プロトタイプであそぼう

「東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト」では、単に思いついたアイデアを発表するだけでなく、プロトタイプの実装まで含めて実践しています。「プロトタイプ」といっても、ひとつだけ作ればいいわけではなく、段階に応じて複数個作ってもらっています。ここでは、各プロトタイプの種類を紹介します。

P1: Critical Function Prototype 🎯

まずは、ユーザーの課題を理解するためのプロトタイプです。この段階では、紙芝居や段ボールなどを使った「雑なプロトタイプ」で十分です。「デザイン思考」の手法でよく用いられるプロトタイプですね。ユーザーリサーチとあわせて使うと効果的です。

リーンスタートアップの用語を使うなら、課題/解決フィット(PSF: Problem Solution Fit)のためのMVPといったところでしょうか。ここが外れていると話にならないので、複数のバリエーションを作りながらアイデアを発散させ、「解決に値する課題(problems worth solving)」を探っていきましょう。

P2: Darkhorse Prototype 🐴

イノベーティブなプロダクトを作るには、既存の考え方や手法を覆す必要があります。一方で、いつもとは違うやり方をしていると、あとで破綻する危険性があります。そのバランスをうまくとるために作るのが、次の「ダークホースプロトタイプ」です。競馬でいう「穴馬」です。ある程度リスクを許容しながら、思い切ったデザインをするきっかけを与えてくれるものになります。一時的に「正気を捨てて😎」取り組むと、思わぬアイデアが思いつくはずです。

P3: FunKtional Prototype🐒

これまでの知見を総動員して、まずはすべての機能をひとつの塊にまとめてみるのが、このプロトタイプです。Functionalではなく、Fun「K」tionalになっていることから、「ファンキープロトタイプ」とも呼ばれます(funky: イケてるみたいな意味)。ちなみに、アイコンとして猿が使われることが多いようです(ダジャレですね……)。

P4: Functional Prototype 🚚

今度は「K」ではない本当の「Functional」プロトタイプです。まだ完全には動かないものの、最終段階のプロダクトをイメージしたものになります。このあたりから少しずつアイデアを「収束」させていきましょう。

ビジネスであれば、投資の意思決定をすることになるでしょう。なお、ここから先で大幅な転換を行なうと、実装コストが高くつきます。

P5: X-is-Finished Prototype 🚗

中心的な機能がきちんと動くプロトタイプです。中心的な機能とは「狩野モデル」の「魅力品質」と考えるといいと思います。

「安全性」も最重ですが、決定的な差別化要因にならない限り、あとで担保すればいいでしょう。まずは、中心的な機能が有効かどうかを判断できるようにプロトタイプを作りましょう(もちろんユーザーテストのときは安全性にも配慮してください)。

P6: Final Prototype 🏎

最終的なプロトタイプです。ハードウェアであれば、量産化の前の試作機にあたります。これまで「相手の想像力」に補ってもらっていたユーザーテストも本格的なテストが可能になります。


上記の6種類のプロトタイプを講義用のスライドにまとめています。あわせてご参照ください。


なお、上記の区分は、スタンフォード大学のME310コースのモデルがもとになったものです。「東京工業大学エンジニアリングデザインプロジェクト」もME310を大いに参考にしており、講義開始時には必ずLarry Leifer教授の言葉「Dancing with Ambiguity」を復唱しています。