東京藝術大学「デザインプロジェクト」に参加して
はいどうも。EDP(エンジニアリングデザインプロジェクト)に参加していました東京工業大学大学院経営工学系修士の奥出です。
修士2年になり、EDPという自分にとってはめちゃくちゃ刺激的なプロジェクトが終わってしまった僕は次の新たな刺激を求めていました。そんな僕に舞い降りたチャンスが、東京藝術大学のデザイン科修士1年生が必修プロジェクトとして参加する「デザインプロジェクト」(以下デザプロ)への、東工大枠としての参加。もうあれですね、ワクワクしか感じない身体になりながら参加を決めました。
自分とはバックグラウンドが全然違う人たちとのホームグラウンドでプロジェクトを進めていくというのは、本当に今まで感じることができなかったような難しさ、今まで見ることのなかった気づきなど多くの経験を僕に与えてくれました。
そんなデザプロを終えた今の僕が感じる、東工大生と藝大生の違いというか特徴というかそんなものをまとめてみようってのがこの記事です。生暖かい目で見守ってください。
藝大生と東工大生の価値基準
藝大生と東工大生、両方と接してみて感じる明らかな違いは「価値基準」をどこに置いているかというところにあると思います。
簡単にいうと、東工大生は「外的評価基準」を大事にしていて、藝大生は「内的評価基準」を大事にしていると思うのです。ここでいう「外的評価基準」とは、他者に評価されることに価値を感じていて、そのためにすでにある評価基準に従うというような感じ。それに対して「内的評価基準」とは、自分が納得できるかどうかに価値の重きを置いていて、自分の中の“楽しい”などの気持ちに正直とかそんなイメージで使っています。
外的評価基準を大事にしている人は、どこかに一つの評価基準があると信じ、その“答え”を探しにいこうとします。例えばTAなどをしていて見つけた東工大生の特徴としては、グループディスカッションの経過報告をまとめている際に「あのとき先生がこう言っていたから、ここをまとめるべきだよ」みたいな発言をする人が非常に多いということ。自分の考えよりも、まずは「何が求められているか」といった正解から考えてまとめていきます。もちろん、こうやって求められているものを推測してまとめる能力は非常に大事です。
それに対して内的評価基準を大事にしている人は、自分の中に固有の評価基準があることを認めていて、さらにそれは人によって違うことも認識しています。そして自分が面白いと思ったことなら、それをとにかく発信してやろうという気持ちを強く持っています。EDPの中で藝大生の発言として面白かったのは、『最大3つのアイデアを発表してください』という課題が出されたとき、3つのアイデアを発表し終えた班の藝大生が「先生ちょっと待ってください。もう一つアイデアがあるので、それも聞いていってください。」と急に発表を始めたのです。といったように、ルールを守るとか、そういう誰かに評価してもらうための制限は彼らには関係なく(完全にってわけではないけど)、自分の“面白い”を発信していくことに価値を感じているのです。
もちろん、それのどっちが良いどっちが悪いなんて話ではありませんが、僕がその違いを見つけて面白いなって思ったエピソードを一つ紹介します。
2017/05/23にデザプロの中間報告を行う場がありました。各班がオブザーブを通して発見した面白いもの、そこから得た自分たちの目指すコンセプトを10〜15分で発表してくれというのが中間報告で指示されていた内容です。しかし、その日発表した”全チーム”が、発表時間を大幅にオーバーする40分の時間を使ったのです。なぜそんなに時間を使ったのでしょうか。この中間報告では、各班がそれぞれこの先この方向性で進めていこう!というコンセプトを持ち寄っていました。しかし、オブザーブの成果報告を行う際、自分たちのコンセプトにつながった発見だけでなく、「面白い」と思ったことを各々が全て発表していたのです。正直、そんな光景を目のまえにした僕が最初に感じたのは「こいつら何を目的に発表しているんだかわかんねぇ」って感じでした。だって発表のメインであるはずのコンセプトに関係ない部分が発表の大半ですからね。でも、聞いているとすごい楽しいんです。コンセプト以外にも楽しい発見がいっぱいあって、活かせるものがたくさん隠れていたから。藝大の先生方にも終わった後に「明らかに時間オーバーしてたのになんで止めなかったんですか?」と聞いてみたところ「面白かったから。つまんんかったら止めてたよ。」とシンプルなお答えをくださいました。なるほどね。面白いって重要じゃん。
プロジェクトの進行法
さて、そんな感じで価値観の違う東工大生と藝大生ですが、プロジェクトの進め方も全然違います。大きく分けるとこんな感じ。
論理的思考が得意な東工大でのプロジェクトの進め方は、
- リサーチを行い
- 何が問題としてあって
- 自分たちは何ができて
- 何を解決すればその問題が解消されて
- その解決のためには何が必要で
- そのために我々はできることの中で何をする/作るかを決め
- 自分たちの提案のインパクトを試算する
みたいな流れが一般的なのかなって思います。ボトムアップ的な考え方なのかな。
それに対して藝大でのデザプロでは
- 目指す世界は何で
- リサーチから得られた違和感はどんなもので
- 自分たちが作りたいものは何で
- それらを掛け合わせたときどんな提案になるか
って感じ?かな?全然具体的な話をしないんですよ。
自分はどちらかというと具体的にどう詰めていくかみたいな、論理構成とかが得意なタイプなのでこのデザプロではどう関わっていくかでめっちゃくちゃ悩みました。実際に自分たちのグループでは
- 自分たちの提供価値は何か
- ユーザーが本当に求めているものは何か
といった、自分たちが実際に何をしていくかの話はあまり詳しくせずに、
- 自分たちがこれを成し遂げた世界はこんな世界
- そこはきっとこんな風景
みたいな、提案の外側の話がメインでした。しかし、そうやって外側の「夢」を語る姿はとても楽しそうで、邪魔しちゃいけないと思い我慢をしてしまったところはありました。最終発表のフィードバックで「提供価値と元のコンセプトとのズレがあるのでは」という指摘を受けた時、自分が具体化すべきところが残ったままだからこその指摘だなと強く感じ、自分がその場で何も力に慣れていなかったことに気づかされました。
EDPに持ち帰りたいこと
さて、こんな風に東工大生と藝大生を比較してみて感じたことがありました。東工大生はもっと自分の気持ちに正直になれと。クソ真面目に先生の言うことばっか聞いてる場合じゃないぞと。自分たちが何を正しいと感じ、何がしたいのかもっと主張していってほしいなぁって。フレームワークに当てはまるかよりも、楽しいと思えるかの方が重要なのかもねって。
それと、藝大美大組はアウェイに来てくれてるんだから、まずはこっちから理解するようにコミュニケーション取ろうぜって感じですかね。どんどん遊んで、彼らが何をやってるかももっと聞いてほしいなって。まぁ、自分たちがホームグラウンドでプロジェクトをしてるんだから、周りを引き込む工夫をしなきゃいけないのも自分たちってことをわかってやっていってほしいなって。僕はデザプロでは借りて来た猫状態でした笑
まぁこの辺は僕ができなかったことです。みんな頑張ってくれ。うん。