シビックテックの立役者たちが集うフォーラム(Personal Democracy Forum 2015) まとめ1

Marika Katanuma
TOKYObeta Journal
Published in
8 min readJan 15, 2016

「シビックテックの未来」をテーマにした「パーソナル・デモクラシー・フォーラム(Personal Democracy Forum)」が、2015年6月にニューヨークで開催された。「パーソナル・デモクラシー・フォーラム」はパーソナル・デモクラシー・メディア(政治やテクノロジーに関心のあるメディア会社)によって毎年ニューヨークで開催される。世界中から集まった政策立案者、ジャーナリスト、政治家や技術者たちに情報交換の場を提供し、異なるジャンルのプロたちのネットワークづくりを推進しながら、テクノロジーと市民参加を融合させる重要性を社会に伝えている。

今回は、昨年のパーソナル・デモクラシー・フォーラムで発表されたプレゼンテーションを5つ紹介する。

1. シビックグラフ:「つながり」のビジュアル化

ジョン・フォーマー / Microsoft, テクノロジー&シビックイノベーショングループディレクター

イメージ: THE CIVIC GRAPH: PUT YOURSELF ON THE MAP

シビックグラフは、NPOや財団の情報(寄付先、データ使用やTwitterのフォロワー数/従業員数などから推測された影響力など)をビジュアル化する。「どこ」で「だれ」が「どのようなデータをつかって」シビックテックに取り組んでいるのかを知ることは、資金源や協力相手を見つけるのに役立つとフォーマーさんは話した。

イメージ: Civic Graph

「私たちは、受け身で政府からの情報を待っているのではなく、オープンデータ・エコシステムに参加し、情報をシェアする。」 — ジョン・フォーマー

2. ニューヨーク公共図書館: 電子書籍の拡大

アンソニー・マックス / ニューヨーク公共図書館長

「すべての本を電子化し、世界中の人がインテリジェンスと創造性にアクセス可能な世界を創造したい。」アンソニー・マルクス

ニューヨーク公共図書館は書籍の完全電子化を目指すためには、世界最大のクラウドソースが必要であり、その作成にテクノロジーやスタートアップとパートナーシップを組むことは欠かせないことだとマルクスさん語った。その他の試みとして、子供達にプログラミングを教えるプログラムの無料提供や、脱デジタルデバイドを促進する活動にも力を入れている。現在、ニューヨークのWi-fiアクセスがない約1万の世帯に、寄付金を通じてWifiを提供する活動に取り組んでいる。

「私たちはテクノロジー産業でも、スタートアップでもない図書館です。このパズルを完成させるにはパートナーが必要です。」アンソニー・マルクス

3. アメリカ国会議事堂: ウーバーやリフトの発想を政治に取り入れる

キャシーマクモリスロジャーズ /下院党議員総会議長(ワシントン州)

イメージ: IMAGINING THE CONGRESS OF THE FUTURE

ロジャース議員は、国会議員に政治活動において、Twitter, FacebookやYoutubeなどのソーシャルメディアの使用増加を目的としたプロジェクトの立役者。今回のプレゼンテーションでは、現在99%の国会議員がソーシャルメディアを有効に活用していると話した。ウーバーやリフトのようなテクノロジーを駆使した革新的な発想が政治の場にも必要だと主張。

「19世紀のままの政治機関が、20世紀のテクノロジーをつかって、21世紀の問題を解決しようとしている状況を変えなければならない。」キャシー・マクモリス・ロジャーズ

4. Smart Chicago: シビックテックは雇用を生み出す

ダニエル・オーネル / スマート・シカゴエグゼクティブディレクター, Smart Chicagoは テクノロジーを使って市民の生活向上を目指す官民連携型の非営利組織

OPEN DATA AND MASS JOY

* オーネルさんはEvery Blockというデータジャーナリズムに特化したローカルニュースサイトの共同創業者であり、さらに2004年からオープンガバメント・オープンデータムーブメントに携わり、政策決定において、コミュニティーがデータを効果的に活用できる環境育成に取り組んでいる。

ダニエル・オーネルがエグゼクティブディレクターを務める団体スマートシカゴは、デジタルデバイド脱却、市民のデジタルスキル向上、そしてパブリックデータの有効活用を三本軸に活動している。今回のフォーラムでオーネルさんは、今までテクノロジーに関わってこなかった人たちにテクノロジーを普及させることの可能性について話した。スマートヘルスセンターと呼ばれるプロジェクトは、ヘルスナビゲーターと呼ばれる医療情報のスペシャリストを育成するトレーニングを実施。ヘルスナビゲーターたちは、ウェブ上の診断書の取り扱いなどを患者さんにアドバイスする。ヘルスナビゲーターは、今までテクノロジー産業とは無縁だった失業者や不完全雇用者である。わたしたちはサービスを届けるだけではなく、新しい人を巻き込んで、雇用を生み出しているとオーネルさんは語った。

「今までITとは無縁だと思ってきた人に(ITの)雇用機会を与える。」ダニエル・オーネル

5. Open Data 2.0: 文化の壁>テクノロジーの壁

ブライアン・フォード(MITメディアラボ・デジタル通貨ディレクター)

イメージ: BLOCKCHAIN AS THE NEXT PLATFORM

*フォードさんは電子通貨や仮想通貨(ビットコイン)の研究をする一方、プロックチェーンの原理を身分証名や資産管理などに幅広く活用するインキュベーションに取り組んでいる。政府機関のテクノロジー性政策チームで働いていた経歴あり。

イメージ: BLOCKCHAIN AS THE NEXT PLATFORM

インターネットはコミュニケーションの発達だけではなく、トランザクション処理機能も発展させたとし、その発展は多くのことを変えるとフォードさんは述べた。

イメージ: BLOCKCHAIN AS THE NEXT PLATFORM

フォードさんは、他人のログインIDやパスワードを用いた犯罪行為による年間被害額(24億ドル)が物理的な窃盗被害額(14億ドル)をはるかに上回るというデータを引用。社会保障番号のセキュリティー問題などを指摘し、従来の身分証名方法を代用するシステムとして、ブロックチェーンを利用した、身分証明のデジタル化の可能性を主張した。このブロックチェーンの幅広い活用には、政府、NPO, それから民間企業の協力が必要であるため、多くの人にこのブロックチェーンの幅広い活用をサポートする人が増えてほしい呼びかけた。

最後に、人々の現存する文化に対する執着心が、このブロックチェーンの幅広い活用に影響を与えていると主張した。

イメージ: BLOCKCHAIN AS THE NEXT PLATFORM

「政府にいた時に気づいたことは、テクノロジーの壁より、文化の壁が大きいということ。」ブライアン・フォード

パーソナル・デモクラシー・フォーラムは、あらゆる分野の人々が筆頭となってシビックテックの重要性を配信する多様性あふれるコミュニティーであるように思う。

「シビックテックの立役者たちが集うフォーラム(Personal Democracy Forum 2015) まとめ2 」へつづく

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