2021年度EDP「AshimoTrainer」Team3-カラメルぽけっと

Team3ーカラメルぽけっとです。

私たちは、ミズノ株式会社さんから頂いた
「身体の衰えを感じる都会の高齢者の「外遊び」をデザインせよ」
というテーマに取り組み、「AshimoTrainer」(アシモトレーナー)という製品の製作を行いました。

ポスター
初日に撮ったチェキ

カラメルぽけっとのメンバー

東京工業大学工学院機械系 エンジニアリングデザインコース 修士1年

  • 髙橋健一郎
  • 大堀隼輝
  • 江頭正洋

武蔵野美術大学 造形学部空間演出デザイン学科 3年

  • 小島亜佑子

日本ゼオン株式会社

  • 嶋原一道

まず、私たちの製作したプロダクトを紹介します。

私たちのプロダクトは、「AshimoTrainer」です。

これは、ジムのトレーナーのようにフィードバックや助言がもらえず、一人で行うウォーキングに魅力を感じられない高齢者の方向けのウォーキングシューズです。

ウォーキング中の足圧を色で可視化し、改善点のフィードバックを得られ、新しいウォーキング体験の出来る靴です。

続いて、ターゲットについて説明いたします。

この方は約50年間も仕事一筋という方でした。退職後は通勤や仕事中の移動が無くなり体を動かす機会が減少してしまいました。

家で過ごすことが多くなる中で、体重が増えてきたことをきっかけに健康を意識するようになり、運動を始められました。

しかし、運動経験があまりなく、ジムのトレーナーに習って運動を続けているという状況でした。

そのような時にコロナウイルスの感染拡大により、密な場所を避け、一人で行うことのできるウォーキングに切り替える必要がありました。

しかし、ジムに比べて頻度が多くなく、インタビューする中で、何か満足感を得られていないという印象を受けました。

そこで、私たちは
「一人でやるウォーキングでは、ジムのトレーナーのように、フィードバックや助言がもらえず、一人で行うウォーキングに魅力を感じられないのではないか?」と考えました。

そこから私たちは、ある問いを立てました。

この問いから生まれたのが「AshimoTrainer」になります。

「AshimoTrainer」のイメージ図になります。インソールに圧力センサーが搭載されており、そのセンサーで読み取った足圧の変化を靴の表面上に色で可視化して改善点をフィードバックすることで正しい歩行を支援します。

さて、正しく歩くとはどういうことなのでしょうか?

正しくあるくためには、かかとから親指へのスムーズな足圧の変化が必要になります。

ここで、「歩き方の違いにより足圧の違いは出るのか?」
私たちはそのことを確かめるために実際にプロトタイプと高齢者体験キットを用いて実験を行いました。

その結果は...

通常の姿勢での歩き方では親指が使えているのに対し、高齢者体験キットを用いた歩き方では親指が使えていないことが分かりました。

続いて、使い方について説明します。

  1. 「AshimoTrainer」を履いてスイッチON
  2. 歩く
  3. 歩きを止める
  4. それまで歩いてきた足圧の変化が靴に表示
  5. 足圧がかかっていない場所があれば、赤い点が点滅
  6. 赤い点を意識して歩くことで自らの歩きを改善していく

実際にプロトタイプを見せたときのユーザーの声です。

歩き方の違いによる効果を示していければユーザーの体験がよりよいものになりそうだということが分かりました。

今後の展望としては、フィードバック要素の追加と多面化を考えていました!

続いて、私たちが「AshimoTrainer」に行きつくまでのいきさつを説明します。

これらが「AshimoTrainer」にいたるまでに考えたプロダクトの数々です。

これらのプロダクトから「AshimoTrainer」にどうやってたどり着いたのか説明していきます。

まず、テーマが

「身体の衰えを感じる都会の高齢者向けの「外遊び」をデザインせよ」
ということで、

  • どこからどこまでが都会なの?
  • 外遊びってどこからどこまでが外遊びなの?

