見えないものはないのと同じ

Visualize or Vanish!

こんにちは、EDP2017受講生で東京工業大学大学院修士2年の鹿島と、EDP2020受講生で武蔵野美術大学4年の鳴河です。
7月3日にEDAの一コマを頂き、EDP2021を受講している全学生向けに講義を行いました。その授業の内容を、実際に用いたスライドや皆さんの成果物を交えながら紹介します🎉

Intro

今日の授業のタイトルはずばり!「見えないものはないのと同じ」です。
実際にEDPを経験した二人だからこそ強調して最初に伝えたい・・・

手を動かすことで伝わることって本当~~にたくさんある!

EDPでは、美大生・東工大生・社会人学生というバックグラウンドの異なる三者が集まって議論をしながらプロダクトを作っていきます。
そんな三者が「言葉だけの議論」を行うと…

これは、EDP受講時に小規模農家に対する課題に取り組んでいた鳴河が実際にあった事例です。
同じ『熟練者はイモの選別が早く、パートさんは遅い』という言葉から、ある東工大生は1日の作業の成果を、社会人受講生は時間変化を、美大生は作業の様子の違いを思い浮かべていました。

言葉だけの議論ではこういった解釈の違いが頻繁に発生し、大きなすれ違いにまで発展することも。このミニ講義では、絵や図を用いて実際に手を動かしてグループワークの練習を行いたいと思います!

演習(前半)

1. 言葉の難しさ

ワーク①
「荷物が多くて大変な人」を思い浮かべ、想像した状況を1分で文章にして下さい

Discordのチャンネルに一斉に送ってもらいました

状況や荷物の多さ、大変な理由も様々ですね。同じお題であっても、人によって異なるイメージを想起させています。
EDPではこういった「課題」を解決するプロダクトを制作していくので、更にワークを進めてみましょう。

2. 絵を描いて伝えよう

ワーク①-2(TA2名でやってみる)
「荷物が多くて大変な人」を助けるために「商業施設で邪魔な荷物が1Fから2Fについてくる」プロダクトを想像する

鳴河:巨大なルンバみたいなのがついてくる
鹿島:荷物専用のエレベーターみたいなもの

課題から一歩進んでプロダクトを想像してみたところ、またズレてしまいました。このアイデアの多様性自体は決して否定するべきものではありませんが、鳴河の「ルンバ」案、鹿島による理解では「ルンバが自分の荷物をずるずる引きずって列をなす」イメージでしたが、これは鳴河の想像とはまた違ったようで絵を描いてみると…

(左・鹿島)荷物を引きずるルンバ (右・鳴河)ルンバの上に乗る荷物

絵を描くことで、お互いの認識の違いがはっきりとしました。
もちろん言葉でも説明することはできますが、絵を描くことのメリットとしては

・短時間で早く伝わる
・解釈のズレを少なくできる
・会話は相手が喋り終わるのを待つ必要があるが、絵なら同時に見せれる

という3つがあります。

アイデアの共有方法と伝わり方の違い

でもここで、「絵が描けるのは美大出身だからでしょ?」と思った方もいるんじゃないでしょうか?✋
もちろん、日常的に描きなれてはいますが、「作品」として描くのとは全然違います。

ここの「絵」で重要なことは

・下手でいいのですぐ描く
・「作品」を描くのではなく、伝えるための ツールとして使う

ことであって、上手でかっこいいものを作る必要はありません。

じゃあどうやって「伝える」絵が描けるのか?
描く時のコツを具体的に3ステップでお教えします。

3. 「伝える」ために描くコツ

1⃣ 状況を描く
…丸や四角の図形を並べて、図形の傍に「人」「荷物」と文字で記せば、細かく描かなくても状況は十分伝わります。

2⃣ 動きを描く
...進行方向を示す矢印や、動きを表す線を書くと動きが表せます。さらに、人物の「鼻」と「くつ」は結構ポイントで、これを書いてあげると簡単に向きが表せます。

3⃣ 感情を描く
登場人物の心情を表すセリフや、♪(音符)や💦(汗)のような記号を書いて感情を表現することで、ぐっとリアルに伝えることができます。漫画の表現や絵文字が参考になるかもしれません。

ワーク②
「大事故」を3ステップで描いてみましょう
事故、にもいろんな種類があるし、何をもってして「大」事故かは

自分が思い浮かべた「大事故」の状況、動き、感情を周囲の人に伝えます。

演習(後半)

言葉から思い浮かべるものは人によって異なる!
わかりやすく簡単に伝えるには図や絵を可視化することが有効である!

