている(はずだ)」というインサイトがなかなか思い付きません。がんばってひねり出しても、周りの車好きな人に「それはない」と言われたら諦めてしまうことが多かったです。そこから一歩プロトタイプで確認して前に進めようという自信のようなものが出ませんでした。

実際は、 ユーザーリサーチが独りよがりにならないために の「多様性の意味」にあるとおり、チームメンバーやチームの関係者を通じてテーマの共感を深めていきました。ただ、個人の検討がツラいのです。

今思えば、雑なプロトタイプを作って見せた方が良かったかもしれません。アイデアに対する単なる想像からのフィードバックではなく、雑であっても体験を経てのフィードバックが得られるはずだからです。自分自身にとっても、プロトタイプを作ることや試すことで新たに知見が得られるはずです。

7. 課題が見えない

インタビューをすればするほど「別に困ってないんじゃね?」と思ってしまいました。車好きな人は運転を苦にせず、解決できるスキルもあります。車の振動や音などは、むしろその辛さがご褒美だったりします。経験も豊富なので、大概のトラブルは自分で解決できます。渋滞もさほど苦にはなっていませんでした。

最終的には、「インタビューではこう言っていたけど、本当はこう思っているはず」と決め打ちでインサイトを出しました。「一般的には成り立たないけど、状況を絞れば成り立つ」ようなケースを打ち出すことで納得感を広げた気がします。

8. 議論し尽した感

アイデアを出して試してみては最初に戻り、試しては戻りを繰り返していくと、アイデア出しの時にどこかで話した内容に戻ってしまい「結局xxxなんだよねー」ということで議論が進まない状態に陥りました。アイデアも出し尽くし、ツラくなってきており疲労感が漂う状態です。

この状況は、チームとして到達すべき最低限の地点に達した証だと思います。新しいものを産み出すときは、誰しもここまでは考えるはずで、ここからどうひねり出すかが真に問われるのだと思います。チームであることを問われるタイミングでもあります。

ツラいと泣き言を言いながらも前に進むべき状態では、チーム内で率直に意見が出せる「心理的安全」がとても重要です。チームメンバーを尊重しながらも、積極的にアイデアを非難しあい(disり)、さらに良いものを作り出そうというチームになっていればベストです。幸い我々はこのようなチームにすでになっていましたが、この状態に陥いるまでにチームビルディングしておく重要性を感じました。

9. 先生の言うことを聞きすぎる

先生方からフィードバックをもらうのですが、必要以上に重要視してしまう場合です。先生方は人生経験も、講師としての知識も豊富なので、チームメンバー以上に有益なフィードバックが多いのは当然です。ただ、そこばかり目を向け続けると、良いものは出来ません。自分たちの方向性を信じること、ユーザに試してもらった感想が全て、という割り切りをどこかでする必要があります。ただ、これまでの授業で一つしかない正しい答えを先生方に教えてきてもらった経験もあり、どうしても強めに捉えてしまうようです。

そこで思いついたのが、自分たちで「先生方ならなんと言うだろう」と考えることです。Slackを使って、その言葉を言わせてみて、自分たちで勝手に盛り上がるようにします。

Slackで先生にプラスのフィードバックをもらったことにして、自分たちを盛り上げる例

間違っても落ち込むようなフィードバックはしないようにしましょう。

悪い使い方の例 (当事者と先生との間で実際にこのコメントを言った言わないで、現在も継続審議中…)

一見、単なる悪ふざけに見えますが(実際そうなのですが)、立場を変えてものの見方を変えてみるというのは「6色ハット発想法」と呼ばれる方法もあるくらい有益な方法です(後付け)。

先ほど、チームの中での心理的安全が重要ということを書きましたが、先生方との心理的安全を構築するのもとても大切です(先生方にもこのSlack見られますからね)。有益な人生の先輩と怒られない程度に遊びましょう(あいまいさのダンスを共に踊りましょう)。

10. アイデアを簡単に手放す

出したアイデアが他の人に響かず盛り上がらなかったとき、自信のなさからか、アイデアを深堀りしたり、プロトタイプで試すことなく、そのまま埋もれてしまうことがあります。それにも関わらず「これだ!」というアイデアを求めて、「アイデアが出ない」とうなっているのです。良いアイデアやとっぴなアイデアに到達するのは、直接思い付くよりも、他のアイデアに乗って広げている時の方が経験的にはるかに多いです。

そこで、我々が試した「1アイデア1コント」をご紹介します。アイデアを出した後に、無理やりその場でチームでコント(スキット、寸劇)をするのです。そのアイデアを実際に使うシーンを想像しその場で試してみます。利用シーンを体験することで「これはない」「意外といけそう」「こうやればもっとおもしろい」などチームで共有できます。無茶なアイデアほど楽しいです。単に真面目にやるのではなく、「コント」としてお笑いの要素を入れているのも意外な方向性のアイデアが出すのに役立ちました。お笑い用語の「天丼」的に、前に受けたシーンを無理やり他のアイデアに組み入れたりすることで、楽しみながらアイデアを広げられました。

「1アイデア1コント」中の一コマ。何のコントか忘れてしまいましたが、ヒモでシートベルトを模倣しています。

みなさんの「こうすれば良かったんじゃないか…」的なコメント、ぜひ教えてください!

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