2021年度EDP「Rhyvible」team-life

過去の自分と歩こう。

私たちチームLIFEは、MIZUNOさんから頂いたテーマ「身体の衰えを感じる都会の高齢者の『外遊び』をデザインせよ」に取り組み、振動で過去の自分を感じながら歩けるウォーキングポールRhyvible(リバイブル)を制作しました。

まずは、プロダクトのPVをご覧ください。

ご覧いただいたように、健康のためであっても運動を継続できない高齢者向けのウォーキングポールで、過去の自分と競争する機能があります。
フィットネスアプリとは違い、過去の歩行データを振動としてリアルタイムに感じることができます。

高齢者の方は運動の必要性を感じていますが、簡単に習慣にできるわけではありません。あるシニア男性の方にお話しを伺うと、地域の公園での体操は長年続く一方で、自宅でできるフィットネスは継続できなかったとの事でした。

医者に運動を勧められ、必要性を感じて始めるものの、なかなか継続できずに途中で運動をやめてしまっているのです。どうやら、自宅で取り組む運動は単調で飽きてしまうことが要因で継続できていないようでした。

しかし、本当に単調であることだけが継続できない要因なのでしょうか。

本当は、自身の運動機能の変化をリアルタイムで実感することが出来れば、たとえ単調であっても継続できるのではないでしょうか?

継続するにはやめない理由が必要です。運動を続けなければならないと実感できていれば、継続できるはずです。

では、どのようにすれば私たちは、単調な運動の中で過去の自分を意識できるでしょうか?

私たちは「手軽さ・健康効果・新鮮さ・能動性」の4つの条件を付けた上で過去の自分を感じることのできるプロダクトを考えました。この4つは運動習慣をつける為に必要であると私たちが考えた条件です。

そして、制作したのがRhyvibleです。

過去に歩いた時のポールの動きを振動として再現することで、過去の自分と一緒に歩くことができます。

持ち手には加速度センサと振動モータが搭載されており、歩行データの取得と、過去の歩くリズムの再現を行います。

単調な運動で飽きてしまうという方でも、Rhyvibleを使って歩くようになれば、過去の自分に負けないように、ペースが落ちないように頑張って歩くことが出来ます。歩行速度の低下を実感し、速度の維持を意識しながらウォーキングに取り組むことができるようになります。

この製品について実際にご意見をお伺いしたところ、「自分の衰えを確認するのに良さそう」「衰えていたら頑張ろうと思えそう」という意見を頂きました。

また、「過去より成長している、あるいは衰えているというのを振動で感じることが出来たら良さそう」とも意見を頂き、さらなる改良を考えています。

現在は実装に至っていませんが、加速度センサのデータを元に帰宅時に1日の歩行データを分かりやすく示すことや、ポールの収納にもなる充電器の開発、あるいは他者との対戦機能を盛り込むことなどが今後の展望です。

「過去の自分と歩こう。」

Rhyvibleと一緒に健やかな未来へ歩きだしましょう。

design process

この製品に至るまでの軌跡をここからご紹介します。

最初は未知なことが多く、何を聞けば、誰に聞けば、どのように深掘ればよいのかが分かりませんでした。10人以上の人と20回以上に渡り、感情や意見、体験など対話を通して聴きながら、ただがむしゃらにプロダクトを作成してきました。

しかし、その繰り返しも限界が来てしまいました。プロダクトの説得力がなかったのです。今考えてみると、アイデアに対するユーザーからの意見をもらうことが疎かになっていました。

私たちは、今日お見せしたプロダクトに仕上げるまでにユーザーとの対話を大切にして活動に取り組んできました。

半年間にわたるプロジェクトの半分にあたる3ヶ月が過ぎてもなお、説得力のないプロダクトになってしまう。

分かってはいる、分かってはいますが、3ヶ月の積み重ねがある。私たちはどうすれば良いのか迷っていました。

しかし、チーム内で改めて話し合い、価値提供・新規性の小ささが大きな課題であると認識し直しました。

3ヶ月の積み重ねにとらわれずに今までのインタビューデータを見直し、1から再スタートを切ることを決断します。

これまでの膨大なインタビューデータを見直し再整理を行い、たくさんのアイデアを出しました。

なかなか良いアイデアが出ず、焦りもどんどん増えてくる中で、
ある1つのアイデアがうまれます。

それが、音ゲー+ウォーキングというアイデアです。これが今のプロダクトのスタート地点でした。このアイデアによって一気に状況が変わりました。

ここからプロダクトの詳細を話し合い、細かな設計を決めていきます。

安全性の面からリズムを伝え方は音から振動へと変化しました。振動の伝わりやすい場所を体験を通して探ると手のひらがベストであると分かりました。

さらに、運動性能を考えプロダクトの形は靴からウォーキングポールへと進化がどんどん進んだ結果、
現在のプロダクトの根幹「振動するウォーキングポール」が確立しました。

