いきなり触っちゃえ。Illustrator講座。

テキストを買ってきて、1ページ目からにらめっこ......。それより作りたいものをとにかく作っちゃったほうが、身につくのが早い。「凝る」のはそれから。

Illustratorを使って、もういきなりページレイアウトをしてしまう

徳島に出版社をつくろう!ということで、「出版社してみたい」人が集まり、皆で勉強してます。「徳島パブリッシングプロジェクト」。今日は第3回目の講座で、その内容は「ズバリ、Illustratorを使って自分でページを作ってみよう」。

学習のために、皆で徳島をテーマにした、フリーペーパーを作成しよう、できたものを県内各所のカフェや雑貨屋さんなんかに置いてもらおう、ってんで、1人1ページずつ担当。そのページを自分でレイアウトしてみよう、という話になりました。

参加者は全員初心者。誰一人としてIllustratorを触った経験がありませんでした。が、講師の コヤジュンジさんが、最低限必要な動かし方についてだけ説明。あとは自分でやってみてくださいー、という感じで進めてみたところ、みんな結構いい感じで使いこなせてる! これ、すごいおもしろい光景でした。

「とにかくつくる」が一番身につく

Illustratorですからね。プロ仕様なので、高度な機能、便利な機能が無数にあるのでしょう。が、基本は①素材を、②好きな場所に配置して、③つくりたいものをつくる。これだけです。

何をするためのソフトなのか。それと、基本中の基本の操作。それは知らないとマズいので、トンボのかけ方やレイヤーの作り方、それと「超こまめにセーブして!」ってことだけはコヤさんも伝えてたけど(笑)、あとは生徒の「こうしたい」に沿って、「ああ、じゃあ、そのやり方はこうですよ」って教えたほうが、圧倒的に身につくのが早いんじゃないかって、見てて思いました。

頭には「こうしたい!」ってのがあるわけじゃないですか。それに近づけるために今やりたいことがあって。それがどうしたらできるのか。で、最初から高度で洗練されたものができるわけがない。だから、最初は超シンプルで超ショボいもんをつくる。で、そこから、それを「少しずつよくしてく」。少しずつよくする過程で必要な操作を身につける。物事習得する上で、どう考えても、これが一番の近道だなあと。

とにかく作る。失敗する。少しでも改善したら「保存」。これすなわち、デザイン思考。

アイテムを取るとパワーアップ。口からレーザービームを吐けるようにしました。

ぼくは子ども向けのプログラミング教室を運営しているのですが、プログラミングも同じですね。子どもに対しては、また習い事としてじっくり取り組むにはテキスト、教科書での学習はもちろんとても重要だけど、でも「自分で作りたいゲームを作ってみる」。これ以上にスキルが身につくことはないと思う。

子ども向けプログラミング教室では、scratchって言語を使うのですが、講師はこれの使い方を覚えなくちゃなんない。で、いろいろサイト調べたり、テキスト見たりして、それはそれで勉強になるんだけど、でも、「ま、わかんないけど、とりあえずシューティングゲーム作ってみっか」「もぐらたたき作ってみるか」で、作ってみたら、作り終えたときには、だいたい必要なことは身についてるんですよね。

当然、最初は「敵をショボい玉で攻撃する。そんだけ」くらいの、とんでもなくつまらないゲームしかできない。

けれども「かっこいいオープニング画面をつけてみよう」「攻撃力がアップするアイテムを登場させよう」「中ボスやラスボスも出てくるようにしよう」「連写機能やダッシュ機能もつけよう」とやっていくと、ちょっとずつおもしろいゲームになっていく。

別に失敗したって、人を傷つけたり、自分が死んだりするわけでもない。だから、ガンガン失敗したらいい。失敗したらやめて、セーブしない。少しでもよくなったら、こまめにセーブ! ゲームづくりも組版作業も、そもそも人生そのものが、そんな単純な原理で動かしていけばいいだけの、シンプルなゲームなんじゃないか。

