2021年度EDP「Tracan」Team8-きゅーとパニック

排泄物すらおてのもの。

私たちは、Panasonic様とコマツ様から頂いたテーマ、「災害と日常が隣り合う未来で『災害に備えない』製品体験をデザインせよ」に取り組みました。そして私たちが提案する製品はこちらのTracanです。

これは災害時にトイレが使えなくなった家庭向けの、トイレとしても使用できるゴミ箱です。この製品には「投入されたゴミを乾燥させる」機能があります。また、凝固剤を入れて処理する簡易トイレとは異なっていて、排泄物を抵抗感なく処理することが出来ます。

それではこちらの動画をご覧ください。

私たちはこの災害のテーマに取り組むにあたって、実際に被災された方にインタビューを行いました。その中で次のようなお話を聞きました。

東日本大震災で断水の被害に遭い、トイレが流れなくなってしまった家庭で、流れないトイレに用を足し、排泄物をトイレの中に溜め続けたというお話です。

このお話をしてくださった方は、そのトイレの見た目や匂いがひどくなったことで、トイレを使うことを我慢するようになり、お腹を壊してしまったそうです。

そこで私たちはこのように思いました、

なぜビニール袋などの他のものに用を足すことを考えなかったのだろう?と。

それは、普段とは異なり自分で処理を行う点に問題があるからです。

図に示すような簡易トイレでは、排泄後まず自分の排泄物の入った袋を縛ります。そしてすぐに捨てられるわけではないのでどこかに運び、そこに数日間放置し、最後に捨てることになります。このように、簡易トイレを使う際には普段必要のない行為を多く強いられます。

ただでさえ自分の排泄物の入った袋なんて触りたくないのにすぐに捨てることはできない、という点に問題があるのです。

そこで私たちは、どうすれば排泄物を嫌悪感なく一時保管して処理できるだろうかと考えました。

この排泄物に対する嫌悪感の原因は主に二つあり、一つが強烈な臭いであり、もう一つが独特な柔らかさです。

私たちは、乾燥させることでこの嫌悪感を解決できるのではないかと考えました。実際に排泄物を乾燥させてみたところ、どちらの嫌悪感もなくなり、素手で触ることさえできました。

そして、これが私たちが制作したTracanです。

この製品には二つの機能があります。一つ目が、ゴミ箱の中のものを約60度の温風によって、袋を溶かさずに乾燥させることができる機能です。

もう一つが、袋を最上部以外で自動で縛ることができ、ゴミ袋の下部分を密閉空間にできる機能です。これによって、乾燥させるまで排泄物を溜めておくことができます。図の赤丸で示した部分が縛っている部分になります。

実際に災害の時は次のように使います。

先程紹介した途中で縛る機能を用いて、密閉空間ではない上の部分に排泄を行います。そして排泄後、縛っている部分を一時的に開き、上にある排泄物を落とし、再び閉じることで、密閉部分に排泄物を溜めていくことが出来ます。そして、普段のトイレが再び使えるようになったら、溜まっている排泄物を全て一度に乾燥させることで、あとは普通のゴミと同じように排泄物を捨てることが可能となります。

災害時は電力を使えない可能性がありますが、袋の下部に密閉空間を作る機能によって、すぐに乾燥させる必要はなく電力の心配はありません。

また、上部にした排泄物がきちんと下部に落ちず、こびりつく可能性を懸念される方もいると思います。しかし、その程度の残った排泄物であれば、モバイルバッテリーほどの容量のバッテリーを積んでおくことで、その部分の排泄物のみをすぐに無力化させることは容易です。

この製品は、日常で使用する際のゴミ箱としても、優れた機能を持っています。

ゴミ箱の悪臭の原因である生ゴミですが、この製品を使えばその悪臭も消すことが出来ます。生ゴミを捨てるタイミングは、夜にまとめて一度という家庭が多いと思うのですが、その際に密閉空間ではない上の部分に生ゴミを捨てることで、生ゴミだけ乾燥させることが出来ます。次の日には無臭となり、とても小さくなった生ゴミが他のゴミと一緒に溜まることとなります。

災害等でトイレが使えなくなってしまった時も

そう、あなたの家にあるこのTracanがトイレになり

排泄物を嫌悪感なく簡単に捨てることが出来ます

このプロダクトについて 人数の多いご家族を対象に意見を伺いました。

災害時に一つの袋で何回も用を足せるのが人数の多い家族には嬉しい!