しかし、発表10日前あることに悩んでしまいます。

それは、、、

「一般的なウォーキングポールとの違いを明確に出せていないこと」が、私たちが直面している課題でした。

この状況に陥ったのは、「歩くことがツマラナイ」という誰にでも当てはまる課題を、取り組むべき課題と捉えてしまっていたことが原因でした。これまでの沢山のインタビューの結果当たり前の結論に落ち着いてしまい、ユーザーにとって“真に”価値のあるプロダクトになっていなかったのです。

また、同時期に当初のコンセプトである、リズムゲームの機能を模索する中で、ゲームのデザインの難しさに直面します。

ここで私たちは振動するウォーキングポールという要素のみを残して、新たな可能性をもう一度模索し始めました。

模索している中で、何度もお話しを伺っていたある1人の方から、面白い矛盾が出てきました。

それは「健康維持のための新たな運動は継続できず、地域の公園での体操は継続できている」という運動の継続性に関する矛盾です。

ここから、ユーザーの直面する真の課題は何なのか、提供すべき価値は何なのか、様々な仮説を立てて考えていきました。

仲間がいることによって、それが歯止めとなり継続できているのか?単調であることが継続できない要因なのか?リアルタイムで取り組むことが継続するうえで重要な要素なのか?

様々な仮説が出てくる中で自分たちで実際に体験することで、検証も行いました。

歯止めについては、自分たちでルールを決めて習慣化したいけどなかなかできないことでも仲間がいれば続けられるのか、検証しました。

リアルタイムで一緒に取り組む重要性については、振動がリアルタイムで同期するウォーキングポールを作り、使用することで検証しました。

しかし、これらの体験をもってしても明確な答えにたどり着くことはできず、チームの中でも意見が割れてしまうような状況が続きました。

そして、方針が決まらないまま時が経ちます。

そこで初めて、自分たちの間で議論していても答えが出ないことに気づきます。

大事なことに気づくことができた私たちは、発表直前のギリギリまで、ユーザーの方とお話しする機会を作り意見をたくさんいただきました。
コロナの影響もあり実際に体験していただくことはできませんでしたが、アイデアのコンセプトや、プロダクトの使用イメージを伝え、ユーザーとの対話を通してプロダクトを洗練するという体験ができました。

ユーザーに聞くことでしか得られない情報、そこから導ける答えがある、と信じ、ユーザーに何度もプロダクトについての意見をいただき、私たちはようやく「過去の自分を感じながら歩く」という納得のいく結論に至ります。

ユーザーに始まり、ユーザーに終わる。ユーザーの事を考え続ける半年間でした。

試行錯誤の結果納得のいくプロダクトが形になりとても充実した半年間になりました。

slide

poster

reflection & message

team life の「L」

伊藤鑑

東京工業大学 修士1年

【振り返り】
良かったこと:これが青春なんだなあという時間を過ごすことができた
反省していること:濃密な時間だったけど余裕がなかった

EDPでプロダクトを創るということ、ユーザーに寄り添うということ、チームで進めるということ、の一端に“触れる”ことがようやく出来た気がします。始まる前はおこがましくも、知識として自分の中にあるだけであたかも自分はその能力があると誤解していました。チームメンバーと一緒に進めることで、自分の考えが如何に偏ったものであるのか、どれだけ知らないことがあるのか、できないことがあるのか痛感しました。また、これだけ多彩なメンバーが居ながらも、納得のいくプロダクトを創るまでにこんな大変な道のりがあることを実感しました。

とても充実した時間だったと思います。

【メッセージ】
半年間お疲れ様~~!そしてありがとう!!
楽しかったし、とても充実してたし、楽しかったです。

実は本当に最初の方は毎回mtg終わってから、あそここういう風に話した方が良かったかなとか、ここでみんな言えてないことないかなとか、余計に分かりにくくしてないかなとか、色々1人反省会をしてたけど、すぐに、分からないところは普通に聞きあえるし、それは違うとかこうしたいとかをちゃんと言い合える関係で、すごいいいチームだなって思いました。

