大きな企業で働いている人がデザイン思考の授業で学んだこと

古くて比較的大きなソフトウェア開発会社で新しいサービスを作る仕事をしているソフトウェアエンジニアが「東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト」の授業で学んだことを書いてみます。

1. 「解くに値する問題か、それを正しく解こうとしているか?」の重要性

半年の授業で、最終案のプロトタイプ作成に要した期間は、わずか2週間。それ以外の時間は、解こうとしている問題に価値があるか、それを正しく解こうとしているかを確認し続けました(デザイン思考は解くべき問題を見つけるところから始まるのです!)。見つけた問題に対して、思いついたアイデアのダーティプロトタイプを作り、自分たちで試し、ユーザに見せ、聞き続けたのです。

最終的なソリューションは地味だったかもしれませんが、それが産まれた必然性を感じることが出来ました。

2. 建物を出て、ユーザに確かめる

いつまでも考えていても仕方がないので、作ってユーザへ持って行き確かめる。簡単そうに聞こえますが、「壮大な計画を立てて実際はショボイ」ということが大きな会社ではありがちです。今後も実践していきたい信念です。

自動車愛好家のドライビング体験を再デザインするために、富士スピードウェイまでインタビューしに行きました。

3. 「大企業とデザイン思考」の相性のよさ

角先生に、 リーンスタートアップとデザイン思考の違い を教えていただきました。

「はじめにユーザーに会いに行くときにリーンスタートアップでは自分たちが最初に作ったものを持っていく。デザイン思考は何も持たずに行く。それ以降は同じ。デザイン思考は紆余曲折を経るので時間がかかる。それが出来るのは資金に余力のある大企業のようなところ。」

大企業特有のイノベーション創出の難しさを感じていた自分には、目から鱗でした。

4. ブレインストーミングの面白さ

自分の職場でのブレインストーミングは、ファシリテーションの慣れた人/上手い人がいないこともあり、盛り上がらないことが多いです。

しかし、この授業では何かにつけてすぐにブレインストーミングするので、慣れというか麻痺してきます。恥ずかしさなどなくアイデアだけに集中し、徐々にぶっ飛んだアイデアで加速していく感じを体感できました。

「職場でもこの体験がいつかできるはず!」と、やる気が出てきました。

5. デザイン思考の実践

授業が始まる前はIDEOの本などを読んだ程度の知識でしたが、やはり実際にやってみないと実践できないなーと思いました(当たり前ですが)。この最初の一歩を踏み出せたのが自分にはとても大きいです。

勢い余って自宅で 食洗機のかけ忘れリマインダ を作ってみました。(YDDおススメです…)

6. 社内風土を変える一歩に

この授業では、よくskit(寸劇)形式で成果を発表します。誰が、いつ、どのように使い、それによりどのような効果があるのかが一目瞭然となるため、聴講者にはもちろん、発表者も自然とその点を中心に考るようになる優れた手法だと実感しています。

自社でアイデアソン、ハッカソンを企画/運営した際、発表形式をどうするかという議論になりました。当初は「予め定められたテンプレートをプレゼンで」という流れだったのですが、「絶対、寸劇すべし!」と強く主張し、ねじ込みました。最初は、「引っ込み思案なうちの社員がそんなこと出来るのか」と不安でしたが、初回から全開で楽しんでおり、無駄な心配でした。

自分の好きな考え方である、 「文化を作るのに言葉は要らない。ただ行動するのみ」 を実感した瞬間でした。

声を大にして「授業の質が素晴らしい」と言いたい

このような素晴らしい学びを体験できたのは、授業の質が素晴らしいからです。海外の大学で身近に学生の授業に接したことがありますが(MITでVisiting Scientistだったことがあるのだ!ドヤ 🙃 )、授業後に集まりグループワークで一つの成果を目指すスタイルそのものが体現されています。学生の創造性を存分に引き出し、加速度的に成長させていました。

授業構成も前期2回、後期1回、計3回、異なるお題・チームで挑み、挑戦し続けることで、前回の成功・失敗を上手く活かせるような仕組みになっています。

日本と世界の未来は明るいです!

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