今年のテーマは「What We Do Now」、Personal Democracy Forum2017 #pdf17

江口晋太朗 | SHINTARO Eguchi
TOKYObeta Journal
Published in
9 min readMar 11, 2017

インターネットの未来、デジタルガバメント、マイノリティや人権問題といった、Democracyについて議論するPersonal Democracy Forum(以下、PDF)が毎年6月上旬頃開催される。カンファレンスには、ジャーナリストやエンジニア、ハッカー、ロビイスト、アクティビスト、行政関係者など、さまざまな人たちが集っている。PDFを主催するPersonal Democracy Mediaは、一昨年にCivic Hallというコワーキングスペースも運営し、さまざま社会的活動をする企業や個人、団体を支援している。

PDFでは毎年テーマが設けられており、先日PDF2017のサイトがオープンした。今年のテーマは「What We Do Now」。テーマとともに、以下のステートメントが述べられている。

These are not normal times in America. Democracy has never seemed at greater risk, and also has never seemed more alive. We have a present danger to resist and a better future to build.

“These are not normal times in America ”つまり年初のトランプ大統領の就任などを経て、アメリカ自体がDemocracyのあり方が岐路に立たされているなか、これからの未来に向けて何ができるかを考えていこう、ということだ。

ちなみに、これまでのカンファレンスのテーマもいくつか羅列してみる。

2017 What We Do Now
2016 The Tech we need
2015 Imagine All the People: The Future of Civic Tech
2014 Save the Internet The Internet Saves
2013 Think Bigger
2012 The Internet’s New Political Power
2011 Agents of Change

参加者にはSunlight FoundationやKnights Foundation、Code for AmericaやChange.orgといった企業や財団関係者らが参加している。 2014年はスノーデンがビデオ出演し話題を呼んだ。2011年には、Creative Commonsなどインターネット時代の新しい著作権や法律のあり方を提唱したローレンス・レッシグ教授が登壇したり、2010年にはアリアナ・ハフィントンやCraigslistのCraig Newmark、ジュリアン・アサンジが登壇するなど、まさに2000年台後半からテン年代前半のアメリカにおけるテクノロジーやガバメント、メディア関係者らが集う場として成長を果たしてきたカンファレンスと言える。

Personal Democracy forum2016の様子

昨年、私もこのカンファレンスに参加した。昨年は大統領選の最中だったこともあるのと、このPDF自体がオバマ政権化で登用された人物も多く民主党寄りな人たちの集まりであることもあり、カンファレンス内のセッションでもトランプ氏の登場とDemocracyが抱える問題に関するトークセッションもあった。バーニー・サンダースの選挙参謀の人が登壇し、どのようにして選挙を盛り上げ、コミュニティをつくっていたかということをプレゼンしていた。本来は、民主党はサンダースが大統領候補となることを見据えた登壇打診だったのかは今となっては分からない。だが、こうした選挙の渦中にいる人物が登壇するあたり、PDFは確実に政治的なイベントでもあるし、民主党寄りな、また、一部はサンダース陣営に親しいコミュニティであるのかもしれない。

セッションでは、人工知能などのテクノロジーの進化をどのように捉えるか、SNS時代におけるプライバシーのあり方、フィルターバブルから脱するための方法、アメリカでいまだガラスの天井がある女性の社会進出や女性の企業内幹部を育成するための教育プログラムについてや、黒人問題に取り組むアクティビストなど、さまざまな人たちがプレゼンしていた。

社会的投資を行うOmiddyar networkのStacy Donohue。テーマは「Engines of Change: What Civic Tech Can Learn From Social Movements」

その様子を見ながら、アメリカが持つ多様さと多くの課題を抱える姿を目の当たりにした。同時に、マイノリティに関するムーブメントを含めた多様性をいかに確保していくか、テクノロジー礼賛よりもテクノロジーが発展しすぎたことによる、倫理観の欠如などについての省察や反省モードのような状況だった。だからこそ、テーマは「The Tech We Need」だったのだろう。

このPDFに参加した数名の日本人らによる報告会でも、こうしたアメリカの現状やインターネットを取り巻く状況を踏まえた議論や、日本におけるシビックテックやオープンガバメントも含めたDemocracyのあり方についてどのように考えていくかについて考える機会を設けた。(こうしたテーマはまだまだ話足りないので、一緒に継続して議論できる人たちを募集したい)

しかし今年は、かつては「The Internet’s New Political Power」「Think Bigger」「Imagine All the People: The Future of Civic Tech」といったインターネットを通じた政治に対する期待や、未来への視座とテクノロジーに対する期待のようなものが入り混じっていたのが、いまや「今何ができるか」「目の前にある課題に自分たちはどう進めばいいか」といった考えがテーマになっているあたり、アメリカそのもののあり方が問われている状況だといえる。かつてのインターネットがもたらした期待と、今回の大統領選挙を踏まえ、アメリカ国内のおいてコミュニティがいかに偏ったもので、分断とも揶揄されるものだったのか、彼らは目の当たりにしているのだろう。

参加したミニセッションの一つ。テーマは「Digital Strategies for Government」

もともと、インターネットの発展とともに、Democracyのあり様やインターネットが私たちの社会にとってどのようなツールとなるべきかを議論するところからはじまったPDF。その根底には、やはりテクノロジーと人間との関係を考えようとすることが基点になっている。

テクノロジーによって人間が持つ価値を拡張させ、私たちの生活を豊かにする手段としてきた。しかし、インターネットが発展してくるとともに、技術第一主義による進化において倫理が蔑ろにされたり、ますますすべてが自動化される時代のなか、果たして人間の営みが豊かになっていくのか、という危機意識がでてきた。

Democracyを考えたとき、企業ができること、私たち個人ができることは何か。選挙で選ばれたことも一つの意味があるが、それですべて社会が決まるわけではない。レッシグが言うように、法やアーキテクチャ、規範、市場といったものが人の行動を決める要因であるとするならば、インターネット空間における情報のあり方はアーキテクチャであるが、規範という人間の心のあり方に人の行動を変化させる要因があるはずである。だからこそ、人の心とは、人が心地よいと思うものはなにかを考える、人間性について我々は改めて考えていかなければいけないのだ。

それを踏まえて、ウェルビーイングにテクノロジーがどう寄与するか。その人間の豊かな幸福とは何か。テクノロジーは一つの生態系のように必然的に広がりをみせはじめているなか、だからこそ、人間として何をしていくべきか。私たち自身の意思をもって行動していかなければいけない。

次回のPDFは6月8日と9日、What We Do Nowをテーマに、どのようなことが語られるのか。当日は、Twitterなどでハッシュタグでさまざまコメントが飛び交うし、動画でも公開されるはずだ。

--

--