みんなのすごさを若手芸人の異名みたいに表現して感謝を伝えたいと思います。
「3Dモデルとプロトタイプのえぐい技工士」江口尚希
公平な場回しと鋭い切り口皆勤賞」櫻井考平
「真面目な取り組みがチームのアイデアのかなめ」菅原加奈
「負けないのは気遣いと機械への思いのたけだ」竹田有希

最高の半年間になりました。ありがとう!!!

江口尚希

武蔵野美術大学 3年

【振り返り】
このEDPを通して、「生活者が潜在的に欲しいものに擦り合わせ続ける粘り強さ」と「クリエイティブとデザイン思考を共通言語化することの大切さ」の2つを学んだ。今まで感じていた「なんとなく良い」と思ったことを言語化し、それがどこから来たものなのかをとにかく徹底して繰り返すことで、これからデザイナーとして積み上げていくキャリアにおいて大変貴重な経験となった。

【メッセージ】
このEDPでは、東工大生3人と昭和女子大1人という普段のグループワークでは中々ないメンバーと制作した。

この授業では美大生が大切にしている感覚すらも言語化しなければならないため苦労したのだが、東工大生の3人は優しく言語化を手伝ってくれ非常に助かった。また、昭和女子大の方は美大生に負けないクリエイティブ発想を淡々と行っており、大変刺激になった。 本当に居心地の良いチームだったので、また集まりたいと考える。

櫻井孝平

東京工業大学 修士1年

【振り返り・メッセージ】
振り返るとEDPにおいて最も難しいのは日程調整かもしれないです。確かに二週間でインタビュー~プロトタイプを作って発表するという仕事量の多さや、まだデザイン思考やインサイトそのものを正しく理解できていない中でのフィードバックの複雑さ、そして 最終発表が近づく中での迷走、と困難は多くありました。しかしグループワークであることの大変さを最も痛感したのは日程調整であったからです。全員で意見が分かれることも多くあったため、要所で全員の意見をまとめた後に班での方向性をまとめたい。また全員の自分の中にはない意見を聞きたいのですが、なかなかいい日が見つからず立ち止まってしまったことが何度かあったと思うからです。そのため全員が確実に揃う授業の日をもっと大切に使うべきだったなと今は思います。最後に、多種多様な困難の中でも最後まであきらめず、ユーザとの対話を繰り返しながらのプロダクト制作に力を合わせてくれた班員全員に感謝しています。

菅原加奈

昭和女子大学 3年

【振り返り】
EDPに参加できて本当に良かったと心から思います。

大学3年生の今、EDPに参加したことは大いに意義がありました。ここに来たからこそ学べたことも多々あります。そのひとつが、ディスカッションへの参加姿勢です。私のチームは非常に発言がしやすいチームだったと思います。私が「これ絶対違うやつだ…。」と思って出したアイディアも1度も否定されたことは無く、むしろプロトタイプを作ってみようとなったりしました。お互いが否定することなく、意見を受け入れた上で違うアイディアを提案するような、丁寧なやり取りがあったからこそ、どんなアイディアでも言えたし、分からないことがあっても分からないと言えました。何事も恐れずに発言することも大切ですが、自由に発言できる環境作りも重要だと知りました。

私がこのEDPに来た最大の目的は、考えを実際の物として形にするということでした。だから、最終日、実際にrhybibleのプロトタイプを持って、その振動を体感した時、本当に感動しました。POV創出、アイディア出しで苦しみ、中間発表後に1から全てやり直し、ターゲットを決め直し、またプロセスを繰り返し、提出前日までインタビューをさせて頂き、やっと完成させた、汗と涙の結晶であるrhybibleがこの手にあるのだと実感し、胸がいっぱいになりました。これは何事にも変えられない経験だと思います。

私は、当初自分のやるべきことが分からず、居場所を見つけるのに必死で、余裕がありませんでした。しかし、チームメンバーをはじめとした、周りの方に恵まれていたので、そんなに焦る必要はなかったと、今なら分かります。そんな皆さんのおかげで、プロジェクトが進んでいくうちに、自分に何ができるのか、何をすればいいのか、どれを人に任せるべきなのか、自分の立ち位置が見えてきました。

EDP・EDAのチームメンバー、メンターの皆さん、他チームの方々、先生方、TAの皆さん、インタビューに協力してくださった皆さん、サポートしてくれた家族・友人、感謝してもしきれません。支えてくださった皆様、本当にありがとうございました。

【メッセージ】
半年間本当にありがとうございました!