ということを考えていました。

まずは、知り合いの高齢者や自分たちの祖父母にインタビューをし、
「太ったら分かるシャツ」や「散歩中の軌跡で絵を描く」ことで散歩がちょっと面白くなるプロダクトを考えていました。

しかし、何か違うなぁ、浅いなぁというのが率直な感想でした。

そこで、もっと高齢者の方の近くで話を聞いてみたい!と考えてフィールドワークを行いました。

大学の近くの運動公園に行ってシニアの方と散歩しながら話を聞いたり、
老人の町巣鴨に行って商店街にいる人に話を聞いたり、
老人会の方にアポを取って一緒にグランドゴルフをしました。

そして、インタビューを共有する中でみんなの意見としてまとまったのが、外で出会う高齢者の方はアクティブな方が多いということです。

そして、アクティブな方が屋外に出て活動する理由として、
友達がいるから、あそこにいったら人と会えるから、
など、何かしらのコミュニティーや人とのつながりを求めているということに気づきました。

その気づきからプロダクトの目標を「コミュニティーへの参加」としてプロダクトを作っていき「きっかけつくロッカー」が誕生しました。

これは、体育館のロッカーに設置するもの。どこで、何人でやっているのか/男女の比率/年齢層などを提示し、コミュニティーに入りやすくする“きっかけ”を作るロッカーです。

しかし、このプロダクトって結局コミュニティーに参加させるだけで、その後のことはなにも考えられていないのではないか?ということに気づきます。

そして、もう一度、過去のインタビューを見返していく中で、とある方に出会います。それが、プロダクトの説明でもあった方です。

この方は約50年間も仕事一筋だったので、地域とのつながりや関わりが全然なく、それらのつながりを求めてコミュニティーに参加されていました。

では、どのような地域のつながりを求めてコミュニティーに参加したのでしょうか?

インタビューで深ぼっていくと、
「町内会に参加して、祭りの手伝いなど地域に貢献していきたい、けど、町内会に今から参加するのはハードルが高い」ので、別の参加しやすいコミュニティーに参加してることがわかりました。

それならば、

  • 参加のハードルが低く
  • 地域貢献ができる

プロダクトがあればいいのではないかと考えました。

そんな中生まれたのが、
あるコース~あなたの歩きが町の光に~です。

このプロダクトは、散歩コースの一部を発電床にすることにより、ふらっと散歩するだけで地元の電気が生産され、地域貢献できるプロダクトでした。

コミュニティへ参加することなく地域貢献出来て、運動にもなるということで、ニーズにもテーマにも合ったプロダクトができたと思っていました。

実際に、プロダクトをインタビュイーに見せたところ好感触!!!

ですが、実際には地域貢献に好感触を持っているのではなさそうだということに気づきます。

何が良かったのか、
クリーンエネルギーだから?みんなと一緒にやれるから?
結局何が好感触だったのかうまくつかめないでいました。

そして、そもそも、
この方は地域貢献をしてどうなりたいんだろう?
と疑問を持ち始めました。

そこで、インタビュイーに
「老後の展望」、「将来像」
などを聞いてみるも、建前や一般論にすげかえられてしまい、本人もよくわかっていないようでした。

本人も私たちもわからない問題とは一体なんなのか、、、。

一体どうしようか...となったとき、

将来の目標がわからないなら、
将来像が曖昧ながらも「今」頑張ろうとしてることをサポートしてみる
というのは一つの答えなんじゃないか、と私たちは考えました。

今頑張ろうとしていることを支えることは、この方の将来を支えることになるかもしれない。

そして、再度、インタビューする中で、コロナ化での環境の変化によるジムとウォーキングの違いに不満を持っていることがわかり、今回のプロダクトが生まれました。

プロトタイプでは、いかにフィードバック感を得られるか?に苦労し、何とか形にすることができました。

以上が、「AshimoTrainer」に行きつくまでの道のりです。

カラメルぽけっと対談
EDP最終発表後2022/02/07にzoomにて振り返りの対談を行いました。

1、「家族で例えるなら」

カラメルぽけっとのメンバーを一言で表したいなって…
私たち活動していく中でできた関係性を「家族」で例えてみました。
それぞれの個性が活き、とても良いバランスだったのかなと感じてます。

