渋谷。春。28歳。(ざまぁないし笑いごとじゃない)

右手に箸、左手にスマートフォン。濃紺スーツに身を包む。

21世紀型の最先端食事スタイルで僕らは290円のうどんをすする。無様すぎて泣けてくるけど、そんな視界を黄色い銀座線が鮮やかに横切る渋谷。季節は春。僕らは28歳。気温は22度。排気ガスと花弁と女子高生の笑い声とスタートアップの産声とIS関連のニュースが入り混じる風が吹いている。

あーもう、こんなとこまで来てしまったな。サラリーマンエンジニアとしての少なからず激しい平日と、婚約者とのささやかで贅沢な休日を過ごし、僕らはいつだって気がついたら20代後半になる。

失敗も現状の限界も知った上で、何らの自信をつけたりもする。自身など必要がなくて笑っているだけで幸せだった20代前半と、自信が必要になった今があったりもする。

やりたいことがやっと分かってきて、ひとりの人でも幸せにすることがこんなに素晴らしいことかと分かってきて、野望と平穏の間で揺れ続ける山手線に乗って窓越しに東京を眺めたりする。

青年期の終わりに思い出すのは、羊をめぐる冒険にあった台詞だ。ジェイが主人公に「あなたたちの世代はもう終わった」って告げる。それに対して主人公は返す。

「歌は終わった。しかしメロディーはまだ鳴り響いている」

どうだろうか。私は今、そんなことはないと思う。まだまだ早い。これからだと心から思う。

誰かしらと飲むにあたって、食べログ3.5以上のルールを取っ払って、向かう電車で語れる夢を考える習性を辞めれば、意外と僕らはまだどこにでもいける。

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