増え続けるクラウドファンディングによるジャーナリズムプロジェクト — そのトレンドとは?

Marika Katanuma
TOKYObeta Journal
Published in
6 min readJan 21, 2016

Pew Research Centerが1月20日(アメリカ時間)が発表した新しいレポート「 Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism」は、過去7年間(2009年末から2015年9月時点)でジャーナリズムに関連するクラウドファンディングのプロジェクト件数と、その支援金が着実に増え続けていることを伝えている。*Pew Research Centerのリサーチは Kickstarter (アメリカのクラウドファウンディングサービス)のデータを参考にしている。

ジャーナリズムに関するプロジェクトへの支援金の増加を示したチャート / イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

Pew Research Center によれば、2009年末、クラウドファンディングによって設立されたジャーナリズム関連のプロジェクトは17件であったが、2010にはその3倍の64件となった。さらに2014年は168件、2015年(9月時点)は173件と着実にその数を伸ばした。支援金の総額も2009年の$49,256(600万円)から2015年(9月時点)の$1,743,668(2億円) と約35倍の成長を記録している。

7割の出資源はジャーナリズム団体に属さない個人から

支援者のカテゴリータイプを示したグラフ/ イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

支援者全体の71%は、ジャーナリズム関連の団体に属さない個人が占める。メディア団体(ProPublicaやBoston Review)による支援は全体の22%で、公立学校や私立大学などの施設や機関からは7%となっている。

国別ではアメリカがダントツ

ジャーナリズム関連のプロジェクトの拠点を示したマップ/ イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

Kickstarterに投稿されたジャーナリズムに関するプロジェクトの拠点を国別でみると、アメリカが64 %と過半数を占めている。その他36%は、イギリスやカナダを筆頭に、6大陸全てを含む64ヶ国からなっている。

媒体は雑誌がトップ

ジャーナリズム関連のプロジェクトで、一番人気の媒体は雑誌で全体の20%を占める。オンラインニュースを配信するウェブサイトと本がそれぞれ16%と続いている。

従来型vsニューメディア

ファウンディングが成功したプロジェクトを媒体別に示したグラフ/ イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

ファンディングが成功した媒体のトレンドをみると、雑誌、本やドキュメンタリーといった従来型メディアが全体の43%を占めている。情報がネットで瞬時に手に入る時代だからこそ、長期間しっかりリサーチをして、深い考察のコンテンツを配信することや、ネット上に出回る情報のファクトチェッカーとして正しい情報を配信する価値の高まりが見てとれる。

支援金の集まりを媒体別に示したデータ/ イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

しかし、より高い支援金を集めているプロジェクトは、従来型メディアではなくウェブサイトなどのニューメディアである。ウェブサイト関連のプロジェクトが支援金全体の29% (2億1000万円)とすべての媒体の中でトップ。雑誌が16%(1億2000万円)、マルチメディアが15%(1億円)と続いている。

とはいっても・・・ジャーナリズムのクラウドファウンディングはまだまだ小規模

クラウドファウンディングのプロジェクト別のデータ/ イメージ: Crowdfunded Journalism: A Small but Growing Addition to Publicly Driven Journalism

その他クラウドファウンディングのカテゴリーと比べると、ジャーナリズムのプロジェクト数や支援金は少ない。映画とビデオに関するプロジェクトがプロジェクト数、そして支援金ともにトップで、ミュージック、出版、テクノロジーがあとに続いている。

資金集めの新しいかたちとし定着しつつあるクラウドファウンディングが、これからどのようにジャーナリズムに影響を与えるか、ますます注目が集まる。

Pew Research Center が発表したレポートの全文は、こちらから読めます。

--

--