2、「〇〇さんってどんな人?」

一緒に活動をはじめて5ヶ月。
メンバーのそれぞれの印象ついてを話し合ってみました。
本人のいないところで感謝の気持ちを綴った、15分の書き起こし。

Dear, Masahiiro Egashira

江頭正洋氏のコメント

面白い経験だったという一言がまず最初に出ます。

美大生と社会人学生、そして東工大生という構成から何か面白い発想を生み出そうというコンセプトに対して、自分はグループワークの中でMCをしようと思って活動しました。

実際、グループワーク初期の段階では共通言語の無さや、そもそもこれだけ高度なデザイン思考という思考プロセスは、ただでさえ脳のCPUを消費する作業であるのに、それを言語化するという作業はグループメンバー全員が苦労している節があり、自分が設定したロールは間違いではなかったと思います。

しかし、議論の中で江頭という翻訳機を使えば使うほど、自分の思考がベースとなりグループメンバーの発想にバイアスがかかってしまっているのではないかと、後半に向けて苦悩しました。これの解決方法としては、論理的思考と、インタビューで共感したことや自分たちのアイデアに対する愛情をうまく中和させることだと気付きました。この解決方法はグループメンバーの個性から偶発的に実践されており、感謝しかありません。

この授業の、とことんインサイトを追及していくというコンセプトが、ソリューションを良いものとし、自己の反省を引き出すとともに、成功体験を与えてくれたと思います。

このような体験をできた授業と、ここで集まったメンバーに感謝します。

Dear, Kazumichi Shimahara

嶋原一道氏のコメント

デザインプロセスを繰り返す中でユーザー心理に迫ることの大変さに幾度となく直面し、紆余曲折ありながらも、最終的にはチームメンバーで合意し、納得したソリューションとして提案できたのではないかと思っています。

多くのインタビューや観察を行いながらも、上手く活かし切ることが出来ず、迷いや方向性のずれが生じたことも多々ありました。また、思い込みや先入観から脱却できない期間もありました。しかしながら、最後にはチームメンバーが持ち前のスキルや得意領域を活かして走り切ることができ、チームメンバーには感謝の気持ちしかありません。

一方でもっと計画的に進めることで完成度を上げることもできたのかもしれません。振り返ると議論に割く時間が自然と多くなり、プロトタイピングを後回しにしてしまった場面が多々ありました。まずはモノを作り、プロトタイピングを繰り返すことの重要性については先生方からも度々、指摘、助言を頂いていました。後になって身に染みて理解できたと思います。それを理解できたことが一番の経験価値だったのかもしれません。

私一人が年齢の離れた社会人でしたが、普通に、自然に、違和感なく受け入れてくれたチームメンバーには本当に感謝しています。ありがとうございました。

Dear, Toshiki Ohori

大堀隼輝氏のコメント

半年間お疲れ様でした。

特に、江頭君と嶋原さんとは1Q(前期)の授業でも同じチームだったので、出会ってから約1年になりますが、本当にあっという間だったなと感じています。

EDP初期は時間に余裕があり、気持ち的にも余裕がありましたが、年末あたりからは徐々に慌ただしくなり、最後の1週間は怒涛の追い込みでしたね(もっと良いペース配分でやれたらよかった)。

インタビューや議論を通してデザイン思考のプロセスを学べたのは、本当に良い経験でした。社会に出てからもこの経験を活かしていきたいです。また、活動を通して、本当にチームメンバーの優秀さを感じました。自分はあまり積極的に発言するタイプではないですが、適度に話を振ってくれたり、自分の発言に共感してくれたりして、とてもやりやすかったです。忙しい中でも各自のタスクをやり切れる良いチームだったと思います。

本当にありがとうございました!

