「ひらく公園」で公園を自分事とする

江口晋太朗 | SHINTARO Eguchi
TOKYObeta Journal
Published in
5 min readAug 23, 2018

2017年11月17日から3日間開催される日本財団主催のソーシャルイノベーションフォーラム2017 の分科会の一つを企画しました。

▼ソーシャルイノベーションフォーラムとは?
https://www.social-innovation.jp/

昨今、「稼ぐ公園」やパークマネジメントなど、都市経営の視点から公園を積極的に活用しようという取り組みが増えてきました。一方、公園という考えそのものは、もっと私たちの生活に寄り添ったものとして、公益性や社会性を帯びたものとして存在しています。

公園も、ただそこに存在するのではなく、なんのためにそこにあるのか。公園に対して、私たちがかかわれる余白はどこにあるのか。さまざまなことが考えられます。

そうしたことを受け、今回のセッションではテーマを「ひらく公園」とし、次世代の公園について参加者と一緒に考える2時間のセッションにしました。

▼分科会「ひらく公園 パブリックエリアマネジメントでできること」
https://www.social-innovation.jp/forum/schedule/program/?p=c3

Photo by 加藤甫
Photo by 加藤甫
Photo by 加藤甫

登壇者に『ポートランド 世界で一番住みたい街をつくる』の著者などで知られる 山崎満広氏、エリアマネジメントに関する豊富な知見をお持ちの 法政大学教授の保井美樹氏、創業100年のパブリックスペースの空間づくりに取り組んできたコトブキ代表の深澤幸郎氏をお呼びしています。

当日は、グラフィックモデレーターに、東海大学の富田誠氏をお呼びして、RealTime Boardを使ってプレゼン内容をリアルタイムにまとめつつ、後半では参加者とともにワークショップを行いながら、参加者それぞれがどう「公園化」について捉え、公園にかかわることができるかについて考えていきました。

http://tomita.me/park/

登壇者による一方的な発話にせず、参加者からの主体的な参加と議論を引き起こすためのデザイン思想をもとに、中盤からは参加者に対して2つの設問を用意し、近くの参加者らと意見交換をする場を設けました。

1.自分が住んでいる場所や、所属先のスペースをどのように公園化できますか?

2.あなたやあなたの所属している組織が、今ある公園にできることはどんなことですか?

1つ目の質問は、登壇者の話をもとに、多様な公園のあり方を感じ取ったことを受け、ある種の理想像として、自分の場所や会社などのスペースを「公園化」するイメージを共有。「公園」という概念を広げ、可能性を感じ取ったのち、2つ目の質問である、現在今ある公園に対してできることはなにか、という具体的なアクションへと結びつけ、明日からできる自分ごととしてアクションを考えてもらう場としました。

一方的な情報提供ではなく、あえて交流重視、発話、議論を促すような場にしたことで、分科会というある種の参加型のカンファレンスのあり方について追求することができました。

後半には登壇者も参加者の輪の中に入り、一緒になって議論する場を作ったことで、「登壇者」と「参加者」という二項対立を越え、会場全体が同じテーマを共有し、議論する連帯感も生まれました。こうしたファシリテーションデザインの一つひとつが、あらゆる社会的課題に対して意識を向け、他者と共有することができると考えています。

Photo by 加藤甫
Photo by 加藤甫

参加者からも様々な意見が飛び交い、充実した2時間となりました。もちろん、ここで出た意見そのものがそのまま使えるとは限りませんし、これらの意見が公園活用のすべてではありません。

しかし、こうした場を通じて、改めて「公園」について考えてみる。しかも、幅広い事例や考え方をインプットし、そこから公園を「自分ごと」としながら、まずは自身の所属している会社や団体のなかで「公園」てきなるものを作れるかどうか、そこから、既存の公園に対してどんなアプローチができるのかを、イメージを膨らませることによって、いままでの「公園」に対する概念を払拭し、新たな視野をもって公園について考えるようになれたのではないだろうか。

こうした講演やセッションでは、いわゆる、「良い話を聞いた」で終わるパターンになりがちですが、そうではなく、明日から、今日から、自分なら、自分の団体や企業なら何ができるか、を考えることこそ、このセッションの大きなフレームであるソーシャルイノベーションにつながる一歩なのではと考え、こうした立て付けとしました。

講演やワークショップなども、目的とそれに見合った設えを工夫するだけで、得られるものはずいぶんと変わってきます。より良い社会とするためのこうしたデザイン手法を、今後も提供していければと考えています。

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