生ゴミの処理が普段使うゴミ箱でできて、しかも災害時にトイレとして使えるのか!

といったご意見を頂きました。

排泄物すらおてのもの。

皆様もこのTracanで災害時の不安を解消し、普段のゴミ問題も解決しちゃいましょう!

次に私たちがどのようなプロセスを経てこの製品に至ったかを紹介します。

私たちは、「災害と日常が隣り合う未来で『災害に備えない』製品体験をデザインせよ」というテーマに取り組みました。私たちは、災害が遠い存在すぎて、テーマの言葉があまり理解できず苦しめられていたように思います。

インタビューについても、被災経験のある方を見つけることが難しかったため、災害ボランティアの方にインタビューすることにしました。しかし、そこでは命に関わる問題が印象に残ってしまい、災害発生直後に命を救う製品を作りたいと思うようになり、このような過去のプロダクトを提案していたのですが、先生やメンターさんたちには刺さらず悩む状況でした。

フィールドワークも設けていただいたのですが、そこでも表面的なインタビューしかできず、一人一人が持つその人だけの問題を見つけられずにいました。そんな時、メンバーの一人が研究室の先輩に「被災経験のある人身近にいないですか!?」と半ば半ギレで聞いたところ、

「まあ、俺が一応あるよ。石巻出身だし。」という衝撃の一言が飛んできて、ここで私たちの運命が変わることになります。この人にインタビューをしていき深ぼっていくと、その人にしかないような課題が見えてきて、私たちのプロダクトに生かされていきました。

そこで誕生したのがプップトラッシュです。これは、先ほど提案したTracanの原型となった案で、津波で4日間2階に閉じ込められてトイレが使えなくなった人の問題を解決しようとしたものです。この時期には、日常についてもとても考えるようになり、メンターさんにも「備えないってこれこれ!」と言っていただけました。ようやく私たちも先が見えるような感覚だったのですが、この時のメンバーそれぞれのトイレの問題に対する向き合い方が違っていて、ぶつかっている間に1週間が過ぎ、

中間発表では「NOT GO」。本当にこれが君たちのやりたいことなのかと先生に言われてしまいます。同時に考えていた他の課題の方にやりたいことがあるのではと言われ、そちらを深掘っていきました。ですが、

私たちの頭の中はトイレでいっぱいで、他の課題を考えていても、トイレのことしか考えられなくなっていました。便器の存在がトイレの空間を作るのか?うんこから出る見えない空気がうんこを嫌な存在に変えてしまうのではないか?のような、最初に聞いた人には本当に意味の分からないことをずっと議論していて、そんな状況になるぐらいならトイレの問題で行こうと進む方向を決めました。

ここからはうんこと連呼してしまうのですが、私たちは本当に真剣にこの問題に取り組んだことをちゃんと伝えたいので、あえて使わせいただきます。ご了承ください。

もう一回トイレの問題に取り組むと、普段は一期一会の関係なのに、何度も出会う機会が訪れることが問題なのではないかとなりました。いつもは水洗トイレで、すぐうんことお別れができるのですが、災害のような特殊な状況になると、自分自身で処理しなければならないので困ります。

困るのであれば、いっそのこと触れ合えればいいのではないかと思い、それを解決するために乾燥という道を選びました。

なぜ乾燥を選んだのかというと、私たちは2つの実験をしているからです。

一つ目は、うんこを乾燥させた実験で、実際に犬のフンを乾燥させたものがここにあります。この場にも何人か触った人がいると思うのですが、袋の上からだと結構触れます。

でも、二つ目の簡易トイレで凝固剤を使う実験では、その袋を家の中のゴミ袋には入れてられず、ベランダにダッシュで持っていき放置するような結果になってしまいました。これらのことから乾燥はうんこと触れ合えるようになるものだと確信を持ちました。

完成はギリギリになってしまいましたが、私たちは自信を持って提案しています。

排泄物すらおてのもの。打倒うんこに乾燥という新たな対抗馬を。これにて私たちの提案は終わります。

各メンバーの振り返りとメッセージ

岡嶋佑弥(東京工業大学大学院)