Dear, Kenichiro Takahashi

高橋健一郎氏のコメント

EDPでの学びは多くありました。

人の行動や言動の理由を探ること、真に求めているものは何かを理解することの面白さや難しさを学びました。

そして、EDPでの学びはデザイン思考だけではなかったと思います。

デザイン思考を通し、他者の行動や言動を分析する中で、自分自身の行動や言動を振り返ることにもなっていました。
他者を通した自分を考え「自分の意見を伝える」ということや、
チームで意見や考え方、感じ方、見え方が違うとき、
「何がどう違うのかを見つけることの難しさ」、
「違うという事実への向き合い方」、
「その違いの背景を理解すること」の大切さを学びました。
人と関わっていく上で大切なことをEDPは多く教えてくれました。
そして、より多様な人々と関わっていきたいと思わせてくれました。

一方で、半年間を振り返ってみると後悔の方が多いというのが本音です。
あの時の行動が違っていれば、また違ったのかなと思うことばかりです。

僕はEDPがやりたくてESDコースを選び、修士課程に進みました。
研究室ではESDに進学する人は多くなく、少し肩身の狭い思いもしました。そして、前期の授業では、製品化できる、買いたいと思ってもらえる製品を作るところまではいけませんでした。チームへの貢献度も高くなかった。EDPでは絶対にユーザーが買いたいと思ってくれるとこまでいくと決めていました。
その思いが、皆が言ってくれた「行動力」に表れていたのだと思います。

二十数年の人生で今が一番後悔していると思います。

でも、それは、EDPが僕にとって人生で一番本気で取り組んだことだったからだと思います。
EDPで僕がやりたかったのは、作りたかったのは、ユーザーが求めていたものは、これなのかと、発表日前日には一人で泣いていました。
本気で取り組んだからこそ、自身の実力を思い知らされました。
本当に最後の一週間は、つらくて、でも、最後の最後まであがいて、考えて、僕の本気を出せていたと思います。
最後、僕が本気を出せたのは、このEDPが何より楽しかったからです。
楽しかったのは、ものづくりに本気で取り組める環境があり、チームの皆やEDPに参加している皆がいたからです。
この出会いを大切にしたいです。また皆に会いたいです。
本当にありがとう。

Dear,Ayuko Kojima

小島亜佑子氏のコメント

美大の授業では基本的に自分と対話する時間が多かったです。そんな時、インタビューをもとに考えていく「デザイン思考」に興味を持ち参加したEDPでした。

公園で一日中インタビューをしたり、グラウンドゴルフを一緒にしながらの行動観察など、自分の足で調査を繰り返し、問題を探していくことが良い時間でした。何度もインタビューを繰り返してきたからこそ、どの問題も捨てきれない時期もありましたが、最終的にはチームの納得いくソリューションを提案できたと思います。実際の声を聞くことで、私たちが作ろうとしている製品を「この人は使うだろうか」という、使っているイメージが出来るか、出来ないかという話になっており、大切な指標になっていました。

議論を何度も繰り返す中で、「何か違うんだよね」という「何か」を言語化することにたくさん時間を使っていたように思います。「どういうことや?」という、みんなのざわざわを1つひとつ無くしていき、認識を合わせようとしてきました。発言しやすい雰囲気を常に作ってくれていた班のメンバーに本当に感謝しています。

まだまだ「これだ!!」という本当に納得のいくユーザーの課題を出しきれていないので、これからもデザイン思考を学び続けたいなと思います。

最後に

インタビューを快くお受けしてくださった方々、本当にありがとうございました。また、支えてくださったメンターさん、先生方、TAの皆さんも本当にありがとうございました。今後ここで学んだことを活かしていけるように努めていきたいと思います。

カラメルぽけっと一同

スライド

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