ビートルズの根本思想は「比較級」である

ぼくはビートルズが大好きなんですけど、ビートルズって「メイク・イット・ベター」(よくしてこうよ)って比較級が大好きなんですよね。声高に「最高だ!」とか「それが最善だ!」なんて、あまり言わない。

たとえば、一番有名なのは「ヘイ・ジュード」ですかね。

ご存知の通り、歌い出しの歌詞は "Hey Jude, don’t make it bad Take a sad song and make it better"「くよくよすんなよ。悲しい歌でも、よくしてきゃいいじゃん」です。

まんま「Getting better」って曲もあって。ここでは「I’ve got to admit it’s getting better A little better all the time (It can’t get more worse)」って歌ってます。「認めざるをえないよなあ。どんどんよくなってるって。いつだってちょっとずつよくなってってるよね(これ以上悪くなりようがないし)」ってことですね。

大変有名な曲ですが「In My Life」も「比較級」の愛の歌です。普通、ラブソングって最上級じゃないですか? 「あなたが【一番】好き」とか「世界にお前【しか】いない」とか。でも、ビートルズは比較級なんですよ。たとえば、この曲では、過去の友人や恋人、「そのすべてを愛してる」と歌った後、でも「in my life, I love you more」(ぼくの人生で、君をそれよりも愛してる)だって言うんですよね。

これ、意味的には最上級とほとんど同じですが、【ほとんど】ってところがミソで、論理的には「君以上に愛している人がいても別に嘘は歌ってない」ってことですからね。恋人かわるたびに同じ歌、歌っても全然嘘じゃないっていう(笑)。でもね、だから、いいんです。胸にグッときませんか? 「あなたが一番好き、愛してる」よりも、なぜか伝わるんです。

とまあ、こんな感じでビートルズって、だいたい比較級なんですよ。で、この「比較級」ってのは「最上級」とか「初手からベスト」より、よっぽどツブシが利くんですよね。

「いい文章を書く」方法はリライトである

文章だって同じです。いい文章を書く方法は①とにかく書く。②書いたものをリライトする。これだけなんです。どんな人だって、自分が書いたものを見直せばアラも見えてくるし、気に入らないところだらけのはず。でも、だからって、それを見て「やっぱり私は下手くそだ」ってんで、誰にも見せずに消してしまうより、とにかく一度、一気呵成に書き上げてしまったらどうですかね。で、その後から、気にいるように、気にいるまで、ちょっとずつよくしたらいいじゃないか。ってか、自分はそれしか「いい文章を書く」方法を知らないなと。

このmediumの文章も、自分で言うのもなんだけど、どれもヒドいもんだって思いますね(笑)。仕事で書いてたら、こんな書き方は絶対しない。修飾句のかかり方とか、表記の不統一とか、パラグラフとか、全部直したい。でも、直さなくていいかなーって。下書き、仕掛かりの文章ってことで、それを公開したっていいじゃないですか。

一生懸命書いたところで、全然反響ないかもしれないわけですよ。自分でも心の底から「つまんねえ」って思えるものかもしれない。それよりも、たくさん思いついたまま書いてって、よいものだけを残す。残したよいものをさらによくする(make it better)。そうしたらいいだけなんですよね。何なら他人にペンを入れてもらったらいい。一人で書かなくてもいい(Don't wite alone)んです。

それに、気にするほど誰も読んじゃいないですよ(笑)。つまんないこと書いて、ほんとにつまんなかったら引っ込めたらいいだけの話です。

さて、自分も、人生。これからどうしようかな。プログラミングもそうだし、編集ソフトも使いこなしたい。料理ももっと上手くなりたいし、動画編集を学んで、YouTubeに「番組」をアップしたい。徳島がおもしろいとかつまんないとか、まあ、現状はどっちでもよくて、でもそれを、ちょっとずつ楽しくしていきゃいいじゃん。って、自分はこんなことが書きたかったんだっけ(笑)。書いてみないとわからないなー。

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森哲平
トクシマ・パブリッシング・プロジェクト

1979年兵庫県生まれ。2011年より徳島に移住。2015年から徳島市沖浜町にて私設の図書館や子ども向けプログラミング教室を運営している。