・振り返り

長いようであっという間の半年間でした。みんなポテンシャルの塊みたいな人ばかりで、不安だらけだったけど、チームメンバーに支えられ、最後までやり遂げることができました。いろいろなバックグラウンドを持った人たちの集まりだったので、自分では考えられない新しい視点をたくさん吸収して、多くのことを学べたと思います。このプロジェクトで得たものを今後に活かしていきたいと思います。

・メンバーへのメッセージ

みず

いつも元気いっぱいで、チームの雰囲気を明るくしてくれたね! 自分の家に生ごみ乾燥機を持っていって、犬のうんこを乾燥してくれたのは、正直驚きました。 それを実際持ってきてくれて、全然匂いがしなかったことを今でも覚えています。 その行動力のおかげで、最終的なプロトタイプが完成できたと思います。ありがとう。

のぐ

最初は自分の意見をあまり言わない人だなって思ってたんだけど、中間発表が終わったくらいから、積極的に話すようになってくれて、チームの雰囲気も良くなっていったと思います。つぶやきチャンネルめっちゃよかったよ!また銃乱射してるところ見たいな(笑)

Tk

仙台でのフィールドワークでは、インタビューイーに対して、積極的に質問してくれたね。メンターさんにも、自分の意見をたくさん話してくれて、議論が進みました。ありがとう。

ふじ

藤巻さんは、デザイン工房に住んでいるんですか?笑 それくらい、EDPに対する熱意がすごくて、藤巻さんにたくさん甘えてしまいました。 でもそれを嫌な顔一つせず、引き受けてくれたね。ありがとう。 個人的に、マフラーぐるぐる藤巻巻きの印象が強かったよ。

川久保辰真(東京工業大学大学院)

・振り返り

1年間通して学んだことの中で大きかったのは「不確かさ」への耐性が少しずつできてきたことなのかなという気がしています。答えがあるのかどうかもわからない、正しいのかどうかもわからない、そもそも正しい答えがない、という状況の中でも、試行錯誤を繰り返し、じぶんたちにできる最善の方法で解決していくプロセスに対して、怯まずに立ち向かっていくことは、今後のあらゆる挑戦に生かせる良い経験になりました。

・メンバーへのメッセージ

テーマ自体の解釈からはじまり、どういう方向で進んで行けばいいのか、正解のない悩みが非常に多くあった中でも、メンバーの各々でアイディアを出しあい、何が本当に解決すべき問題なのかを深く議論しあえたことに、とても感謝しています。半年間大変なこともありましたが、メンバーの皆のおかげで進んでくることができました。本当にありがとうございました。

野口由梨香(東京工業大学大学院)

・振り返り

振り返ればテーマ決定以降波乱万丈のチームだったと思います。 災害という大きなテーマでやりがいがあり方向性もわかりやすいと思っていましたが、テーマの解釈において迷走につぐ迷走が起きました。また被災経験があるインタビュー対象を探し当てるのは本当に難しかったです。 そしてアイデア作りで議論が起こることは覚悟していましたが、実際にやってみてここまで考え方に違いが出るものかと思いました。個々のアイデアへの意見というよりも、最終的にどんなものを目指すかというゴールの違いを強く感じました。 しかし大変だったからこそ成長できた部分はあると思います。開始時点でプロトタイピングの知識はほとんどなかったのですが、思いがけずプログラミングの知識が生きて貢献ができて良かったです。

・メンバーへのメッセージ

色々ありがとうございました。 議論がとても長いチームだったと思います。一生分のPOVを考えた気がします。最終的には拘ったからこそ良いものが作れた気もします。 また言いたいことを言いやすい雰囲気を皆が作ってくれたので伸び伸びやれてありがたかったです。 しかし定時は大事

藤巻汐梨(武蔵野美術大学)

・振り返り

美大で学んできたこととは全然違うことが評価されるように感じましたが、それを面白がって参加してE D Pに楽しく取り組むことができました。最初は何を発言したらいいかも分からず、モヤモヤを抱えていることありましたが、受け入れてくれると思って意見を言えるようになれたのは、自分にとってとてもよかったです。今回参加して、まだまだ自分に足りないところがたくさん見える良い機会になったので、もっと成長できるように頑張っていきたいと思います。

