知識社会を生きる

koji iyota
といてら豊浦
Published in
4 min readFeb 28, 2018

知識社会とは現代の哲人と呼ばれるピーター・ドラッカーが提唱した言葉だ。最大の資源が「資本」から「知識」に置き換わる社会。この転換が始まったのは第二次世界大戦直後のことで、すでに何十年も掛けて進行を続けているが、この転換における社会への本当の影響は2010年から2020年にかけて起こるという。未来の経済・社会学者たちは、2018年の今を振り返り、まさにそうだったとうなずくのだろうか?

知識とは、目的のために組織化された専門知識

知識社会を生きるとは、まさにこの「知識」を産み出す力が問われることとなる。知識は知識そのものをあっという間に陳腐化させる。個人が抱える問題だけでなく、自分が身を置くコミュニティや社会が直面する問題を解決するため、これからは様々な事柄を常に学び続ける必要がある。そのためにも、どのように学べばよいかを学ぶことがますます重みを増してくる。

学び方を学ぶ

「学習」とは、「個人の経験を自己組織化する現象」である。つまり、集まる人、場所、前提知識、経験、その場の要素によって「多様な形」を作り出す。

「多様性」...私たちがこの学校に築き、育んでいきたい大切なことのひとつ。この多様性に富んだコミュニティで育った子どもたちは、お互いを認め合い、そして、ありのままの自分を受け止め、自己肯定感を育んでいく。

世界中に1,000校以上にもなったシュタイナー学校。そのうちのどれひとつとっても「ピュア」なシュタイナー学校などないという。豊かな自己肯定感を持った卒業生が多い所以である。

また、学ぶということは極めて個人的な作業でもある。つまり、どうすれば生徒たちを自分の得意なことに、自分の強みに集中させられるかがテーマとなる。自分の好きなこと、得意にしている能力に磨きをかけること...学校にとって、こうした環境づくりが大切になる。

学ぶための最良の方法は人に教えること

11年生(高校2年生に相当)の情報の授業で、生徒たちは学習方法(学習効果)について学ぶ。思考の力がめきめきとついてくる彼等は、「メタ認知」というひとつ上の認知を身につけるようになり、自分の学習パターンについても知ることができるようになる。効果が上がる時もあれば、上がらない時もある。自分なりの良い学び方を試してみることができる。「自分の学びにはこういう傾向があるようだ」、「自分はもっとこうした方がいいのではないか?」...自分自身の学びを認識し、さらに改善していくことで学びそのものが加速していく。彼等が個人個人で、しかも自分のペースで学ぶことが出来るように、自分自身の学習方法を磨き続けて欲しい。

講義を聞く、読む、実演する、討論する、体験する...様々な学習方法の中で、「人に教える」ことの効果を、彼等は自分自身の体験から学んでいく。

「この教室の中で最も効果的に学んでいる人は?」

「...?」

「この授業で皆さんに教えている私です!」

「え〜、先生ずる〜い!」

冗談交じりでも「先生ずる〜い!」と思えることに生徒たちの成長を感じる。

「では、みんなも今日学んだことを誰かに教えてみては?」

いずみの学校で学んだ息子たちの親としての記憶が蘇る。今日学校であったこと、先生が言ったこと、友達がしたこと、自分がその時考えたこと...毎日のように息子たちはたくさんの話しを聞かせてくれた。私はそれを目を細めて聞いていたことを思いだす。そう、これがいずみの学校での学びだったんだと改めて思う。そして、さらに親としての学びも、まさに放課後の家庭にあった。その時の「教師」の役割はまさに目の前の子どもたちが担っていた。家庭で子どもたちの話しを聞くこと...かけがえのない時間だった。

いずみの学校の卒業生が伝えたいこと

昨年のいずみ祭において、いずみの学校の卒業生による初めての公式行事として行った「ホームカミングデー」。卒業生の言葉、歌、立ち振る舞い...その全てを在校生たちは改めて噛み締めていたに違いない。それは、いずみの学校というコミュニティそのものの「メタ認知」の機会でもあった。いずみの学校を卒業した彼等にとって、自分が学んできた学校は外から見るとどのように見えるのだろうか。いずみの学校に係わる大人の一人として、卒業生とはこれからも共に探究を続ける仲間として一緒に歩んでいきたい。

高等部「情報」担当 井餘田 浩司

※この投稿はいずみの学校オフィシャルサイトに2018年2月に掲載されたものを再掲載したものです。

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koji iyota
といてら豊浦

高校で教鞭をとりながら「人を育てる」役割を担う人が学び続ける場を運営するラーニングデザイナー&ファシリテーター。toiee Lab パートナー。「学ぶことは楽しい!」を広く伝えるため奮闘中。家族は妻ひとり息子三人。妻の作るつぶつぶ雑穀料理にハマってます。