EDPに参加していた期間、夜遅くまでzoomをしたり、朝早くからデザイン工房で作業をしたりとスケジュール的にも忙しかったです。それなのに、様々なところでつまづき、苦労しました。しかし、もう辞めたいと思ったことは一度もありません。それは、このチームの居心地が良かったからだと思います。お互いの意見を尊重しつつ、意見が違うことがあれば正直に言えるような環境であったこと。その上で、ちょっとした隙間で歌を歌い始めたり、ラップバトルが始まったり、プロトタイプの材料であやとりしたり、そんな何気ない時間が、すごく楽しかったです。

真面目な時は真面目で、ふざける時はふざける。そのメリハリが、大変な中で、充実感と楽しさとを両立させたのだと思います。

今度別の機会でグループ活動する時には、このLIFEのようなチームを作りたいなと思います。

TA並の知識量で引っ張ってくれた伊藤さん、rhybibleを形にしてくれた竹田さん、コミュ力の鬼櫻井さん、最強CGを出してくれる江口くん。皆さんがいるこのチームでEDPができて本当に良かったです。ありがとうございました!

竹田有希

東京工業大学 修士1年

【振り返り】
3・4学期はEDP頑張ろうと思っていたので、忙しい中でもみんなで集まって議論してプロダクト完成までたどり着けて嬉しかったです。みんないいアイデア出したり、スライド資料作ってくれたりして、自分も何かできることはないかなと思っていたので、最後にプロトタイプで貢献できたので良かったです。プロトタイプは最後に一気に作ってしまったので機能や見た目にもうちょっと凝りたかった!次このような機会があれば、最初からどんどん作っていきたいと思いました!あと一人で作るのはなかなか大変だったので、次は分担して作業を進めたらもっといいものができるんじゃないかと思いました!最後に、全然違うバックグラウンドを持ったみんなと夜遅くまで議論してEDPの世界に浸れてとても楽しかったです。EDPの経験を活かしてお互い頑張っていきましょう!!!

【メッセージ】
to 伊藤 鑑
POVやインサイトの抽出、スライド作りがプロ。うちの班だけ専属TAいるかと思うくらい、めっちゃ頼りにさせてもらいました。先陣を切って発表をしてくれたりアイデアを最初にシェアしてくれたりと自ら見本となるリーダーとしてチームを引っ張ってくれました。あと、時々出るギャクがちょうどいいしょうもなさで好き(笑)今後もデザイン思考を極めて行ってビックな男になってください!

to 櫻井孝平
ほぼ全てのミーティングとインタビューに参加してくれて、チームの活動が止まらないようにしてくれてありがとう!インタビューではなかなか聞けない質問もストレートに聞いてくれて本音を引き出してくれました。特に死について深堀りするのは櫻井じゃないとできん(笑)また最終発表ではデザインプロセスを一人で担当してくれてめちゃ感動するプレゼンをしてくれた。これからEDPの経験を活かして就活や研究頑張ってください!

to 菅原加奈
積極的に発言してくれたりしていつも助かってました!いつもいいアイデアを出してくれて最後のプロダクトも菅原さんのアイデアから派生したのでめっちゃ感謝!時にはめちゃめちゃクレイジーなアイデアを出して、サイコ感が垣間見えたのはめちゃおもろかったわ。発表では動画編集とストーリーボードを担当してくれてどちらも高クオリティすぎで脱帽でした。菅原さんなしではうまくいかなかったと思う!ありがとう!これからの活躍が楽しみです!就活がんばってください!

to 江口尚希
えぐちゃんの3Dモデルがえぐすぎていつも鳥肌ものでした。いつも夜遅くまで制作してくれて本当にありがとう~! 最後のポスターもすごい出来だった。えぐちゃんのわざと逆を考えるような思考は考えたことがなかったので、美大生はこう言う考えでアイデアを考えるのかとすごく参考になりました。クリエイティブなアイデアを生かして将来も大活躍してください!

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