2017年度EDPの挑戦

「顔さえ玉木宏だったらモテモテだった」でお馴染みの奥出ですこんにちはこんばんは。2016年度のEDPに参加し、2017年度のEDPもTAとしてみている僕が、今回一番面白いな、すごいチャレンジングだなって思った点を紹介しちゃう記事です。所詮まだまだ学生の単なるTAの戯言なんですが心して読んでいただければいいかなって思います。準備はいいですか?

飛ばされた“define”プロセス

2017年度のEDP-Aの大きな特徴は”define“と呼ばれているプロセスをスキップしたところにあると思います。東工大EDPでは、スタンフォードd.schoolでも採用されている5Stepsと呼ばれるデザインプロセスを採用しています。その5Stepsとは

① empathy:話題の対象に共感、感情移入をする

② define:問題定義を行う

③ ideate:たくさんのアイデアを出す

④ prototype:プロトタイプの作成を行う

⑤ test:プロトタイプを実際に使ってもらってテストを行い、フィードバックをもらう

の5つのプロセスを踏んで、各プロセスに戻りながらサイクルを回していくデザインプロセスのことです。

このプロセスの中でdefineでは、insightやHMWクエスチョンと呼ばれているような形で、自分たちがempathyで見つけてきた違和感や問題意識を言語化し、チーム内で共有を行なっていきます。このように、自分たちが目指すもの、解決することを共有することで、この先のプロセスでもチーム全員が同じ方向を向いて活動を進めていくことができるのです。

こうやって聞くと、defineってめっちゃ大事に聞こえません?いや、実際大事だと思うんですよ。では、なんでこのプロセスを飛ばしたのでしょうか?僕なりの解釈とともに勝手な解説を行なっていきます。

東工大生の思考のクセ

さて、実は別記事でも少しこの話はしているのですが、東工大生の多くに共通している思考のクセがあるんじゃないかって僕は思っています。そのクセとは「外的評価基準」に重きを置いているというもの。自分がどう思うかよりも、他者から評価されることに価値を感じている。そんな価値基準を持つ学生はどんなことをしはじめるかというと、EDPのような人の数に比例してアイデアが生まれてくるようなプロジェクトの中でも、何か「正解」のようなものを探しにいくのです。「先生がこう言っていたからこれについて考えよう」「先生がこう言っているのだから、これは無視しよう」というように、その場の”評価者”である先生方の言うことに引っ張られてアイデアを考えたりする姿を何度見たことか。それはdefineのプロセスの中にも見られます。このプロセスの中でinsightやHMWクエスチョンを考えるとき、東工大生の中には、自分たちがどんな気づきを得たか、どんな問題意識を持ったかではなく、自分たちが手に入れたデータの中で”与えられたフレームワークに当てはまる”ものはどれかという視点を中心に議論し、このdefineプロセスにおいてはinsightとHMWクエスチョンの例として挙げられたフレームになんとか当てはめようとインタビューデータとにらめっこするのです。フレームワークしか使えないって、お前たちがそこにいる意味は何だ。

また、物事を論理的に捉えがちな東工大生は、このプロセスにおいて問題意識の文章化を行うと、何となく論理的に通っているからオッケーだと思い込み、リアルから離れた話をしがちだったりもします。こんな話も聞いたことがあります。あるプロジェクトで東工大生と慶應大の女の子が一緒に取り組んだ際に、その女の子に感想を求めたところ「東工大生は人間をロボットのように見ている。人間は論理的にだけ動くわけではないのに」と言われてしまったそうな。こんなように、文面の”論理”に囚われて、本当に大事なことを、広い視野を失ってしまうこともあるのです。間違った論理的思考はときに誤った方向へとチームを導いていきます。

EDPでの失敗

Q&Aのプロトタイプ。りんごを内蔵カメラで読み込んで、まだらなら高確率で高評価を下す、少し「ウソ」を吐くような提案

こんな偉そうに語っている僕ですが、自分が参加した2016年度のEDPでは、まさに「間違った論理的思考」で大失敗をした一人です。そんな体験談を振り返り、同じ失敗がまた起こらないように記録として残しておこうと思います。

第3Qに参加したEDP-Bで僕たちのチームが提案した製品は「Q&A」と呼ばれている製品。この製品がどんな製品かを説明すると、

・りんご農家の方々は、葉摘という作業をするとりんごの甘味が落ちてしまうということがわかっていながら、りんごを赤くするために葉摘を行わなければいけないことに違和感を感じている。

・市場は赤いりんごが美味しいと信じているため、そんな気持ちがあっても葉摘をせざるを得ない。

・それならば、真っ赤ではなく、まだらな模様になっているりんごが売れる市場を作ればいいのではないか。

・りんご売り場には、りんごの美味しさを示す指標はほとんどない。(実際の甘さとは実はほとんど関係のない糖度表記のみ。なので見た目の色に頼って判断)

・そのため、まだらなりんごを高く評価するりんご評価機「Q&A」という製品を導入しよう。

ざっとこんな流れで生まれた製品である。なんとなく言葉にするとそれっぽくないですか?(そうでもない?笑)

でも、この提案、元々のターゲットであった「りんご農家」から目線を逸らし、「りんごを買う人たち」に向けた提案になっている。まだらなりんごが高く評価されることは、別に”正しい”評価ではないので、倫理的な問題も含んでいるなど、全然ユーザーの体験を改善しないアイデアとなっていたのであった。ずっと文面とにらめっこしていたせいで、目の前にいたはずのユーザーはどこかに消えてしまって、リアルさを欠いた議論を続けてしまっていたことを、フィードバックをいただくまで気づかなかったのです。

ただ論理的なだけではなんの意味もなくて、もっと感情的な部分が見えてこないとユーザーの体験ってものは変えられません。だって人間は論理だけでは動いてないのだから。

2017年度EDP-Aでの成功

さて、ここまで僕の失敗体験について書いてきましたが、defineプロセスを飛ばして進んだ2017年度のEDP-Aはどうだったのでしょうか?僕の印象としては、言葉をごちゃごちゃと考える前に早い段階でアイデアを出してプロトタイプを作ることで、「プロトタイプ思考」的に、作って試して考えるという良い流れに持っていけていたように思います。多くのチームが、ただプロトタイプを作るだけではなく、その効果をテストしてそのフィードバックを受け、Re-プロトタイプまで行えていました。EDP-Aは2ヶ月弱と短い期間しか与えられていないのに、これは本当にすごいことだと思います。

しかし、defineを飛ばしたことでチームの進む指針が与えられていないという意味で、アイデア出しで苦労するチームがあったことも確かです。この先のプロジェクトではこの点をどう乗り越えていくか、参加していない僕もとても楽しみに見ています。

このように、EDPの教員陣は毎回いろんな工夫とともに講義に臨んでいます。きっとこれからもどんどん教員から「挑戦」をしていくという文化は消えないでしょう。こんな刺激的なプロジェクト、ぜひ皆さんも参加してみては?

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