ということがわかったところで、後半のワークに入っていきます。

ここからは、前半のワークで学んだ

・下手でいいのですぐ描く
・「作品」を描くのではなく、伝えるための ツールとして使う

このことが、立体でも同じことが言えるということを伝えていこうと思います。

4. ものを作りながら考えた例

鳴河が参加したチームのプロトタイプ

「作りながら考える・絵を描きながら作る例」として、鳴河が実際に活動の中で体験したものを紹介します。
『手に乗せただけで重さがわかるプロダクト』というアイデアでしたが、言葉だけだと手にどういう風に載せるのか、「重さが分かる」ってどういう状態なのか…?色々と思いつくことがあって、どういうものなのかいまいちわかりません。
まず、絵(図左)を描いてみたことで、ああ掌に巻く感じで測りがあって、リストバンド的な液晶に数字が表示されるということが伝わりました。そして、みんながイメージを共有できたので、スケッチをもとに立体(図右)にも起こすことができました。立体にしてみると、あれ、手が動かしにくいな…もうちょっと薄いほうがいいかも、などとスケッチでは分からなかった問題や、新たなアイデアが浮かびます。

このようにEDPでは立体でプロトタイプ制作をすることも多いので、今後の活動にも活かせることを期待しつつ、平面(絵)だけではなく立体でも考えを可視化できることを実感するために…

・言葉だけではなく、作りながら考える練習
・ものを作ってコミュニケーションする練習

をここから行っていきます。

とにかく作って共有してみる練習

ワーク③
「あなたが思う一番使いやすい財布」を手を動かして簡単に作り、班の人に共有して下さい

あなたの考えたイメージを立体にして、周りの人に共有しましょう!

クオリティより「伝わること」優先でガンガン手を動かし、サクッとアウトプットして欲しいので、材料は画用紙、両面テープ、ペンなどを使ってもらいます。
何も思いつかない…という方は、普段自分が使っているお財布を作るのでもいいし、自分がどういう風にお財布を使っているのか思い出してみましょう!例えば硬貨をよく使うなら、たくさん硬貨が入る方が使いやすいかも?キャッシュレスに最近切り替えたならもっとコンパクトでもいいのかも…などなど!

作ったものを見せ合いながら「使いやすいポイント」を発表しましょう~

作ったものを見せ合う受講生の皆さん

「自分の考えた財布は、ここが使いやすい!」「こんなところにこだわりました」などなど、立体物があると見せながら説明できるので、見る側の理解も共感も深まります。

ここまでとにかくサクッと作る練習でした。もうすこし踏み込んで、ものを介したコミュニケーションをもっと使うワークをこれから行います。

ものを介したコミュニケーション

ワーク④
班で手を動かして「笑顔になる財布」を作って下さい

ここまでの課題に比べ抽象的な「笑顔になる」という課題。これは、「笑顔になる」ってどういうこと?と受講生の皆さんが定義する必要があり、コミュニケーションの促進をねらって考えました。

⚠️作る前に注意事項!

3つのNO✖
・イノベーションを起こそうとしすぎる
・一人のアイデア
・言葉だけのコミュニケーション

「笑顔になる財布」なんて、なにか革新的なアイデアを出さないとダメかな…!?と気負う必要はありません。今回は課題解決のプロトタイプではなく、コミュニケーションのための講座なので…

3つのYES💛
・とにかく作る練習だと思って!
・みんなでアイデアを共有しよう!
・絵や立体を積極的に使おう!

図や絵を積極的に使いながら話し合いスタート!

図や絵、立体を使ってコミュニケーションすることの大切さをより感じてもらえたと思います。難しい課題だけど、みんなが同じものを見ながら話し合いができるから、グループワークが捗ります。

お金が扇子のように入るお財布。沢山入ってるように見えて笑顔に!
お財布がコミュニケーションしてくる!ついついにんまりしちゃいますね。

みなさんのお財布によって、笑顔の絶えない発表になりました!

受講生の皆さんの感想を紹介します。

とりあえず絵を描いたり、ものを作ること方が早く伝えられることがあることがわかりました。新しい班でも色々案が出てきて良いプロダクトが作れたと思います。(Yさん)

「伝える」を大事にする絵を書くことの重要性を知ることができた。(Sさん)

見えないものを絵起こしするミニ講義非常に楽しかったです。事故現場の例一つ取っても。同じシチュエーションでも描く角度が違ったりと視点の多さを絵から実感できたのは面白い経験でした。(Mさん)

今回の講義そしてワークを通して、私たちが伝えたかった「手を動かすことで伝わることって本当にたくさんある!」ということを実感してくれました。
私たちのねらい以上の学びがあった学生も多く、ここで得たことを今後のグループワークや制作に活かして、EDPで良いプロダクトができることを楽しみにしています!

EDPやプロダクトデザインに限らず、手を動かして伝えることはあらゆる場面で有効なので、ぜひ日頃から活用してみてください!

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