・メンバーへのメッセージ

岡嶋さん

時間がなくて焦ってる時でも、岡嶋さんが来てくれた時はその安心感のある声と話し方で落ち着かされてました。チームがピリついてた時も和やかにしてくれてたと思います。たまに私にとってよく分からない行動をしてる時もあったのですが、そのおかげでくすっと笑えて助けられたこともありました。岡嶋さんが調べてきてくれる記事とかはいつも面白かったです!ありがとうございました。

川久保さん

色んなアイデアを出してくれたり、意見を出してくれたりしてくれて、話し合いを活発にしてくれてとても助かりました。自分の研究の方も相当忙しいのに、私たちの方にも頑張って時間を割いてくれて、デザイン工房にも来ようとしてくれたことが嬉しかったです。2つのzoomに同時に入ってる人は初めて見ました。体調には本当に気をつけてください。ありがとうございました。

野口さん

最初はどう話していいか分からなかったのですが、だんだん野口さんからも話してくれるようになって、野口さんと話す時間がすごく楽しい時間に変わりました。帰ろうと言ってくれてたのだから、もっと一緒に帰れば良かったと後悔してます。オンラインでも意見をちゃんと考えて言ってくれて、自分の考えを見直すいいきっかけになってました。ありがとうございました。スイッチもありがとうございました。

水上さん

自分はチームにいて欲しかったタイプの美大生じゃなかっただろうし、物足りないなと思うことも多かったと思いますが、頑張ろうと思ってくれてありがとうございました。たまに出る大きな声とか怖かったですけど、いてくれなきゃ困ることの方が断然多かったです。いざとなった時にこれがいいと言ってくれたから、できたソリューションだと思います。ありがとうございました。

水上光(東京工業大学大学院)

・振り返り

ちゃんと振り返るとあまりにも長い道のりすぎて疲れてしまうのでしません!ただ全てが終わって今思うことは、全力を出し尽くして良かったと思います。もうこれ以上は今の自分には出来ません。そして、このTracanは今のところ自信を持ってもいいチームの成果になったと思います!でも、それもまた考え出すと違うんじゃないかと思えてきて、気づけばさらにいいものができるんですよね。不思議です。うーん不思議ですねえ

・メンバーへのメッセージ

おかじ(岡嶋くん)

説得力のある声のトーンと話し方がほんと真似したいよねえ。こうすればいいじゃんとかを次々出す時もあれば、急にDiscordにURLを無言で投下するみたいな時もあってチームにいいスパイスを常に提供してくれてほんと感謝。発表二日前に二人しか作業できなくて、プロトタイプの作成に焦りながらも取り掛かったのはいい思い出ですねえ。動画の出演承諾してくれてありがとね!

Tk(川久保くん)

ほんとに宇宙関係の研究室ってブラックなんだなと学べました!笑まあそれはさておき、参加できる時間が研究で限られてる中でもできる限りやってやるって気合がほんと尊敬。最後まで自分がやれることを見つけてやるって部分と、チームいちの行動力にみんな助けられてたなって思います!発表日に初めてプロトタイプとご対面だったのに、デモを完璧にこなしてくれて流石すぎました!半年間ありがとね!

姉さん(野口さん)

ズームでも対面の時と同じくらい喋る人は初めて出会いました。なのに、俺がズーム苦手すぎた故によく対面に呼び出してごめんよ!いつからか気づけば心を開いてくれて、お菓子をたくさん供給してくれたこと忘れません。胃袋を掴まれるとはこのことなんだと感じました。野口つぶやきますはほんと最高だった!ほんと最高!色々と大変だったとは思いますがどうもありがとね!

藤巻さん(藤巻さん)

今後は底に眠ってしまった美大生としての感覚を取り戻す訓練になりますよね。まあそれもいいんじゃないんですかね。これだけバッチバチに議論するなんて中々ないですもんねえ。発表当日の夜中の2時に、俺が急に議論を始めた時も、今考えれば発表準備一切できてない状況でよく付き合ってくれたなって思いますね。感謝です。発表では声をぶるぶる震わせながらうんこを連呼した姿はもう圧巻でしたね。色々とお疲れ様でした。

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